燐々
2025-05-13 00:10:50
4610文字
Public 供養
 

イトリンさん没箱
着地点不明につき没になった物の墓。
ページ毎に一応違う作品になるはずだった物の成れの果てです。


「おっ……も、い……!」
 目覚めてすぐに自分の口から飛び出したのは悲痛な呻き声だった。私の体を抱き締めている恋人の筋肉質な腕が重くて重くて仕方がない。嬉しい重さだなぁ……と思うには苦しい腕をバシバシと叩いてみても隣で目を閉じているライトさんの瞼はピクリともしない。深く息を吐きながら少しでも体がマシになる位置を探してモゾモゾしていると「……ん」と小さく零した彼が私を抱き竦めたまま体を軽く丸めてしまったから余計に狭くて苦しい。
 そして、間近に迫った綺麗な顔にドギマギしながらも「起きないなら仕方ない」と目を閉じて、せめて私と同じようにちょっと苦しく思えばいいと意地悪なことを思いながら彼の長い足に自分の足を絡めて乗せた。

 小柄な相手が腕の中で呻いているのは分かっていた。ただ、ちょっとした悪戯心というやつで狸寝入りを続けていると細い足が自分足に乗りかかってきて満足そうにしている気配が伝わってくる。起きているとバレれば「仕返し!」とでも言われそうなものだが……あいにく彼女の足くらい重さのうちには入らない。下手に笑わないように気をつけながら相手の息苦しさを楽にする為に腕を動かしてやると、すぐに二度寝を始めたらしいリンの緩い寝息が聞こえてくる。
……細いな」
 そっと目を開けて腕の中にいる存在を確認する度に細いと思う。吹けば飛ぶ……とまでは言わないが、仮に自分の右腕を振り下ろすようなことがあったとすれば木っ端微塵に出来てしまう気がして、その想像に毎回肝が冷える思いをする。そんなことをする日は誓って有り得ないが、力を込めて抱き締めた時に背骨を痛めたりしないのか心配にはなる。だからこそ、重苦しく抱えていた感情に恋の名前を付けて彼女に手渡し恋人になった時、真っ先に俺が頼んだのは抱き締める強さの確認だった。こっちは真面目に言っているのに「ライトさんって猛獣か何かなの?」なんて言いながら気楽に笑って抱きついてきた姿をよく覚えている。そして、背中に回される腕の細さにも恐ろしくなって俺が背中へ手を添えるようにしていたのと対称的に、からからと笑った相手は「ほら、もっとぎゅっとして!」と終始楽しげだった。
「可愛いやつだな」
 俺よりもずっと小さな体で、俺を受け止めるのは骨が折れるだろうに……なんの苦もなく笑ってみせる彼女だから埋めるつもりも無かった胸の空白を預けていいと思えた。
 すっかり自分の体よりも大切になってしまった柔らかい相手を囲うように腕の中へしまい込んでから目を閉じると、胸の中でもぞもぞ動いた彼女は額をぴったりとくっつけてくる。独り言は――どうやらしっかり聞かれていたらしい。
「可愛いとかは起きてる時に言ってよ」
「起きてたんだろ?」