HQ【赤この】ログ

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赤こののSSまとめです

その感情の名前を


用ができて昼休みに2年の教室へ向かった。
3年である俺がここの廊下を歩くだけで周りがざわざわするのがちょっと気まずい。木兎ならともかくなんで俺までざわつかれなきゃいけないんだ。それにしても遠いな6組
時々挨拶をされて適当ににこにこして手を振りやっと6組に辿り着くと、目的である奴の名前を誰かが呼ぶ声が聞こえた。
「えっ赤葦今日誕生日なの!?」「えーめでたいじゃーん」「おめでとー」
甲高い声が複数。開けられた窓からそっと覗くと廊下側の席に座る赤葦が女の子たちに囲まれていた。顔は見えないけどきっといつものポーカーフェイスだろう。
なんか嫌だな。
あれ、なんで嫌なんだ?
「赤葦アメあげるー」
「え、あぁ、ありがとう」
「あっ待ってうちグミあるから取ってくる」
「え、別にいらな、」
「えー私なんも持ってないんだけどーなんかあったかなぁ」
困惑しているように見える赤葦をよそに女の子たちはお構いなくしゃべり続ける。
同級生の、しかも女の子たちに絡まれてる赤葦はまるで他人のようで少し寂しさを感じた。
いやいや寂しさってなんだよ。赤葦だって女の子に囲まれることぐらいあんだろ。
でもちょっと腹立つ。
窓に近づき赤葦の後頭部に声をかけた。
「あかあしーこんなんあったぁ!よかったら、」「赤葦、」
自分の席から何かを取ってきた女の子と俺の声が重なった。
形のいい目が向いたのは、
「木葉さん、」
勢いよく席を立つ赤葦に女の子たちは少しびっくりしているようだった。
「あーごめん昼休みに。ちょっといい?」
本当はここで済ましていい用事だったのに、何故か赤葦をこの場から引き離したかった。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
「あ、うんあ、これ
さっきの女の子が赤葦に何かを渡した。
「ああありがとう」
それを見届けて俺は女の子たちににっこり笑い「ごめんね邪魔して。ちょっと赤葦貸してね」と手をひらひら振って窓から離れ、赤葦は足早に教室から出てきて俺について来た。後ろで女の子たちが何か騒いでいるようだったが見向きもせずずんずん廊下を突っ切り、踊り場まで来たところで「木葉さんっどうしたんですか?何かありました?」と赤葦に呼び止められ、俺はようやく我に返り血の気が引いた。
「あー!ごめんっ!全然大した用事じゃないんだよ!」
「え?」
「委員会あるから遅れるっていうのを言いたかっただけで
「なら尚更メールでもよかったのでは
「そうだよな!?確かにな!?なんかごめんな!」
やばい、なんか変だ俺。
赤葦が女の子たちに囲まれてるのが嫌で、でも俺を優先してくれたのは嬉しくて、あ、それは俺が先輩だからってだけか、でもそれもなんか嫌だったんだよな。
なんでだ?
もしかして俺が女子に囲まれてるの、そんなに嫌でした?」
「はっ!?」
「冗談ですよ」
「馬鹿!先輩をからかうんじゃねぇよ!」
「すみません」
びっくりした心読まれたかと思った
で?何もらったの?」これ以上変なことを考えたくなくて無理矢理話題をかえた。
「え?ああ、」と赤葦がポケットからくしゃくしゃになった小さい紙を取り出した。
ドリンクの無料チケットですね」
見せてもらったファストフード店の無料チケットは2枚あって、俺はあの女の子が考えていたことにピンときてしまった。
「なんで2枚あるんだろ」
「お前まじか、わかんねぇの?」
「ああ、俺とふたりで行きたいってことですか?」
「わかってんじゃん。さっき言いかけたことってそれだろ?俺が邪魔しちゃったけど。あの子に悪いことしちゃったな」って、あんまり悪いと思ってないのはなんでだろう。
「ふーん
「え、興味ないの?」
赤葦はしわしわの紙切れをじっと見つめて「うーん」と考え「まぁ今それどころじゃないんで」とあっさり答えた。
「あーまぁ春高あるしなぁ」
「先輩方が木兎さんの面倒を見てくれるんなら考えなくもないですけど」
「はいすみませんでした」
「そこは"面倒見るから行ってこい"でしょ」
「やめてぇ行かないでぇ」
「あははっどっから声出してんですか」
切れ長の綺麗な目が笑う。
純粋に、その笑った顔が好きだなと思った。
もしもこいつがバレーボールの強豪校の副主将じゃなかったら。
そういうことを考える暇があったら。
女の子の誘いに乗るんだろうか。
そして気が合えば付き合ったりするんだろうか。
ごく普通のことなのに赤葦だと嫌だと思う。
この感情の名前が知りたい。
「で、どうすんのこれ?」
赤葦の手の中にあるチケットに触れた。
「興味ないし行く時間がないから返します。そもそもタイプじゃないし」
「わー贅沢ぅ」
「木葉さんに言われたくないですよ。廊下、すごい騒がしかったじゃないですか」
「そりゃ3年がこんなとこいたら目立つからだろ」
壁にもたれて赤葦の横顔を見る。さっきの笑顔をもう一度見たいなと思った。
「で、お前のタイプってどんなのよ?」
あんまり覚えてないけど、さっきの子たちはそこそこ可愛かった気がする。赤葦と並ぶと身長差があって女の子が自然と見上げて、その顔はきっともっと可愛くなって、それっていいなと思った。
「羨ましい」という気持ちは気づかないふりをした。
「そうですねぇ
綺麗な目が天を仰ぐ。
「メールで済むような用事をわざわざ言いに来たり、綺麗なのにすげぇ怖い笑顔で女の子たちを牽制するような人、ですかね」
「は
唖然とする俺の真上で予鈴が響いた。
「木葉さん、」
固まったままの俺に赤葦が「俺、今日誕生日なんですよ」と微笑む。
「うん、知ってる
赤葦との距離が近くなり、思わず後ずさりをしたが後ろは壁で逃げられない。
「俺はあの子より、木葉さんと行きたいです」
待ってます、と耳元で囁き「委員会で遅れる件は了解しました。失礼します」といつものポーカーフェイスで教室へと戻って行った。
ひとり残された俺はぶわぁっと顔が熱くなり両手で覆う。
「まじか
この、とんでもなく恥ずかしくて、でもとんでもなく嬉しいと思う気持ちの名前なら知ってる。

それは、紛れもなく恋だ。