アイアンクラッドより先にヒーローに転職するヴィランがいたらしい。
「というわけでヒーローを目指すことにしたわ」
「どういうわけかちゃんと言ってくれ、聞いてやるから」
朝起きて顔を洗おうとしたら、蛇口からフラックスが出てきてそう言った。
夢かと思った。急すぎて逆に落ち着いてしまった。
家の中に不審者が入り込んでいる。治安が。俺の安全地帯が。
「アナタのところに来たのは謝るためよ。ごめんなさいね、殺しといてこの程度で許されることじゃないでしょうけど。ビンタくらい食らっといてあげましょうか?」
一度ライデンに倒され、人間の体になっているのを見たが、こうして液状でぷるぷるしているボンキュッボンを見ると女にしか見えない。
言葉遣いと仕草は完全に女性のものだ。
心が女性ということでいいんか? こういう質問ってデリケートだからしにくいな。
「液体だからビンタしてもダメージないんじゃねえの?」
「わざと食らうことくらいできるわよ」
「そうか、器用なんだな。そんで律儀。ビンタはいいからなんで急にヒーロー目指すことにしたのか教えてくれ。それからなんでここにいるのか教えてくれ、捕まったんだろ?」
「ライデンに惚れて脱獄したの」
「非常に簡潔、ありがとう」
ライデンに惚れたから同じ立場になるためにヒーローを目指し、ヒーローを目指すために脱獄したと。
あまりにあっさり脱獄を成功させていることに対し、警察とかそのあたりを責めたい気持ちになるが、フラックスは厄介な能力者だ。一般人には荷が重いだろう。
非正規の方法で世の中に出てきている時点で、ヒーローになるためには善性を得なければならないという思考回路はないらしい。
こっからでも目指せるヒーローがあるんですか?
まあ、ヒーローに免許とかねえしな。前科持ちでも構わないだろう。
罪償ってねえから前科ですらないか。え、指名手配犯? 俺今結構ピンチ?
いい加減ヴィラン多すぎるし、誰か転職しねえかなと思っていた。
アイアンクラッドにそれを期待していたが、別のヴィランでも構わない。
俺はフラックスを応援しよう。たぶんライデンは応援しないだろうし。主に恋の方を。
「恋バナする?」
「
……いいわねえ!」
適当に提案すれば乗り気だった。フラックスはきゃぴきゃぴした。
女子会だ。今までやったことねえ。
2名で会を名乗っていいのか不明だが、女子と言われる年齢じゃなくても女子会を名乗っていいらしいから自由なんだろう。
「お茶飲む?」
「水の方が好きよ。不純物が少ない方が操作効きやすいのよね。お茶を出されても茶葉を排除して吸収することになるからもったいないし、結構よ」
「んじゃ水飲む?」
「お気遣いありがとう。あいにく喉の渇きとは無縁なの」
素敵な断り文句だった。
幸也を煽ったときのお手前からも、言葉選びのセンスがすごいと思っていた。
色んな語彙のある人間とは話してて面白いな。
俺は理系なので、文章はそれほど得意ではない。
このきったねえ言葉遣いからもおわかりいただけるだろう。
フラックスは頬杖をついて、うっとりとため息をついた。
「あのビリビリ痺れる感覚。あれが恋なのね
……」
「ライデンの能力では?」
「でもドキドキしたわよ」
「ダメージ食らったからでは?」
「ま。このアタシにダメージを入れられるほどのヒーロー相手なら、ときめいて当然でしょ?」
「その理論で行くと雪狐とインフェルナにも惚れそうだけど大丈夫か」
「
……うん、アリね」
「アリなんだ」
マゾってこと?
暴力振るわれたら好きになるんだとしたらかなり不健全だ。幸せになれなさそう。
だからヴィランをやっていたのだろうか。
誰か悪い男に騙されて? というかこの場合デルタなのか?
「デルタのことは? 好き?」
「それはそれはいい男だったわよ、今までにないくらい♡ 今はライデンが一番だけど♡」
「フラックス、お前惚れっぽいな。大丈夫か? 騙されねえか心配だ。ライデンが相手ならそういう心配は無用だろうが、雪狐とインフェルナはよくわかんねえわ。そんでライデンはデルタ倒すまで恋愛してる場合じゃねえだろうし、今は何言っても梨の礫だろ。そんなに人を好きになれる才能があんなら、もっといい恋人見つけられるんじゃねえのか?」
フラックスはたおやかに頬へ手を当て、俺を見てしばし考えた。
「
……アリね」
「俺も!?」
ストライクゾーン広!
インフェルナをアリ判定するのなら女性も対象なのだろうが、いやそうかそういえば俺って結構顔がいい方だったな。
フラックスによる最初の挨拶でも、幸也と俺を美男美女と言っていた。
顔的にはオッケーってこと? これが顔パスってやつ? 違う?
「おい。二号か?」
リビングで新聞を読んでいたアイアンクラッドこと
鍛谷仁が、不機嫌そうに言った。
まあいつも不機嫌そうなんだけど。
近眼なのか、読み物をするときは眼鏡をかけている。休日のお父さんかって。
俺は仁を家に連れ込んだ時、お前が一号だよと言った。
そんで仁は、二号が来たら家を出ると言ったのだ。
「ああ、フラックス家ある? ここ住むか?」
「あら、いいの?」
「いいぜ。フラックスって女の子だよな?」
「ま。どっちでもいいと思ってるわ。気絶でもしない限りどっちでもいられるし」
「じゃあ三号か。一気に男と女が増えたから、番号一つ飛ばして三号。仁、出てくか?」
仁は俺の屁理屈に目を閉じ、眉間を揉んだ。
新聞を読んでいたから眼精疲労を感じたのだろうか。
おっさんかって。おっさんだな。
「寝床は」
「シンクでいいわよ? トイレは勘弁してよね」
仁は視線を紙面に戻し、無言で新聞をめくった。出ていかなさそう。
家が狭くならないならいいってことか。
フラックスは機嫌がよさそうに「うふふ!」と笑って、両手をポンと合わせた。
どちらの性別でも構わないと言った割に、仕草は俺より遥かに女性的だ。
男性型をとるときはまた違うのだろうか。
「シェアハウスなんて初めてよ、楽しみだわ。それにしても祈、いつまでフラックスなんて呼んでるのよ。他人行儀ね!」
「え、じゃあなんて呼ぶ? ふ~ちゃん?」
「それもいいけど
……あらやだ、アタシもしかして名乗ってなかった? ごめんなさいね、
結城澪よ」
「めっちゃいい名前じゃん、澪ちゃん」
「ま。澪でいいわよ、澪くんになってる日もあるでしょうし」
我が家の居候、ヴィラン1、ヒーロー1なら、プラマイ0ってことでいいっすか?
男女比も1:1ということでよろしいか。ひゅう、なんて男女平等。
「それで祈は男の子ってことでいいの?」
「
……! ああ!」
俺としたことが、澪に指摘されるまで自分を女として計算してしまった。
失礼しました、我が家の男女比は1:3である。
「大変そうね。再生能力があるとなれば、性転換手術をしたところで元の性別に復元されそうだわ」
「わかってくれるか! この苦労を!」
「もちろん。アタシ人生の酸いも甘いも経験してきてる方よ? ストリップショーで働いてた頃の話してあげましょうか?」
「絶対聞く」
おっといけない、その手の話題が苦手そうなお堅い男がいるのだった。
「仁はどうする? 聞く?」
「俺のことは気にするな。あまりにてめェがべらべらうるせェから、鼓膜を硬化して音聞かねェ方法を編み出した」
「たまに完全な無反応になるときそれだったのかよ」
俺を無視する技術が挙がってきているのかと思えば、消音性能を上げた方だったのか。
それも俺を無視する技術のひとつではある。
仁を煽りまくったりからかいまくったりしていたのは、俺が暇だからというのもあるが、仁の成長のためでもあった。
こいつわかりやすすぎるんだよ。それから取っ付きにくすぎる。
ヴィランを更生させるのなら、そういう地道なところから始めないとな。
澪によるストリップショーの話はめちゃくちゃ面白かった。
俺よりはるかに人生経験豊富であることを認めなければなるまい。
人生2回分使っても勝てやしねえ。
色々なことをやってきた澪でも、ヒーローは初めてらしい。
「ヒーローって具体的になにすればいいのかしらね。とりあえずヴィランをボコボコにするだけでいいならアタシだってよくやってたし、それだけじゃないんでしょう?」
「仁、フラックスにボコられたことある?」
「あったら殺してる」
相変わらず仁は血気盛んだ。
殺すか殺さないかでしかコミュニケーションとれないのかよ。
てかこいつ鼓膜金属にしてねえ。
ストリップショーの話に興味あったんか。
このからかい方をすると殺意が滲むことがわかっているので、特に指摘はしない。
家にこないだまでヴィランだったやつがいるのに、自分から聴力を封じるのはあまりに無警戒だろう。
俺としては全然平和ボケして、呑気に聴覚を封じてくれても良かったが、まだ仁はとげとげしい野生の雰囲気をまとったままだ。
「ヴィラン同士って仲悪いんか?」
「相性によるでしょうね。頭おかしいのも多いから、仲いい方が珍しいわよ。大抵社会性ないし、友達になりたいようなヴィランはいないわね」
「だってさ、仁」
「殺されてェってことか?」
何故か殺意が澪ではなく俺に向いたな。なんで?
ヴィランのことボロカスに言ったのは澪なんだけどな。
仁をヴィラン扱いしたのが俺だからってことか? 自認がヴィランじゃなくなってきてる?
治験ついでの更生計画上手くいってんのかな。
「
……ちょっと待って? この人ヴィランなの?」
「あれ? 言ってなかったか? アイアンクラッドだぜ」
「勝手に言いふらすんじゃねェ」
澪は目をまんまるにした。
虹色に光るうるうるお目目が素敵ですね。
両手で口を覆い、水面を揺らして驚いている。
「あら
……あらあら! まあ! そうなのね! アイアンクラッドは別よ! ぜひ仲良くしてほしいわ♡」
「え~特別枠? アイアンクラッドってヴィランの中で評判いいのか?」
「逆よ逆。最・悪♡」
「最悪なアイアンクラッドさん、原因に心当たりは?」
「絡んで来たヴィラン全員ぶちのめしてきたからだろ」
「ぎゃはは! 単純明快! うちに来た日もそれか!?」
仁は黙った。図星らしい。
ぶちのめせないような強いヴィランが相手でも、ムカついたのなら戦うってことか。
相変わらずわかりやすいんだよ、もうちょい心理戦できないと後々困るだろって。
愚直すぎる。だからライデンに勝てねえんじゃねえの、とか言ったら殺されそうだな。
「いや~ん、祈についてもっと気になってきちゃったわ♡ アイアンクラッドと一緒に住んでて、デルタに命を狙われてるなんて、なにかあるに決まってるじゃない」
「再生能力くらいしかねえけどなあ」
「ま。そのへんの謎は一緒に解いていきましょ♡」
フラックスは強い。とにかく能力の汎用性が高いのだ。
液体同化と操作。
操作するには多少自分を溶け込ませないといけないようだが、その程度の手間を補ってあまりある程の便利具合。
流動するモンスターのテンプレよろしく、そこを攻撃されたらアカンというコアのような部分はあるようだが、それを隠すのが巧みだ。
ライデンのように特殊な探知能力を持っていなければまず対応できない。
それから能力のコントロールも、使い方も上手い。
うっかり冷やしすぎたり、燃やしすぎたりする雪狐やインフェルナとは戦いの経験が違う。
咄嗟の判断能力もあり、応用力も充分だ。
ちなみに上記の褒め言葉はすべてライデンが言っていたことだが、澪がライデンへもっとメロメロになった場合どうなるかわからなくて怖いので黙っておく。
ともかく、そんな強敵ヴィランが仲間になってくれたというのであれば、これほど心強いことはない。
「そういや澪は俺の殺しをデルタに頼まれてたんだよな。そういう依頼って結構あんの?」
「デルタからの頼まれごとは初めてだったわね。そうじゃない暗殺任務なら何度か請け負ったことがあるけど」
「暗殺者だ~かっけ~」
「うふふ、不謹慎よ~」
どっちがって感じの会話だ。
雪狐の素顔、幸也の顔がフラックスにバレたとき、この場で仕留めなきゃやべえとは思った。
いつ暗殺されるかわからない。俺と違って幸也に再生能力はないのだ。
しかし、凄腕暗殺者フラックスは引退だ。
大人気ヒーローフラックスになるための方法を考える。
「とりあえず市民の印象操作だろうな。善行してるとこ見せびらかすか? ゴミとか拾う?」
「川の掃除でもしようかしら?」
「いいじゃん。めだかの学校を建てよう」
「川からゴミ引き上げるのはいいけど、そのあと捨てるのが大変だわ。川べりに不法投棄し直すだけになっちゃうわね」
「うーん、焼却炉とかごみ処理場の近い川からスタートするか?」
「川の流れを変えて運搬することならできるけど、川の流れって変えていいのかしら?」
「だめそう」
「ゴミ処理場も川に沈んじゃうしね〜」
あれじゃないこれじゃないと、澪と共に考える。
「あとはあれじゃね? 市民を守る。ヴィランからだと尚良し」
「それもやったことあるんだけど、アタシがヴィラン扱いなのはどうしてかしらね。何が駄目だったのよ」
「やっぱ暗殺?」
「それかしらね~」
なるほど、澪には善悪の区別がない。
善行と同じく悪行を積み上げている。悪行と同じく善行を積み上げている。
なんでもやってみようという精神なのか? イカレてるだけか?
「良いことやるより、悪いことしねえってのが大事かもな。澪は良いことやってるけど、悪いこともやってっから相殺されてんだ、きっと」
「なるほど。でも我慢ってやつがいちばん苦手なのよ」
「ヴィランっぽ〜い」
「うふふ。ヒーローっぽ〜いって言われるように頑張らなきゃね」
向上心があってなによりだ。
アイアンクラッドにも見習ってほしい。
くだらない話を続け、きゃらきゃら笑ったあと、澪(みお)はふと遠い目をした。
「LGBTって大変なのよね~」
「大変そ~」
「当事者でしょ?」
「
……確かに」
あんまそういう認識なかったな。
前世とかあるし。異能もあるし。
それどころじゃない問題を抱えすぎている。
でもおっさんから美少女にTSしてんだから、間違いなくLGBTだ。俺ってTだわ。
「祈には好感持ってるわよ♡ アタシが聞くまで男だの女だの言わなかったものね」
「この歳になってくるといろいろ諦めがついてくるもんだ。心だけは女にならんと決めているが、体はずっと女のままだろうからな」
先ほど澪が言ったように、俺には再生能力がある。
性転換手術を行ったとしても、元の性別に復元されてしまうリスクがある。
もっと能力がコントロールできるようになり、治したい傷とそうでない傷を区別し、傷を修復した際に戻る状態を定義し直せるのであれば可能かもしれない。
まだそういう段階には達していないし、今の俺には他にもっとやることがある。
「女として扱われたい、男として扱われたい、性別には関係なく扱われたい。そう思うなら、そう扱われるよう相応に努力する必要があるわ。そういう格好、行動、手術、戸籍の変更。どこまでやるかがその人の自由なら、どこまでやったら努力を認めるかに関しても自由だもの。それを無視して『男や女だと思え』って押し付けるのは、人の印象や定義を操作しようとするのと同じよ。ちょっと傲慢すぎるわよね」
「いやあ、ちょっと俺には何とも言えんわ。みんな大変だよなとしか」
「当事者意識皆無ね~。そのくらいの方がいいのかしら」
「俺は俺を男だと思っている。周りがどう思おうがそれは変わらねえ。だからどう扱われようが、俺は俺のままだ」
「ステキよ」
俺は自分を男だと思っているが、俺の体が女であることも当然認識している。
だからトイレは女子トイレを使う。多目的があるならそっちを使うが、ない場合は仕方がない。
「どんな問題でもそうだけど、悪いことする人が目立って、誰にも迷惑かけてない人は認識されないから、悪印象だけ募るの」
「能力者もそうだし、喫煙者も似たようなもんだよな。真面目に吸ってるやつかわいそ」
ポイ捨てだの歩きたばこだの、煙草に関してはマナー違反が目立つが、ちゃんとしてるやつは目立たない。
煙草の臭いが苦手な奴らには目の敵にされるだろうが、煙草を吸うのも権利だろ。
目の前で煙吸わされたら怒っていいと思うが、服からする煙草臭くらいだったらそこまで目くじら立てんでも。
風呂入ってないやつとか洗濯下手で生乾き臭するやつと同列で、それはまた別の問題になってくる。
能力者についてもそれと同じだと思うんだがな。
周囲と異なる性質を持ち、生きにくさが故に迷惑をかけることもあるが、迷惑をかけねえ人間なんざいない。
ミュータントの犯罪者はヴィランとして目立つが、そうでない者は静かに黙って隠れるか、ヒーローをやっている。
「世の中の問題ってのは複雑に絡み合ってるから、単に悪と切り捨てられるもんは一個もない」
「殺人でも?」
「嘱託殺人とかあるし。そもそも何を殺人と定義するかの話になってくる。事故で人を殺したとき、そいつは殺人ではなく過失致死の罪に問われるだろ」
「現実は勧善懲悪ってわけにはいかないのよねえ」
ヒーローとヴィラン、それで終わりにはならない。
加害者と被害者、ってだけでもない。
俺は漫画を読んでいて、悪役の悲惨な過去が明らかになる展開が嫌いだが、それはフィクションが一気に現実へ近づくからだ。
同情の余地がない極悪人など、現実には存在しない。同情などしたくないと、認識を拒否しているだけだ。
「声を上げなければ何も解決しないというのはわかるわよ。ただ黙って耐えているだけでは、最初からいないものとされて、誰にも助けてもらえないもの。どうして助けてくれないのって誰かを恨む前に、まず助けてって言わなきゃいけないの。ヘルプを出すのが下手だから暴れ回る子もいるんでしょうね」
元ヴィランが言うと真に迫る言葉だ。
「澪がヴィランやってたのもそういう理由?」
「うふふ、どうかしらね。そういう面がなかったとは言い切れないけど、それだけだったらアタシもっとすっごい被害出せたわよ~。日本なくなってたかもね、島国だから」
「やらんでいてくれてありがとな」
「いやね、冗談よ! 地球の海水丸ごと操れるなら誰にだって負けないわ!」
「スーパーパワーって成長するしな、そういう日が来るかもしれねえだろ」
「夢あるわね~」
操れる液体の量に限りがあるのか。
液体を操るにはそこにある程度自分を溶かさないといけないらしいし、自分の濃度が何%未満だと操れなくなる、というラインが存在するのかもな。
不純物の多い液体は操りにくいと言っていたし、海水は塩分だのなんだのも多かろう。
制限がない無敵の能力はないというわけだ。
「フラックスってデルタと会ったことあるんだよな?」
「あるわよ。ヴィランなら大抵会ったことあるんじゃないかしら。世間では謎の存在だけど、アタシたちにとっては結構気軽に会える存在ね。だからこそすごいと思うわよ。これだけのヴィランに会っておきながら、世間には情報を掴ませないままでいる。やり手よね」
謎のヴィラン、デルタについての話が聞けそうで、思わず身を乗り出す。
仁にこの話題を振っても要領を得ない。
答えてくれないわけではないが「殺してェくらいムカつく男だ」とかである。
こいつ殺したいか殺したくないかくらいでしか人物評価できねえのか。ほとんど殺したいっぽいし。
「デルタがどんな感じか教えてくれよ、気になる」
「いいの~? 知ったら口封じに狙われちゃうかもよ~?」
「もう狙われてるしな、お前とかに」
「うふふ! ブラックジョークがお上手ね! 実際口封じに殺されるならアタシの方が先よ」
「ブラックジョークがお上手だな」
男なんだか女なんだかあやふやで、倫理観もふわふわ。
共通点が多く、澪と俺は気が合うようだ。いい友達できたな。
「デルタは、そうね~。ゲイってああいう男が好きよね」
「ぎゃはは! おいやめろよ、俺の中のデルタ像が狂う!」
カクヨムで加筆修正したものを連載中です。
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