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Hizuki
2025-05-25 22:38:57
5958文字
Public
あんスタ[零薫他]
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夜中の共犯者
【あんスタ】零薫。夜中に『周りに怒られない程度の悪さ』をしようとする薫の話。アドニス視点のおまけあり。悪いことを一緒に。
1
2
同室の2人を起こしてしまわないように静かにドアを開けて廊下に出た。共有ルームの近くまで行くと、よく知った後ろ姿を見かけて声をかける。
「大神」
「おう、アドニスじゃね~か。どうしたんだ?」
俺の声に気付くと、大神はこちらを振り返った。
「少し水を飲みに行こうと思ったところだ」
「何だ、俺様と一緒か。んじゃ行こうぜ」
静まった廊下に2人の足音だけが聞こえている。目的地まではあっという間だった。薄暗い共有ルームの中、ちょうど出入口から見える奥のテーブルに動く影が見えて足を止めた。
「共有ルームに誰かいるようだ」
「こんな時間に電気も付けずにか?」
大神が口にした疑問はその通りではある。電気を付けていないのは今の時間帯であることと他の人を気遣って、ということなのだろう。
「あれは
…
朔間先輩と羽風先輩だな」
見える姿と小さく聞こえてくる声は馴染みのあるものだった。背中を向けていることもあって、こちらには気付いていないようだ。
「
…
確か、先輩達今日は帰りが遅かったんだよな」
「ああ。特に羽風先輩が大変だったようだ」
腕を組んだ大神が思い出したように言った。朔間先輩は元々始まりの時間が遅くて、それに伴って帰りが遅かった、という話のはずだ。羽風先輩とは一度昼に食堂で顔を合わせていて、朝一の現場のトラブルの話と午後の現場の集合時間が急遽後ろ倒しの変更になってしまったことを話してくれた。先輩には非がないどうにもならない状況の話で、俺には応援の言葉をかけることしかできなかった。
「というか、こんな時間に何やってんだ?」
先輩達の姿でテーブルの上は隠れてしまっていて、何をしているのかまでは分からない。ただ、隣り合った椅子に座り、楽しそうにしていることだけは遠目でも分かった。
「随分楽しそうだな。2人とも俺達の前では年上らしく振舞おうとするから新鮮だ」
「2人だけだから、じゃね~の?ま、でも年上って言ってもひとつふたつだし、そういう時だってあんだろ」
いつもの先輩達とは少し違う、まるで小さな子供のような雰囲気が感じられた。水を飲みに来たわけではあるけれど、今の先輩達の空気を邪魔してしまうのは気が引ける。
「ふふ、そうだな。邪魔をするのも悪いし、もう少し後で来ることにしよう」
そうして頷いた大神と一緒に来た廊下を戻ることにした。一体何をしていたのかいつか聞けたらいい、そう考えていたら、その機会は思っていたよりも早く訪れた。
「そういや先輩達、この間夜中の共有ルームで何してたんだ?」
4人揃って収録の準備を終え、控室でスタジオの準備を待っていた時、大神がそう問いかけた。
「
…
えっ!?晃牙くん見てたの!?」
スマートフォンに視線を向けていた羽風先輩ががばっと顔を上げる。
「俺も一緒だったんだが、とても楽しそうにしていたな」
「アドニスくんもかえ!?」
同じように本を読んでいた朔間先輩も俺の方に顔を向けた。2人ともひどく驚いた様子で、踏み込んではいけないことだったのだろうかと心配になる。
「
…
んだよ、人に言えね~ようなことでもしてたのかよ」
「いや、あの、そういうわけじゃないんだけど
…
ねっ、零くん!?」
「えっ、そ、そうじゃの薫くん!?」
しどろもどろになりながらお互いを見て名前を呼んでいる。この間見かけた時の様子を思い返すと、先輩達が変なことをしていたとは思えない。やっぱり気になって少しだけ踏み込んでみる。
「では何を
…
?」
「
…
ちょっと、悪いことをしておったのじゃ
…
」
「悪いことだぁ
…
?」
俺の問いかけに朔間先輩が答える。人に言えないわけではないけれど、悪いことをしていた、と。その単語を拾った大神の声にわずかに追及の音が乗った。
「
…
す」
「うん?」
「アイスを
…
食べてた、んだよね
…
チョコスプレーいっぱいのやつ
…
」
俺達から視線を逸らし、恥ずかしそうに羽風先輩が言った。持っていたスマートフォンを手放して手を組み、忙しなく指を曲げたり伸ばしたりしている。
「
…
アイス?」
「その、うむ、薫くんが言った通りじゃ
…
。まさか2人に見られておったとはのう
…
」
本を側に置いて続いた朔間先輩も困ったように笑みを浮かべる。
「はぁ?全っ然悪くね~じゃね~か」
「余程おいしかったのだろうな」
やはりあの場で入っていかなかったのは正解だったらしい。おかげであんなに無邪気な先輩達を見ることができたのだから。きっと俺達に気付いたなら、いつもの年上の顔に戻っていただろう。
「つか、それだけであれだけ楽しそうにできる先輩達がスゲ~よ
…
」
「あはは
…
」
感心と呆れが混じったような息を大神が吐く。夜中だった、という時間帯を考えれば、確かに『悪いこと』なのかもしれない。いつか2人が俺達の前でもありのままの姿を見せてくれるようになったら、と思いながら、まだ恥ずかしそうにしている先輩達を眺めていた。
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