【NO NAME/NO HERO】

シナリオネタバレなし

すみわか自陣if
画家のアサヒと■■のヒロ
ちょびっとソウカンも




 目を覚ます。気怠い身体と時計の針で、既に夜であることを理解した。アトリエの隣に設置した寝室、一人用のベッドから窓を見上げる。しっかり閉まったガラスの向こうに、三日月の浮かぶ星空が広がっていた。

 ぐぅ。腹の虫が限界を訴えている。どんなに精神が追い詰められていても、自分の肉体は健康を求めてしまうらしい。それともこの鈍い苦痛には、まだまだ先があるのだろうか。


……


 考えたくなくて、ゆるゆると身を起こす。不安定な睡眠による目眩、そして単純な栄養失調からくる頭痛。それらを少しでも誤魔化すため、フラつきながらも台所へ向かう。


 薄暗い廊下の先に辿り着き、食器棚からコップを取り出した。蛇口を捻って水を器に注ぎ、ぐいと持ち上げ一気に飲み干す。深く息を吐いて、しばらくしてふと気が付いた。

 そう、自分は夢を見ていたのだ。ヒロという友人、あの幻覚が真似る男との過去。何処か寂しそうな顔で、彼は天を見上げていた。隣にいる自分にポツポツと語っていたのは、果たしてどのような内容だったか。あの日の天気は、場所は、時間は。焦げた文字のように穴が空いた記憶からは、目的のモノが読み取れない。


 少し離れた場所から、歌が聴こえる。優しく柔らかな彼の声で、故郷の歌が奏でられている。ふらりと誘われ、ボクはアトリエへ踏み込んだ。そして絶望する。彼は間違いなく此処には居ないのに、彼を独善的な理由で此処に閉じ込めているような。

 は歌う。
 ボクたちだけの世界に、いとも容易く侵入して。