トニー
2025-04-13 21:28:19
1516文字
Public 感想・紹介
 

无限练习生【無限練習生】(妄鸦)の感想


■ストーリー
事故により手がうまく動かなくなった宗九(ゾン・ジウ)は世界一流のマジシャンとしての腕を失い、失意の底にいた。ある日無限流小説に穿書した彼は超常現象サバイバルオーディション「ホラー練習生」の参加者として、失敗すれば死が待っているホラー副本に次々と投入される。マジシャンの二つ名を得てすぐに頭角を表す宗九。彼は戦績評価No.1の通称「悪魔」を陥れたことにより、目をつけられることになる。練習生同士は直接対決を禁じられているため、二人は副本を通じて罠を仕掛け合い、激しい殺し合いを始める。


■感想
冒頭はスリリングですし、スラスラ読めて個々の副本もそれなりに面白いんですが、メインカプの愛の解像度が低くて感動の薄いお話でした。
あとこれは単なる好みの問題ですが、リアリティの薄いキャラクター造形なのが好みとは違いました。


感動が薄い理由

ネタバレ(クリックで展開)
 ・オチ(メインテーマ)が「愛こそ全て」的な割に愛の解像度が低すぎる。二人の殺し合いパートが長いのに、そこからの気持ちや関係の変化という最も重要な部分が「この期間のことは想像で補完してね」形式になっている。関係変化のきっかけも媚薬によるものな上に、セックスした後なあなあのうちに愛し合っている。6歳の悪魔のエピソードで説明しきるつもりであれば、そのエピソード内で悪魔とマジシャンの心情変化をきちんと描くべきだった。


 ・悪魔はマジシャンと殺し合ううちに惚れて「退屈しないとろが好き」と感じているわりに、「彼となら平穏な日々も良い」という心境になったり、矛盾がある。左記のような心境もありえなくはないけれど、それを納得させるには人物描写が浅すぎる。


 ・感情や愛が無いと書いているくせに実はあるという展開が多く、矛盾している。「ないはずだったが芽生えた」なら納得できるが、そのためには「これこれこういうきっかけと経緯で芽生えたよ」と説明するためのエピソードが必要。

 ・むしろサブカプの方がわかりやすくて感動的だった。

 ・ネットユーザーのコメントがほぼ全てのシーンに出てくるため、シーンによってはあまりにもカジュアルすぎて白ける。

 ・中盤がダレている。副本自体は面白いが、その間のメインエピソード(二人の関係変化)の動きがなさすぎる。中盤のボリュームを半分くらいに縮めるか、早くから関係性を徐々に変化させるべきだった。

 ・攻めの魅力についての説明が薄いため、恋愛関係に発展する説得力が低い。どちらかというと脇役の方がまだしも謎めいていて読者へのアピール力があるような



 けなそうとしてるわけじゃなくて、せっかく長いストーリーを読ませるだけの筆力があるのに色々もったいないなあと思っちゃうんですよね。
 思うんですが、メインテーマ(言いたいこと)はいくらでも作者の自由に決めていいけれど、それを読者に届けるためには読者のペースに合わせないといけないのではないかと。
つまり、テーマは作者本位に決めていいけれど、語り口は読者本位にしないといけないと思います。
そうしないと言いたいことが伝わらないよと。本作の場合、それが顕著でした。
 小説って言いたいことを表現するためにエピソードを積み重ねていく必要があって、それに過不足があると説得力が薄くなりますね。まるで論文みたいだなと思います。

 しかし、テーマ性はいいけれど個々のエピソード語りが稚拙な作家(日本の作家に多い)と個々のエピソード語りはうまいけれどテーマ性が薄い作家(私が読んだ範囲では中国の作家に多い)がいますね。
両立してくれい……


評価:B