獣と獣の小話たち その一

pixivに上げていた同タイトルのまとめより、既にこちらに掲載済の作品を除いた短い作品たちの再掲となります



本人には秘密の手入れ




 出会った頃からクルウは身だしなみに無頓着だった。そもそも風呂嫌いなのもあって、ある程度汚れを落とせれば良いという感覚らしい。最近は気を使ってくれるようになったが、疲れている時などは風呂上がりに身体を拭いて髪を乾かしたらそのままベッドに寝転んでいたりする。



 で、そんな彼に最近ある行動をしている。それは時刻も真夜中に入る頃合い、クルウがすっかり寝入っている時にやる事だ。寝室の戸棚の引き出しからそっと木櫛とブラシを取り出して、仰向けで眠っているクルウをコロンと横向きにさせる。クルウは普段から眠りが深いようで、ちょっと動かしたくらいでは滅多に起きることはない。元々夜行性のムーンキーパーだが、それは夜でも変わらないらしい。少し羨ましい。

 まずは頭をそっと手櫛で撫でる。ふわりと自分と同じシャンプーの香りがした。何箇所か絡まっているところがあるので、それを木櫛でゆっくりとほぐしていく。毛先に僅かにある濃紺が白とサラサラと混じる。もう一度撫でで感触を確認し、ここはもういいだろうと判断する。
 次に尻尾を撫でる。やはりあまり手入れをしていないようで、ほんの僅かに毛がボールのように固まっている部分があった。毛を引っ張りすぎないように慎重にほぐしていく。その後は全体の毛並みを整えるようにブラシで優しく撫でる。段々と白い毛がふわふわを取り戻していった。そうしてやっと、綺麗になったと満足した。一旦ベッドから離れて木櫛とブラシを片付けた。
 最後の仕上げ……というよりここからが本番かもしれない。ここまで未だに眠ったままの彼の尻尾を優しく掴み、毛並みを楽しむように撫でまわす。存分にモフモフする!

 最初はストレス解消というか、とにかく癒しが欲しくなってどうしようもない時に彼の尻尾をこっそり借りていた。しかしその過程で、彼があまりにも手入れを怠っていることが分かってしまった。俺のモフモフがこんなに乱れて! 許さん俺がなんとかしてやる! とばかりに気が付いたら東方のかなりいい櫛を買っていた、勢いとは怖いものである。
 彼から尻尾を差し出してくれるのは余程機嫌の良い時しかないので、今はこうしてこっそりと楽しませてもらっている。勿論彼には内緒のひと時だ。