kanaco
2025-05-17 00:04:05
15453文字
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信一と十二のチート”デート”デイ

注意!こちらは住処は九龍城砦及び架勢堂ですが、2人が出かけているお外は現代風のパラレルです。ストレス発散にオシャレしてチート”デート”デイをする仲良しな十二と信一と、時々一緒に行く愉快な仲間たち。また、こちらは洛信、四十二前提ですが、あくまで信一と十二のデートなので内容としてはひたすらに信一と十二少がイチャイチャしているだけのお話です。

P1【フルーツパフェ】十二と信一が仲良くフルーツパフェ食べて喋るだけ。
P2【生絞りの和栗モンブラン】十二と信一が生絞りの和栗モンブランが食べたいので待ち合わせ中。


②【生絞りの和栗モンブラン】

13:00 九龍城砦の阿七冰室。

信一はご機嫌な様子で店内に入って来た。その足取りは軽やか。まるでスキップするかの如くであったし、すでに鼻歌はフンフンと奏でられていた。彼の歓喜に満ちた様子は阿七冰室で食事をしていた住人たちの気分も朗らかにする。厨房から阿七もひょいと顔を出し、ホールでバイトをしていた洛軍はにこやかな目をして信一を歓迎した。

「ごくろうさま、信一。仕事のヤマを片付けたのか」
洛軍がそう尋ねれば、嬉しさを隠さない信一は子供みたいにニシシと笑ってブイサインをした。
「綺麗に、さっぱり、ミスもなく。さすがは俺」
「そうか。さすがは信一だ」

良かったな、と素直に称賛を送りながら、洛軍はここ1週間ほどの信一の状態を思い出していた。

ここのところ、信一は九龍城砦に姿を現さなかった。どうやら大掛かりな黒社会ごとの対応にあたっていたらしく、7日間のうちで彼を見かけたのは2回のみ。それも深夜、偶然に後ろ姿や横顔を見たのみだ。いつもの朗らかな調子が微塵も感じられなかったことや、時間帯も深かったために声はかけなかったのだが、かなり大変そうだと洛軍は思ったのだ。もしかしたら自室にも一切戻らない日が連日あったのかもしれない。

いくら信一と親しくなったと言っても、一般人の洛軍にとって黒社会の話は触れられない領域だ。もちろん、心配ではある。しかし龍兄貴の方は普通に日常生活を送っていたので、その意味では信一に差し迫った事体は起きてないのだろうと洛軍は思っていたし、四仔が疲弊していた日も無かったはずなので、怪我もしていないに違いない、と推測していた。

今、目の前にいる信一の嬉しそうな様子からしても、過酷な中でスムーズに1週間をこなしたのだろう。そこまで考えて、そういえばともう1人の黒社会の友人のことを思い出す。彼もここ1週間、一度も九龍城砦に顔を出さなかった。半住人としては珍しいことだ。

「じゃぁ、十二少と出かけるのか?」
洛軍が思っていたこと阿七が聞いた。
「まぁ、随分とめかし込んでいるもんな」
そう言われて、信一が「ああ」と明るく肯定する。

信一と十二が大きな任務や大変な作業をこなすと、いつもと違うファッションスタイルに身を包んで身分を隠し、2人で巷で人気のショッピングスポットに繰り出す。そう洛軍が聞いたのは最近のことだ。自分たちを労うためストレス大発散をする『チートディ』を設けることが長年の恒例になっているそうで、龍兄貴と虎兄貴から褒美としての軍資金も出るらしい。そもそも子供の頃、2人が頑張ると兄貴たちが食事に連れ出してくれたのが始まりだそうで、それが少しずつ形を変えて2人の中で定着し、今に到るというわけだ。

2人はその日を『チート“デート”デイ』と呼んだ。そしてデート日は、何人たりとも邪魔をしてはいけないというのが九龍城砦と架勢堂のしきたりだった。

洛軍と四仔が『チート“デート”デイ』では一体何をするのかと信一と十二に問えば。

「しこたま服を買う」
「でっけぇパフェを食べる」

そう真面目な顔で言っていた。洛軍はファッションも甘い食べ物も嫌いではないが、そもそも興味が薄いので知らない世界だ。しかし仲の良い友人と自分のご機嫌取りができる行事はとても良いな、と思っている。ただでさえ危ない世界に身を置く2人だ。そういう息抜きだってあっていいはずだろう。

それに信一の浮かれている様子は、見ている洛軍の気分も明るくしてくれる。

「なぁ、どう?洛軍。今日はいつもより重要なデートなんだよ」

信一が「ファッションチェックしてくれよ」とクルリ、ターンをしてみせた。

コットン素材のシンプルな白いカットソー。その上にまるでカーディガンのように羽織ったシアージャケットが洛軍の前でハラリと涼し気に揺れた。アイボリー色のそのジャケットはとても軽やかで、いつも長袖を着て素肌を見せない信一の肌が少しだけ透けている感じが新鮮だった。色っぽくはあるがいやらしくはない。髪をハーフアップにしているのも新鮮で、こちらもどこか艶やかさが増しているように見えた。

パンツの色は黒、アイボリーのペイズリー柄が目を引く。ヴィンテージっぽさを持つその個性的なパンツは、柔らかそうな素材でゆったりしていた。足元まで覆いつくす長さからチラリと黒エナメルのヒールサンダルがのぞく。首元にかかったゴールドのネックレスは見たことがある。たしか龍兄貴も同じようなものをしていたはず。

「似合ってる。全部良い」

心の中で(美人だ)ともう一つ付けたした洛軍が心の底からそう言えば、信一がますます嬉しそうに破顔する。

「おい、何で俺には聞かねぇんだよ」
「阿七は何着ても、分かんねぇけどいいじゃね?しか言わないじゃん」
「洛軍だって、似合ってるぞ、しか言わないだろ」
阿七がそう言うので洛軍は「うっ」と詰まった。仕方がない。信一はオシャレでいつだって服を着こなすので、似合わない時などないのだ。
「まぁ、兄貴だって、俺が何着ても“良いな”しか言わねーからな」
俺の周りのオシャレへの無関心さどうなってんだ、と信一がケラケラと笑う。

まぁ、いいの。俺が楽しければ!

そう、ごもっともなことを言って信一は自分で最終チェックする。

ファッションよーし!
アクセサリーよーし!
髪型よーし!

「じゃぁ、行ってくる!」

信一がそう言って身を翻せば、阿七冰室にいる店員も客もみんなで「いってらっしゃーい」と手を振る。信一が元気であれば、九龍城砦はいつだって明るい。洛軍は良い気分になって仕事に戻っていった。


**★**★**★**


トレンドの発信地としても有名なファッションストリート。商業施設もありながら、その周辺には古着屋やセレクトショップもあり、最新の流行アイテムや個性的なアイテムが一同にGETできるスポット。そのうえ飲食も手頃な価格の店舗が多い。インパクトのあるスイーツが有名な、話題性ある店も集まる、たくさんの若者たちで賑わう場所だ。

通りの入り口。いつも待ち合わせ場所として指定している緑の時計台の下に、信一の幼馴染はすでに立っていた。デートの日は必ずこの場所で落ち合う。九龍城砦から一緒に行ってもいいのだが、単に「デートっぽいから」というだけで始まった決まりごとは守られ続けていた。待ち合わせ自体に支障はない。唯一の問題点は、先に着いた方が比較的絡まれやすいということだ。

「わぁ、さっそく絡まれてるし」

十二と思われる人物が4人の男たちに囲まれていた。同い年くらいか、もう少し年上の集団だ。少し離れたところからその姿を目に収めて、信一はヤレヤレと肩を落とす。このデートには決まりごとが多い。例えば『デート中は黒社会を出すべからず』だ。普段の仕事から解放されてリフレッシュするのだから当たり前。こんなにオシャレまでしているのに揉め事はアンハッピー。物騒な言動はそういう“クロ”を引き寄せる。だからケンカは無しと決まっているのだが

(ありゃケンカかな?ナンパかな?どっちにしろアイツ、割とキレてんな)

遠くからでも分かる十二少のイライラ加減。とはいえ、信一がなんとなく察しているだけで相手にはそう思われていないだろう。殺気がないのはもちろん、おすまし顔であるし、目つきが尖っていない。ただし、左手の薬指がせわしなくトントンと太ももを叩いている。

えっ、っていうか。
そんなことより、と信一は思った。

(は?うちの幼馴染、ばか可愛いんだが??)

シンプルな白のリブタンクトップが十二のよく引き締まった体に程よくフィットしていたが、その上にショートスリーブのテーラードジャケットを羽織っているためか、信一にはいつもより十二が華奢に見えた。夏モノらしく袖が大口で丈も短め。ゆとりあるボックスシルエットが着心地の良さそうな、キャメル色の薄手のジャケットだった。その首元でゴールドの華奢なチェーンネックレスが品良く主張している。同じくゴールドのピアスも今日は小粒で控えめ。

強いアクセントアクセサリーとなっているのは、なんていっても黒縁メガネの方だった。それからシックで大人なデザインの腕時計。たしか虎兄貴からの贈り物だと喜んでいた時計だったか。膝上丈の、こちらもボリューム感があるハーフパンツは黒だったが、そこからスラリとのびる筋肉質な素足が履くスリッポンのようなローファーも黒だった。

メガネや腕時計がインテリなのか、膝小僧がワンパクなのかもはや不明だが、信一には分かる。今日のあいつの気分はおそらく「近頃自我が芽生え始めたしっかり者の世話焼き弟くん」コーデだ。その上、今日の信一の気分は「ふんわり色っぽいおっとりぽやぽや天然お兄さん」コーデだった。

さすがは俺たち。以心伝心。噛み合うことこの上ない。

信一は時計台の方へ向かいつつ、わざわざ十二の背後の方へと回った。抜き足差し足で近づいて、十二の真後ろに立つ。それからニョキッと両側から腕を差し込み、そのまま少しだけ背の低い、しかし自分よりも筋肉質な体をギュっと抱きしめる。

突然のバックハグに十二が少しだけ身じろいだ。おそらく今日一番イラっとしただろう。「めんどくせーのがしゃしゃり出て来た!」という怒りをその背中から受け取って、信一が心中で「ウケる」と笑う。そんな十二を腕の中に閉じ込めたまま、肩越しから顔をのぞかせて、信一は相対する男たちにニッコリと上品に笑いかけた。

「ごめんなさい。うちの弟が何かしました?」

突然ふってわいた青年に、男たちは虚を突かれたようだった。しかし、その正体(といっても偽であるが)を知って納得をしたように話しかけてくる。先ほどから声をかけていてもずっとツンとした塩対応をする弟に比べて、兄の愛想が良かったのも男たちを勢いづかせた。

「あ、お兄さんなんだ」
「え~、兄弟。似てないね」
「あはは、よく言われるんですよ」

信一がフンワリと笑って応対すると、十二の手が信一の腕を握った。十二は体勢も表情も変えないままに、ギギギギと手だけに力が篭めてきた。触られた手のひらが熱い。

(めちゃくちゃ嫌がってるんだけど、こいつ)

信一が男たちに笑いかけているのが気に入らないらしい。十二の不機嫌がますます酷くなっていく。今日はせっかくのハッピーデーなのに可哀想に、と信一は他人事のように同情した。だがここは限りなく穏便に、だ。何の揉め事も起こさず素早い撤退が最優先。今日は重要な予定がこの後に控えている。こんな無駄な時間で機嫌を損ねている場合ではない。掴まれていない方の手を十二のお腹に当てて、なだめるように擦ってやればちょっとだけ十二の力が弱まった。

「お兄さん、めっちゃ綺麗だね」
「もぅ、何言ってるんですか。こんなしがない男を捕まえて」
「いやいや、弟さん可愛いけど、お兄さんは美人だよ」
「ん~。もしかしてですけど、この子のことナンパしてました?」
「言い方がちょっとなぁ。でも特に予定がないなら、一緒に遊ばない?弟くんも一緒にさ」

あー結局、ナンパだったか。そりゃイラつくはな。痛い痛い痛い!いやもう、怒ってるの分かったからバカ力で俺の腕を締めんな。手跡がついたらどうしてくれんだ!

「あの、俺たちはこの後に用事を控えているので

信一がヘニャリと笑って首を少しだけ傾けた。お願い、というように瞳に水分を溜めてあざとく潤わす。サイドに避けた前髪をハラリと零して、おずおずとした感じでやんわりとお断りをした。断っているというのに目の前の男たちの熱視線の度合いが上がったような気もするし、2人くらい喉をゴクリと鳴らしたような気もするが、そんなこと知ったことではない。これだけ下手に出ているのだから解放してくれないと困る。主に腕の中の男が暴れそうで。

「だからこれで失礼します」

信一はそう言うと、踵を返そうと思って抱えた十二の体ごと一歩後ろに下がった。

「あ、待って。そんなこと言わずに、少しの時間でもいいからさ」
先ほど喉を鳴らした男の1人が思いの外に積極的だった。引いた信一に対して近寄ってきてくる。顔を赤らめながらだらしなく顔をニヤつかせて、なれなれしくもボディタッチをしようと腕をのばす。熱くなった手のひらが信一の肩に触れようとした瞬間。


バシンッ。


渇いた、強く弾いた音が鋭く響き渡った。一見はずっと無言のまま大人しくしていた弟の方が、目にも追えない素早さと思いきったような力強さで、男の手を大きく叩き落したのだ。場が静まり返る。弟は感情が見えないほどに極めて無表情であった。しかしそれゆえに不気味さを孕んだ声が一閃、貫く。


「兄さんに触るな」


静かな声音なのに重圧を感じる。ついには剣呑な雰囲気を隠そうともしない、あまりにも冷えきった目がその場を凍りつかせる。

が。
兄の方はそれどころではない。


兄さん!?!?


何それ!?めっちゃいいじゃん!可愛すぎるだろ。もっとよこせ。十二の腹にあてたままの指をトントンと慣らすと、耳元に小声で思わず喋る。

(今の!超イイ!もう一回言って!)
(うるせー!そんなことより、こんなヤツらに色目使ってんじゃねぇ!)
(はぁ?使ってないし。だって早く穏便に退散するしかないじゃん、こんな状況。そもそもこいつら一般人だろ?)
(知らねぇ!兄さんに寄るうぜぇ虫は俺が全員で切り殺す!!)
(いやお前ノリノリじゃねーか。いねぇよ、世間にそんな物騒な弟)

「おい、何すんだよ」
手を叩かれた男が声を荒げた。思いにもよらない反撃を受けてカッとしたらしい。それに動揺もみられた。あまりこういう場面に遭遇したことがないのかもしれない。十二とヒソヒソと喋っていた信一は、やっと意識をそちらの方に戻した。
(危ない、危ない)
兄さん呼びのあまりの可愛さにテンションが上がってこいつらのこと無視してた、と信一は改める。男は今度は怒りのままに十二の胸元を掴もうと手を伸ばしていた。

信一は相手の手を叩いたまま前に出されていた十二の手を素早くとった。後ろから腕をのばし、そのまま十二の指に自分の指を絡ませる。2人の手を合わせて十二の胸元まで持って行くと、もう一度抱えた十二の体ごと一歩後ろに下がった。十二を後ろに引き寄せたことで、掴んできた相手の指が宙を掴む。

「こらこら。手を出したりしたらダメだろう」
ね?と十二に優しく注意してから、固まってる男たちの方を向いた。
「すみません。俺の弟、俺のことが大好きなんですよ」
また愛想よく丁寧な口調で笑いかける。
「ほんとブラコンで困っちゃいますよね」
悪気はないのです、だから許して欲しいな。という主張を通すように、困り眉でいじらしい表情をすれば、少しピリついていた表情や態度だった男たちの様子がかなり緩和された。「仲いいねぇ。年が近いのに」なんていう言葉さえ聞こえてくる。

「でも

信一は言葉を切った。十二の体に巻き付かせていた腕にもう少し力を込めてギュウと抱きしめる。すると十二が手を繋いでいない方左手をスッと上げてきて、自分の顔の真横にある信一の頭をあやすようにサラリと撫でた。外側から内へ引き寄せるように撫でられたので、信一が自然と自分の頬を十二の頭に寄せた。見せつけるように愛しそうに頬ずりして、ずっと柔らかかった瞳の色をグルリと変化させる。

「俺も...こいつに手ぇ出されたら、アンタたちの喉かっさばいちゃうかも」

にぃ、と弧を描くように笑う兄弟の口。すぅ、と細まる兄弟の目。表情はまるで惑わすような艶めかしさを湛えているのに、その目の奥にまるでケモノのような妖しい光がぼぅ、と灯る。兄弟の様子は誘惑的にも挑発的にも見える。目が吸い込まれるような魅惑さ。しかし触れれば終わりのような危険信号も、男たちの頭の片隅で鳴りやまない。

その時、その集団に近づく足音がした。全員が一斉にそちらを見ると、そこには2人の中年男性が立ち止まり、ジッとこちらを見つめていた。

その瞬間、妖艶な顔をしていた兄弟がガラリと雰囲気を変えた。パァと大輪の花が咲き誇ったように顔が明るく輝く。一瞬の出来ごと。まるで幼くなった2人がお互いの体を解いてタッと駆けだした。

「パパ!」
兄の方がグレーヘアの美丈夫に。

「父さん!」
弟の方が黒髪のダンディに。


ぱぱ?とうさん??


いや全員顔バラバラで誰一人似てないな?
っていうか兄と弟だけどパパで父さん?
どういうご家族編成で??

唖然とする4人の男たちの前で、兄がパパと呼んだ男性の腕に嬉しそうに自分の腕を絡ませる。自分たちに向けていた柔らかい表情など比ではない程、とろけた優しい表情で懐いている。その横で、弟が父さんと呼んだ男性の横にスッと背筋を伸ばし立っている。自分たちに向けていた冷めた顔つきではなく、朗らかな中に凛とした様子を秘めながら、熱心に相手を見つめていた。

パパと呼ばれた美丈夫の方が、4人の方に顔を向けた。
「息子たちが何か?」
声音は穏やかだったが、4人は一斉にビクリと体を跳ねさせた。なんか不味い気がする。そう本能が訴える。「いえ、なんでもありません!」と断るとそそくさとその場を逃げ出した。


早歩きで去る男たちの後ろ姿を「あらまぁ」という顔で見ている信一に、龍兄貴が揶揄うような声をかけた。
「黒社会を出すのは禁止なんじゃなかったのか?」
「黒社会じゃないよ。“仲睦まじい兄弟ごっこ”じゃん」
兄貴たちも入れてファミリー編成。今回は湿度高い兄弟でいってみました~と、信一が唇を尖らせる。
「俺たち物騒でした?」
そう十二が聞くと、顔を向けられた虎兄貴はフッと息を溢す。
「まぁ、せいぜい子猫が二匹、毛を逆立ててたくらいだな」
「じゃぁ、セーフだね」
ひひひ、と信一がイタズラっぽそうに笑う。
「でも気分に水を差されちゃった」
「ご機嫌を直せ信仔」
「直ったよ、兄貴が来たもの」
「せっかくの兄貴参加のチートディに機嫌なんて損ねていられないっす」
そう十二が言うことに信一もコクコクと頷く。

しかも兄貴が参加は久しぶりだった。それほど今回の仕事は頑張ったのだ。その素晴らしい成果から「たまにはお前たちのご褒美日に一緒に行くか」と兄貴たちから声をかけてくれた。これには信一は十二も大喜びで返事をした。子供の頃は兄貴たちに手を引かれて、信一と十二がしたいことをするために4人で外へ出るのが馴染みだったが、今ではその機会はめっきり減った。だから時々あるこういう日はスペシャルチート“デート”デイだ。2人のしたいことを、兄貴たちがエスコートしてくれる。

「虎兄貴、お店予約とってくれてありがとうございます」
「人気がすごくて半年は予約が取れないって聞いてたのにすごいっ」
「まぁ、それなりの伝手でな」
「今回はどういうケーキ屋なんだ?」
「モンブランなんだけど、注文したら目の前でモンブランクリームを絞ってくれるんだって。上からシュルシュルたっぷりマロンクリームがかかってすごい美味しいって」
「あとかき氷も有名らしいっすよ。口コミによるとすっげぇフワフワだって。あずきと白玉入った抹茶シロップのが人気みたいでなんか金箔かかってて豪華だったな」
しかも高級ホテルのラウンジスイーツ!有名パティシエ監修!楽しみ~と目を輝かせて笑う信一と、その信一を見て笑う十二に龍兄貴はふむ、と言う。
「お前たちがそんなに好きなら、家でも作れるように参考にするか」
「「兄貴~」」
信一と十二が息のあった兄弟のように一斉に歓喜の声を上げた。
「ほら、あんまりはしゃぐな。後からバテるぞ」
そう虎兄貴に声をかけられ「「はーい」」といいお返事もする。

そうだペース配分は大切だ。
高級スイーツの後は兄貴たちとのショッピングが待っている。信一と十二で兄貴たちのコーディネートをするのだ。


では。


いざゆかん、生絞りの和栗モンブラン&天然水の和風かき氷!

今日は一段と素晴らしい日になる予感に、信一と十二は胸を高鳴らせるのであった。