僕らは決して友にはなれない

賽殺し伝子さんパロの猫箱。伝子さん死亡ルート。
CPと呼べるほどの恋愛要素はないがある意味で綾滝。
綾部のバックグラウンドは本編でも他の猫箱でも共通です。

無関係な三木ヱ門が相変わらず貰い事故で可哀想な事になってる。
時代考証はぶん投げた。うろ覚えで書いたとこ多いので史実とズレたり誤認したりがあるかも。なんちゃって史実ネタが入ってるとこは参考文献無しなので気になる人は自分で調べてね。



――なぁ、さっきの人、なんだと思う?」
「さあ? 滝夜叉丸の同類じゃない? チューニビョーってやつ?」
 どこか困惑した様子で尋ねてくる三木ヱ門に、僕はすっとぼけてみせる。
「いや……それにしては何か切羽詰まった様子だったし……滝夜叉丸も見間違いじゃなければ深刻そうな顔してた気がするし……
 おやまあ、なんと面倒な。
青年の様子に、三木ヱ門も流石に違和感を持ったらしい。さてどう誤魔化したものやら。
……なあ、もしかして、滝夜叉丸が言ってるのは本当の事だったりしないか? 僕やタカ丸さんは何も覚えてないけど、本当に前世ってのがあって、室町時代に僕らは忍者として生きてきたんじゃ…………
 深刻な顔で悩み始めた三木ヱ門の言葉を、僕は黙って聞く。
恐らくここで頑なに否定すれば、三木ヱ門は逆に違和感を持つだろう。ここは聴きに徹した方が良い。
――僕らも、なんとかして前世を思い出す方法は無いんだろうか」
「おやまあ、こんなところにも重症患者が一人。病院を探さなくては~」
 何気ない冗談のようにして辛辣なひと言を放てば、三木ヱ門はドッとずっこけた。
「~~ッッ! お前なぁ、人が真面目に悩んでる時に! お前は気にならないのかよっ!」
「おや、……まあ」
 ムキーッと怒る三木ヱ門に曖昧に返事をしながら、僕はなんでもないことのように答える。
……別に。仮に前世があったとしても、僕は僕だし。前世なんて別に知らなくて良いと思うけど?」
 上手な嘘をくコツは、本当の事を混ぜる事だ。
 僕は前世を覚えてる。だから、それが僕の心に何の影響も及ばさないわけじゃないことも知っている。
 だからこそ、三木ヱ門は知らなくて良い。
 むしろ、三木ヱ門には知らないままでいてもらわなくては困る。
 きっと、三木ヱ門まで前世を思い出してしまったら、僕らの関係は取り返しがつかないくらいに変わってしまうから。
「そういうものかなぁ……なんか妙に説得力がある気はするけど……。いや、待てよ? じゃあなんでこんな強引に連れ出したりしたんだよ? 喜八郎、お前本当は何か知ってるんじゃないのか?」
 うんうん悩んでいた三木ヱ門は、ふと顔を上げてそう問うてきた。
 おやまあ、妙に鋭い。僕は目をぱちくりと瞬かせる。
……お前にも、実はその前世の記憶があるんじゃないのか?」
 人が行き交う街中で、僕らは歩みを止めて無言で向き合った。
 三木ヱ門は、僕の些細ささいな表情を決して見逃すまいとこちらをじっと見つめている。僕はそんな三木ヱ門をじっと見つめ返す。
……なんのこと?」
 数秒の沈黙の後、僕が自然な様子で首を傾げたのを見ても、三木ヱ門は警戒を解かなかった。だから僕は、近くの小さな書店を指さして続ける。
「僕はただ、新しいマンガが出てるから三木ヱ門にお金だしてもらおうと思って連れてきただけだけど? ホラ、滝夜叉丸がいるとうるさいから店に迷惑かかるし」
 その言葉に脱力したのか、どてっと転んだ三木ヱ門は、「なんで僕に奢らせるのが前提なんだ!」と怒ってくる。「いや、先月他の本買ってお小遣いが無いから……」と誤魔化せば、いつも通りの関係性の出来上がりだ。
 ブツクサと文句を言う三木ヱ門の声を聞きながら、僕はただ僕の秘密を噛み締める。
 ……これで良い。
 僕は知らないフリをすると決めたのだ。
 だから今世の僕は、穴を掘らない代わりにこの秘密を貫いてみせる。