トニー
2025-04-26 14:02:37
863文字
Public 感想・紹介
 

小蘑菇(一十四洲)の感想

小蘑菇(小さなキノコ)の紹介と感想です。

■ストーリー
 放射能汚染で生まれた異形の生き物が跋扈する時代、滅亡寸前の人類の版図はいくつかの基地を残すばかりだった。
 意識を獲得したキノコの安折(アンジュー)は怪我をした人間を助けたことで人間に変身できるようになる。
 その人間が亡くなったあと、安折は奪われた胞子を取り返しに人間の基地へ行くことを決意する。
 汚染は感染するため、基地には人間に化けた人外の存在や感染した人間の侵入を厳しく排除するための「審判者」がいた。
 安折が基地に着くと審判者の陸沨(ルー・フォン)が人々を容赦なく射殺しており、安折も呼び止められる。

■感想
 これはSF風味のBLではなく、BL風味のSFです。
 日本で書籍化するならBLレーベルではなくハヤカワSF文庫から刊行されるべき小説です。
 ポストアポカリプスものの代表として挙げられる作品はいくつかありますが、小蘑菇も並んで称されるべき作品だと思います。

 安折自身は淡々としているのですが、特に序盤は世界観の理解と重苦しい状況に慣れるのが少し大変でした。
 人類が滅亡へと近づいて状況は悪化していきますが、同時に安折と陸沨の距離も徐々に徐々に近づいて行き、陸沨を頼れるようになって人類の状況とは逆に安心感が増していくので中盤以降の方がストレス無く読めました。
 とても淡々とした、ある種文学的な描写で、じわりじわりと読者の心に浸透していくような小説です。
 安折がキノコだし陸沨は終盤までほとんど感情を見せないので人類愛に近い恋愛描写なのですが、それが逆に結末の感動を増した気がしました。
 (番外編ではしっかりカップルになっていますが。おっとりして純粋な安折は「キノコちゃん」という感じでかわいらしく、Sっ気のある陸沨がべったりかわいがっているのも頷けます)

 少し短いですが、終末世界の描写や全体の完成度が高く、結末の感動もあって強い印象を残しました。
 個人的にはもっとエンタメ要素の強い小説が好みなのですが、高評価なのが納得の完成度でした。

 おすすめ度:A