ろころころ
2025-04-28 21:45:50
5719文字
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"人間"/pk擬








「まったく、面倒なことになったのだ。あいつら、人間共と和解しようだなんて正気じゃないのだ。狂ってるのだ」

こちらは別室。いつもの通り一人がけソファーにふんぞり返ったピカ様は、一匹の忍者による報告に溜息をついた。

比較的人間に優しくされる機会が多かった者達だ。カーニャに関しては人間に育てられているからな。切り離して考えるのは難易度が高いのだろう」
ま、そうよね。カーニャにとっては人間は育ての親みたいなものでしょうし。他の子達だって、きっと家族みたいに思ってる。……異常なのは私達の方なのかしら」
「マギア」
……わかってるわよ。この世に優しい人間がいることが事実だとしても、人間から私が暴力を受けたのだって事実だから」


マギアはトレーナーの男から数々の暴行を受けていた。しかし"トレーナーとポケモン"という弱い立場にいたマギアは、彼に逆らうことは出来なかった。そして正式な関係でマギアと男が結ばれていた以上、他のポケモン達が彼女を救い出すのも難しかった。

「けどだからといって、やり返して良いのかしらね。それってアイツらと同じにならない?」

魔法少女の言葉に、一同は目を瞬かせた。

「それ言ったらゴツゴツメットが違法になりません?」
「ゴツゴツメットは知らんが、罪に問われるのは先に手を出した方だ。正当防衛という言葉があるくらいだからな。それに

アレックスは続ける。

「この島には警察なんて来やしない。事務所の権限で外部からの干渉は全て断ち切られてんだ。だからここには法律なんてありゃしないし、善し悪しなんて気にしてられるほど俺達に余裕なんてねぇさ」

エオス島は、大陸から離れた"エオス事務所"が所持する小島だ。故に大陸からの警察の干渉は不可能であり、事務所による独裁とも言える管理が展開されている。
だからこの島で起きている暴力沙汰も今まで問題視されることは無かったし、実際に何度も揉み消されていた。外部に漏れようものなら対象の人物やポケモンを消すそんな残酷で残忍な性格が、皆の愛するエンタメゲームの本性なのだ。

「それに急がねぇとホムラやルビーの命も保証できん。ホムラは島の外で島内の話を漏らされねぇように狙われてるし、ルビーも早く助け出さねぇと殺処分の決定が下されたら取り返しがつかねぇ」
「その通りなのだ。カゲ。アイツらがまだピカ様達の作戦に納得がいかないと言うなら、ポケモン仲間の選手の命と人間、どっちが大切か考えろと釘を刺してくるのだ」

追放されたが情報の漏洩を恐れた事務所により命を狙われているホムラと、トレーナーとの喧嘩で大怪我を負わせてしまい監禁されているルビー。彼らの命も、この作戦には掛かっている。

……承知した。マギア、お前も納得したか?」
………ええ。私だって友人と人間なら友人を選ぶわ……………でも、その

マギアが心配しているのは、警察に捕まるだとかそんな話では無い。そうではなくて。

「本当に、やるの?だって私達はポケモンよ?人間を簡単に殺せる力を持ってるのポケモン相手しか戦ったことないし手加減したって、殺してしまうかもしれないのよ?」
「んなもん、十分承知の上なのだ。本来"戦い"というものはそういうものなのだ。これは、"バトル"じゃなくて正真正銘の"戦い"なのだ」
「怖く、ないの?」
「ピカ様は、お前達ポケモンを守るためなら戦うのだ」
……………

彼は、既に心に決めていたようだった。
いつもふてぶてしい態度を取っているこのマスコットは、本当は誰よりもゲームを愛し、選手を大切にしているのだ。

「私も久々に撃ち合おうかと。警察がいないのは安心ですしね!」
俺も戦うさ。ホムラとルビーを救う為にも、ホムラとフローラと紡いだ約束の為にも。けどよ、勘違いすんな。俺達は守るために戦うのであって、倒すために戦うんじゃあない」

守るためにその言葉は、マギアの心に深く突き刺さる。

でも、どうしようもない時は、殺すんでしょ?」
「マギアさん、世の中にはどうしようも無いことってありますから。犠牲が小さく済むよう私たちも最善を尽くしますが、彼らが理解を示してくださらないのであれば、その足りないおつむを撃ち抜く他無いのですよ」
奴らはピカ様達を殺す気で襲いかかってくるのだ。ゆえに、ピカ様達だって油断は出来ないのだ。人間の技術は恐ろしいのだ」
「マギア

幼馴染が、少女に向き合う。

「カゲあんたも、戦うの?殺すかもしれないし、死ぬかもしれないのよ?」
…………俺も皆と同じだ。正しいゲームの形を取り戻したくもあり、仲間を救いたくもある。しかし、それ以上に」


彼の瞳には、確かな怒りが宿っていた。


「拙者は──────俺は、お前を傷つけた奴らを許せない」


そう言って、逃げるように魔法少女の幼馴染はその場を立ち去った。



再び沈黙が訪れる。



……えっ、もしかしてカゲ私のために怒ってたの?」
「ぶふっ!?」

沈黙の間、ぷるぷると震えていたリグが遂に耐えきれなくなったのか崩れ落ちた。

…………いやいくら何でも今更過ぎるだろ」
「鈍感にも程があるのだ茶番に付き合わされたピカ様達の時間を返して欲しいのだ!」
「カゲさん大好きなガールフレンドのために反抗の企てだって始めたのに何も伝わってないとか哀れすぎて泣けてきますねんっふふ
「だ、大好き!?」

今日一番の衝撃かもしれない。人間を攻撃するとか、仲間を救うとか、そんなことが全て吹っ飛ぶぐらいには。

「えっちょっそれどこ情報よ!?吐きなさいクソトカゲ!知ってること全部吐きなさい!!!」
「えー吐いたらもれなく私がマギアさんとカゲさんに消されるので秘密です♡」
「燃やすわよ???」

第二の茶番に残された二人は溜息をつく。

「あれだけ騒ぐ元気があるなら大丈夫じゃねぇか?まぁちょっと脅しすぎた気もするけどよ」
「実際にガチで人間に対して殺意が湧いてるのなんてカゲぐらいなのだ。ピカ様はホムラとルビーを救って、あとはクソ野郎な人間だけ追い出せれば目標達成なのだ」

そう。散々脅してきたが、あくまで「万が一殺してしまった時の可能性」を示唆していただけなのだ。ただし、その可能性というものが現実になった時、覚悟が決まっていなければ心に大きな傷を負うことになる。

「計画だとお前とカゲは前線に出て機械兵を壊す予定だったのだ。機械は水に弱いのだ」
「おうよ。機械兵に関してはボコボコにしても問題ねぇからな。んで、お前とリグが人間共の動きを封じると」
「ピカ様はエレキネットで人間たちを捕まえてやるのだ。トカゲは遠くから人間の武器を狙って落とさせるって言ってたのだ」
「それならフローラとフクにも協力させるか?」
「ふむカゲが帰ってきたら他の奴らも集めてちゃんと話し合うのだ」


今から始まるのはバトルじゃなくて戦いである。



けれど、これは倒すための戦いじゃない。

仲間を、ゲームを、守るための戦いなのだから。




Fin