No title

うにねうさん宅▷テティスちゃん、冬宮さん



「おーい、仮面野郎」
……灰猫ちゃん?」
「お前寝すぎ、そろそろ日が暮れるよ」
「あれ。俺寝てたの?」
「そりゃあもう、ぐっすりと。」
「そうかー」

その馴染みのある声で名前を呼ばれ意識が覚醒する。腕組みをして椅子に座り込み眠っていたらしい俺の隣で机上に魔術の書類や道具を並べながら様子を伺う灰猫ちゃんの姿が見える。
そうだ、酒の土産を持っていくついでに灰猫ちゃんの研究部屋までお邪魔したんだっけ。その後の記憶がない辺り酔い潰れて熟睡していたのだろう。

くあ、と欠伸をしながら朦朧とした意識の中夢に関して思考する。

「なんか変な夢見た気がするなあ」
「へぇ、どんなの?」


『僕には何も言わないでよね』

テティスの言葉が耳元で再生される。テティスにとって都合が悪いのだろうが生憎俺の記憶力は場合によっては長けている方で。
言葉遊びが好きな自分の口が止まるのは珍しい事だと思いながらへらりと笑って答えた。

「あー……忘れちゃった」
「なんだそりゃ」

いつもの声のトーンで話せば灰猫ちゃんは呆れた様子で椅子に座り研究の続きをし始める。カタンとビーカー達を机に置きながら準備をする灰猫ちゃんの動作を眺めながらそのままお構いなしに話す。

「夢は脳の記憶処理って言うけど」
「?」
「まれに経験した覚えのない世界に飛ばされる感覚って無い?」
「んー?さあ、どうだろ」

そう話した途端薬液が入った細いビーカーをゆらゆらと揺らし観察していた灰猫ちゃんの動きが止まる。

お前さ、もしかして夢の中からあちこち行ききしてるんじゃないだろうな」
「“どっちだと思う?“」
……知るか」

興味があったのはそこまでのようで灰猫ちゃんの返答は曖昧に終わった。元より隠しも表にもするつもりはない俺も気にする事無く背伸びをした後椅子から立ち上がる。ふと足元で何かが当たり見下ろすと空になった酒が転がっていた。

(次はもう少し度数が低めの酒にでもするかな)

悪酔いを避けるべく甘酒を候補に入れながら空になった瓶を拾い上げた。