sidori
2025-05-12 00:00:00
18077文字
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人妻定食五月号『学パロ』

モブ視点で高銀の坂田に失恋するNTRマガジン五月号。


jilの『未練たらたら匂わせ定食 しっぽりジューシー元彼の影添え ~恋の駆け引き巻き込み焼き付き~』



「元彼から連絡来てまじ最悪なんだけど」
授業の合間、そんな言葉が聞こえてきて、僕はふとその方向に視線を向ける。
僕の斜め横にいる坂田が、その前の席にいる高杉に向かって話しかけていたところだった。
坂田は銀髪の派手な見た目をしているが、気さくな男だ。面倒くさがりのようで面倒見がよくて、気がつけばクラスの中心にいる。
一方、高杉はその鋭い目つきの印象のままというかーーつまり、不良だ。教室で暴れたりしたことはないが、遅刻やサボりはしょっちゅうで、他校の不良と喧嘩しているなんて噂も聞く。そのせいで、顔はいいものの周囲からは近寄り難いとされているのだ。
そんな相容れないような二人だが、幼なじみかなにからしく、高杉が珍しく学校にいるときは、一緒にいることが多い。
といっても、坂田がちょっかいかけて、それに高杉がうざったそうに返す。
そんな不思議な距離感の二人だった。
「ほら、見てよ。このロイン」
言いながら、坂田がスマホを高杉の顔面にかざす。メッセージアプリのトーク画面を見せているようだった。
「昨日もずーーとうるさく、メッセージが来るの。復縁しろ復縁しろ!って、マジで迷惑なんだけど。な?そう思わない?」
「返事すりゃいいだけだろ」
「だからー、もう別れてんの!なんで返事しなくちゃいけないわけ!?」
「納得してねェんだろ」
「マジでしつこい、しつこ杉!な!モブ山くん!」
いきなり僕に話が振られて、びっくりする。
僕と坂田は全く話さないわけではないけれど、そこまで親しいわけではない。
ちなみに僕はモブ川だ。
「えっ、えっと……そうだね。別れた相手にしつこく連絡するのは……よくないね」
しどろもどろにそう答えると、高杉にギロリと睨まれた。
「ひっ!」
「クラスメイト怯えさすな!」
すかさず、坂田が高杉の頭をはたく。僕みたいな人間からすれば、とても恐ろしい行為なのだが、坂田はなんともないようだ。
「言っとくけど今回はまじだから。まじで別れるから。復縁とかないから」
「テメェ、それ何回目だ」
……25回くらい?」
「え、それ全部同じ相手?」
思わず聞いてしまう。坂田は大きく頷いてから「でも今回はマジだから!」と言った。
「今回という今回はマジ!本気と書いてマジ!ぜってー許さないから!」
「そ、そんなに……。えっと、なんで別れたの?あ、まさか相手の浮気とか……
「んなわけねェだろ」
食い気味で高杉が言ってくるから、僕はまた「ひっ」と縮み上がる。
断言する口ぶりから、もしかして、高杉も知っている相手なのだろうか。
「どうせ、またくだらねェ理由なんだろ。そのうち愛想つかされるんじゃねェか?」
「上等だね!でもさー、その元彼は俺のことまだ大大大好きみたいで。見ろよこの長文メッセージ。まじポエム。どれだけ俺のことが好きかめっちゃ語ってくんの。クールぶって口ではなんも言わないくせに。文章だと饒舌になるのなんなの?シャイなあんちくしょうなの?」
ほらほら、と坂田が高杉に押し付けるようにトーク画面を見せる。
「おい」
「しかも、すっげーねちっこい文章じゃね?まあ、思い返せば、いつもキスもセックスもねちっこかったし。あーやだやだ、ねちっこい男って」
「セッ……!?」
突然の卑猥な言葉に思わず反応してしまうのは、思春期童貞の悲しい性だと思って欲しい。
僕たちまだ高校生なのに……いや、高校生だからなのか!?
青春と書いて性春なのか!?
そっか、坂田……彼氏とセックスしてるんだ……。はずかしいな……セック久ってしとこ……
なんだか急に生々しくて思えて、思わず坂田の首すじを見てしまう。
そういえば、ときどき首に絆創膏を貼ってたり、制服の下にタートルネックを着ていたりしてたけど、そんなまさか、考えすぎに決まっている……
頭のなかで、ベッドの上で裸の坂田が顔も知らない彼氏に組み敷かれている様子を想像してーー高杉にスゴい形相で睨まれているのに気がついて、慌てた視線を逸らす。
「しかも遅漏だし」
坂田が意味深に僕に視線を送ってくる。
え、なんだろ。もしかして、いや、そんなまさか。
「元彼のセックスのムカつくところ教えてやろっか?」
そう言って、坂田が高杉のつむじをツンツンとつつく。高杉はうっとうしそうにそれを払うが、坂田はニヤニヤしながら、指を折って数え始める。
「まず、すぐヤりたがるくせに脱がすの焦らしてくるところが面倒くさい。あと、胸揺らしてくるところとが変態っぽい。揉むとか触るならわかるけど、なんだよ揺らすって」
「テメェがデカイの勝手にユッサユッサ揺らしてるだけだろ」
「いや、あれは明らかにわざと揺らしてるね。目を見ればわかる。あの、血走った目が証拠だね」
なんだかアダルトな話題になってきて、僕はどこに視線を向ければいいのか悩んでしまう。このままフェードアウトしてしまえばいいのだろうが、ここは悲しい思春期の性……。興味がないわけではないわけではない。
「ゴムだって用意してなこないから、俺が用意してるし」
「自分がゴム買うからって金たかってんだろ」
「俺だって準備とかいろいろあるのに、無理に襲ってくるし」
「4対6の割合で襲ってんのはテメェのほうだろ」
「俺が甘いもの食べてるとすぐ肥るぞって言ってくるし」
「夕食前にドーナツ15個とか食うからだ」
「そのくせ、喧嘩するとカフェ奢ったりスイーツ持ってきたりとか、甘いもので機嫌取ろうとするし」
「テメェ、甘いもの以外で機嫌治るのかよ」
「とにかく、俺はもっとこう……、こう……!愛されてるって実感したいわけ!」
「抽象的すぎんだろうが」
坂田の演説に対して、高杉は呆れたように溜息をつく。
「で……、それが別れるって言い出した原因かよ」
「いや、それはまた別の理由」
「はあ……
高杉が何かを言おうと口を開いた瞬間、授業がはじまるチャイムが鳴る。
「チッ」
舌打ちをひとつして、高杉が前を向く。坂田もスマホをしまって、席に座り直した。
先生の声と、ノートや教科書を開く音に、僕も慌てて黒板に意識を向けた。
◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎
「元彼が相変わらずしつこいんだけど」
翌日、また坂田が高杉に対してちょっかいをかけていた。
「昨日とかなんかめっちゃ電話してくるし、しかもなんか、ここ最近はずっとバイト先にまで押しかけてきてるんだけど?」
「テメェのバイト先言ってみろよ」
「駅前のコンビニ」
「不可抗力だろ」
「いいや絶対に俺目当てだね!間違いなく!血走った目で俺を見ながらアホロチョコ買っていくもんね!あと、ヤクルコ」
どうやら、坂田の元彼とやらはいつも血走っているらしい。
「「駅前のコンビニにしかヤクルコ売ってねェんだよ。テメェの自意識過剰だ」
「いーや、そんなことないね!な!モブ田くん!」
「はひっ!」
モブ川だけど、返事をする。
「お前どう思う?これ、ストーカーじゃね?」
「え!あ、うん!そうだね」
「しかも、絶対に1000円札出てくるんだぜ?ぜったい、お釣り返すときに手を握るためだぜ?」
「うぬぼれんな」
深刻な話なのだろうか。坂田はが困っていて、なにか僕にできることがあるなら力になってあげたい。
そう思いながら、僕は二人の会話に耳を傾ける。
「それより、銀時。テメェ、次の数学の課題やったか?」
「あ……
「テメェ……次忘れたら補習って言われてただろうが」
「い……
「ったく、だから昨日電話してやったのに出やがらねェから……
「う……
……
「し、しんちゃあん……。み、みせて♡♡」
「言っておくが、俺もやってねェぞ」
「なんでだよ!お前も補習じゃん!はっ!まさかそれが目的でーーっ!」
「俺はテストで点とってるから免除だ」
「くそ!この野郎!」
「これに懲りたら電話には出るんだな」
「てか、メッセージで送れよ!ブロックしてないんだから!確信犯だろテメェ!」
坂田、僕の課題見せてあげるよ……
そう言う練習を頭のなかで何度もしてーー意を決した瞬間、坂田がガバッと高杉の肩にすがりついてーーその動きに僕はびっくりして思わず座り直してしまう。
「はぁ、もう無理……甘いもの欲しい」
……ったく」
高杉は坂田の頭をポンポンとたたくと、仕方なさそうにポケットをあさる。
そこから出てきたのはアホロチョコだった。
「糖分……!」
坂田が目を輝かせて、アホロチョコを奪うと、すかさず中身を出してパクリと食べる。
「あーうめぇ……。やっぱり俺に優しいのは甘いものだけだよ。お前が俺の新しい彼ピだ、アホロチョコ……!」
「おい」
「なんだよ、俺にくれるために買ったんだろ?お前、甘いものなんてヤクルコくらいしかとらねーじゃん」
坂田はさっきまでのしょんぼりとした顔から一転して嬉しそうにパクパクとアホロチョコを頬張る。
「あとで返せよ」
「そういうみみっちいところもムカつくー」
「課題の件、先生にチクるか」
「オイヤメロバカ!松陽は関係ねェだろ!」
二人が言い争うなか、授業開始を告げるチャイムが鳴る。
結局、僕は坂田に課題を見せてあげるタイミングがつかめず、坂田は無事に補習となった。

◾︎
「最悪……。俺の元彼最悪なんだけど」
机に突っぷしたまま、坂田が高杉の背中をシャーペンの背で刺していた。
「んだよ」
「何もしないって言ったくせに何もしないって言ったくせに何もしないって言ったくせに」
ブツブツと呪文のよう呟きながら、坂田は恨みがましく高杉の背中を攻撃する。
「考えなしにホイホイと家に上げるからだろ」
「宿題見てくれるって言ったからだろ!」
「イッテ!おい、刺すのやめろ!」
「だ普通、別れた相手のこと抱くかよ」
「えっ!」
声が出そうになって慌てて声を抑える。
抱くーーそれってつまりセック久……
つまり、坂田は昨日セック久したってことか!
穴に棒を刺したってことなのか!?
そんな、高校生で、しかも別れた相手となんてーー爛れている!!
僕は雷が落ちたかのような衝撃に震える体を抱きしめて、なんとか耐える。
「だったら、今夜は先生が帰ってこないなんて言うんじゃねェよ。満更でもねェくせに」
「う!る!せ〜!」
「だから、刺すな!ただでさえ、俺ァ今背中がヒリヒリしてんだよ!どっかの誰かのせいでな!」
「こっちだって腰とケツとおっぱいが痛いっての!どっかの腐れ元彼のせいで!」
「その元彼っていうの、いい加減に止めろ」
「復縁してないから、まだ元彼だもん」
「ったく、この間から何に怒ってんだよ、テメェは」
頭のなかで坂田があんなことやこんなことをされているのを妄想しながら、僕はなんとか二人の会話に集中する。
「本当に分かんねぇの?」
「皆目検討もつかねェな」
「はぁー、最悪。俺の元彼まじで最悪」
「おい」
「前のデートのとき、すっげーエロいおニューの下着つけてたのに無反応だったから」
……
「ちなみに、今日はリベンジでそのパンツはいてる」
……
「本当は昨日つける予定だったのに。俺が準備する間もなく、どっかの元彼が襲ってくるから……
……
「今から元彼の家でリベンジマッチしようと思うんだけど、元彼今日は疲れてるかも。なんせ、朝まで離してくれなかったし」
……
「どこ行くんだよ、授業はじまるぞ」
……ふける」
「どこに?」
「俺ん家」
「俺もなんだか熱っぽいし、早退しまーす」
そうして誰かが止める間もなく、高杉と坂田が連れ立って教室から出ていく。
その背中を見送ってーーもう我慢の限界になっていた僕は席を立つ。
向かう先は男子トイレ一択。
ちなみに、僕だけでなく、クラスの男子みんながトイレに立ったため、このことは男子トイレ大渋滞事件として学校の七不思議のひとつに刻まれたのだった。