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ろころころ
2025-04-28 21:45:50
5719文字
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"人間"/pk擬
1
2
「ここに来るまで、ポケモンに対してこんな酷いことする
人間
トレーナー
がいるなんて、考えたこともなかったにゃあ」
「そっか、カーニャちゃんのトレーナーさんは凄く良い方だったんだもんね」
「そうにゃ。アオちゃんはポケモンにも人間にも友好的で優しくて
…
作るサンドイッチはヘタクソだったけど
…
」
生意気さと可愛げを絶妙なバランスで保っている後輩は、故郷に置いてきたトレーナーの話をする時だけは普段から想像出来ないほど静かなのだ。
「カーニャはトレーナーと戦うのは反対なのか?」
「いんやぁ?クソは叩いてなんぼだにゃあ。でも、」
シャモの問いには即答する。
カーニャは懐かしむように、窓の向こうに拡がる青い空を見る。決して離れていても、この空は彼女のいるあの場所に繋がっているとでも言うように。
「アオちゃんは、そんな物騒なやり方は嫌がる」
カーニャのトレーナーの少女はいわゆる"お人好し"だった。
「アオちゃんは悪いヤツ相手でも怪我をしたら手当てしてやるし、そいつが反省したなら許してあげる。そんな子だった」
「
…………
」
カーニャはトレーナーの話をする時、なんだかとても寂しそうな顔をする。フローラは後輩のそんな様子を静かに眺めながら、何て声をかけるべきか迷っていた。
「ふるっふー、なら人間たちが死なないように手加減する。僕たちポケモンはバトルの場になれば強者側だ。だから、生かすも殺すも僕たちの手のひらの上」
眠っていたはずの梟が、のっそりとした動作で翼を広げてやって来た。
「おお!フク先輩の言う通りだぞ!あいつらの動きを止めればいいんなら、何も痛い目に遭わせなくったって良いよな?眠らせたり痺れさせたり!」
「あ!それならピカ様のエレキネットで全部捕まえて貰えば良いかも?他の寮からプクリンちゃんも呼んで眠らせて貰うのもありだよね!」
先輩達がそれぞれ案を出し合って、穏便な方法を探し出そうとしている。
そうだ。本当は、戦いたくない。
愛しい"アオちゃん"が悲しむようなことをカーニャはしたくなかった。
確かに、エオス島のトレーナーや事務所の職員の中には酷い奴がわんさかいる。
カーニャだって悪い人間をパルデア地方で見たことが無いわけじゃない。誰かの物を盗む人、誰かを傷つけるようなことを言う人、暴力を振るう人
…
色んな"悪い奴"をアオちゃんのパートナーとして見てきた。
だけど、そんな奴らでも、自分のパートナーのことだけは大事にしていた。どんなに悪い奴だって、パートナーの前では"良い奴”になっていた。
だからエオス島に来て、そんなパートナーにすら暴力を振るう人間がいることを、未だに受け入れ切れていなかった。
(パートナーのことですら大事にできない悪い奴は確かに倒した方が良いのかもしれない
…
でも
…
)
でも、アオちゃんならきっとそうしないから。
カーニャだって、アオちゃんに相応しい、パートナーでありたかった。
「大丈夫だよ、カーニャちゃん!」
ふと、顔を上げる。
「おう!俺だっていくら悪いヤツとはいえ、人間をボコボコにするのは嫌だぞ!だって俺の周りにいた人間はみんな良いヤツだったし、その仲間を殴るだなんて、やっぱり良い気分にはならないじゃないか!」
「僕のトレーナーも、ゲーマーだけど悪いひとじゃない。ゲームしてる時の独り言はうるさいけど、僕がきのみをつまみ食いしたって怒らない」
「うん、私だって知ってるよ。確かに今のトレーナーさんはちょっとあれだけど
…
その前にいたトレーナーさんは良い人だったんだ。優しい子だったから、耐えきれなくてやめちゃったけど
…
もしも全部の問題が平和な方法で解決したら、あの子も戻ってきてくれるって
…
そう信じてるんだ」
…
ああ、そうか。
嫌なのは自分だけじゃないのか。
みんなだって本当は嫌なのか。
「
………
先輩、ありが──────」
「その甘ったれた考えが残虐な奴らに通じると
…
本当にお前達は思っているのか?」
背後から聞き慣れた声がした。
「か、カゲくん
…
」
「人間は
…
奴らはお前達が想像しているほど単純では無い。現に、奴らはエオス島内の情報の漏洩を防ぐ為
…
俺達どころか観光客すら殺す気だ」
「か、観光客!?それって人間もいるだろ!?同族じゃないか!」
「そうだ」
カゲは誰よりも早く、エオス島の情報や職員達の動向を秘密裏に探っていた。彼の幼馴染の少女、マギアはトレーナーにより酷い暴力を受けている。それを止めるための行動であった。
「奴らの動きを封じたからといって、仲良しこよしは不可能に近い。むしろ"ポケモン"という自分達が支配下に置いているつもりだった存在に嵌められた事に腹を立て、例え事務所から追放したとしても仕返しにやって来るだろう」
「ふるっふー、それは事務所の職員を全て新しい人に入れ替えても?」
「ああ。職員を入れ替えようともゲームの運営や配信の根本的なシステムを一から変えるのは難しい。元運営だった奴らはそれらを知っている。つまり、抜け穴を潜ってやり返しに来る可能性も高い」
カゲは一つ、深呼吸をした。
「俺達が同胞を殺す時
…
少なくともそこには縄張り争いだったり捕食だったりと、何かしらの理由が存在するからだ。しかし人間は違う。人間が殺人を犯す時
…
そこには"殺す為"という目的が存在する。ポケモンには理解出来ぬ感覚だ」
長らくエオス島の人間を観察してきた彼だからこその意見だろう。
「で、でもカゲくん
…
」
「
……
何も、無意味に殺せと言っているわけじゃない。しかし俺達は奴らに"力"を見せつけねばならない。そうしなければ、奴らは俺達ポケモンを何時までも見下し、思う通りに動く存在だと認識したままだろう」
考え直せ、と一言放ちカゲはその場を立ち去った。
「え、えっとー
…
どうするんだ?多分あの様子だとカゲ先輩達は人間達と力で戦う気だぞ
…
!?」
「うん、アレックスもホムラも
…
みんなそのつもりなの。やめて欲しいって言っても聞いてくれなくて
…
でも、彼らがやろうとしてる事も間違いじゃないんだ
…
」
フローラが俯く。友人達が戦う決心が出来ている中、フローラだけは心の整理が着いていなかったのだ。
「カーニャ、みんなを止めてやれなくてすまないね」
「
…………
いや別に
……
カーニャは
………
その、」
──────アオちゃんなら、どうする?
その答えを、聞くことはもう出来ないのだ。
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