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河童の皿箱
2025-04-02 09:50:34
29652文字
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遊戯王:長め
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デュエルってなんなんだ?
仮想デュエル。と、それをするまでの話。
オリキャラが主役。特殊設定多数。
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核唯はこれまでにないくらい、眉間に深い深い皺を寄せては、あまりの不快感に吐き気すら覚えていた。ターンが渡されて以降、講師は調子に乗りに乗り、メインフェイズ、4枚のカードをプレイした。
1枚目は、魔法カード《ハンマーシュート》。これにより、朋克の場の《サイコ・ウォールド》は破壊され、あのカタツムリの殻は見るも無惨な有様に。次に、手札から《王虎ワンフー》を通常召喚。これ以降、攻撃力1400以下のモンスターがフィールドに出れば、あの二本足の虎に狩られて破壊されてしまう。最後に装備魔法《デーモンの斧》を《王虎ワンフー》に装備。虎の攻撃力は2700。並大抵のモンスターでは倒せず、けれど小粒ではどうしようもない。
「
…
そしてそしてぇ! これこそこのデッキの真骨頂ぅッ! リバースカード、オープン!《ポール・ポジション》!」
伏せられていた最後の1枚が、とうとうお目見えとなった。独走する虎の周りに、小さな砂埃が舞い上がり、その手の悪魔の斧が酷く刃こぼれ、攻撃力が1700に戻った。「
…
最低だ」。ぼそり溢れた核唯の声を、アニマは拾い上げた。「さ、最低って? オレにはわざわざ攻撃力を下げた様にしか、見えないんだけど
…
」。トバルが答える。「あのカードはなァ! 救いようのねぇクソ欠陥を抱えてる、めんどくせぇカードなんだよ!」、と怒りを露わにし、手元の壁をドンと殴りつけた。
《ポール・ポジション》。フィールド上に存在するモンスターのうち、最も攻撃力の高いモンスターは、魔法の効果を受けなくなる。だからこそ、今の《ワンフー》の《斧》は効力を失っているが、ここにモンスターを召喚すると
……
かくかくしかじか。あのカードらに纏わる裁定と、つまり何が起きているのかを、2人はアニマに、詳らかに教えては、アニマは把握した。
「
…
じゃあ、攻撃力1400以下のモンスターは《ワンフー》の効果で破壊されて、1800以上のモンスターを出すと、《斧》の攻撃力上昇と《ポール・ポジション》の魔法の影響の無効化で無限ループが起きて
……
であってる?」、核唯は頷いた。「ああ、合ってる。そして、無限ループの原因になるカードのプレイはできない。カードには書かれていないルールによって、朋克はもう攻撃力1800以上のモンスターは出せないし、1600以下のモンスターは《ワンフー》に破壊される」。
「なによそれ!」。声を上げたのは、3人の前で試験を見ていた、受付の黒髪の生徒会員。憤慨して、こちらを振り向いていた。どうやら、今の話を聞いていた様だ。「だいたい、先生のデッキおかしいよ。なんであんな、戦う気のない
……
」。核唯はなお、顔を顰めた。「あのデッキはおそらく、裁定がややこしいカードを大量に詰め込んで、相手のルール違反によるジャッジキル
……
反則負けを誘発するために組まれたものだろう。現に、成績や進級を人質にして、自分が有利になる様に優先権を操っている。《はたき落とし》も《マインド・クラッシュ》も、そういう話に事欠かないしな。
…
あいつが馬鹿正直に、正しく処理したから問題なかったが、ひとつ間違えればその場で敗北になる。そんなデッキだ」、と。
「なんで
…
なんで、彼ばかりこんな目に遭わなきゃいけないの
……
」。今にも泣き出しそうな顔で、少女は嘆いた。「
……
あの、もしかして
…
トモの知り合い?」とアニマが問い掛ければ、「幼馴染なんです」、と。そんな話、初めて聞いた。けれど、あまりにひどい状況では、茶化す気も起きず。
呆然と立ち尽くし、ターンエンドの宣言以降、反応を示さない朋克の項垂れた背中。対して、勝利を確信し、高笑いをする講師の姿。
「悲観するにはまだ早いよな? まだ諦めないでくれよ、トモ。みんなで進級しようぜ
…
!」。アニマは手を合わせて祈る。そして少女もまた、手をぎゅっと結んで願った。
「さぁ、この盤面が出来上がってしまっては、もうあなたには何もできませんよぉ!? バトルフェイズ! 《王虎ワンフー》でダイレクトアタックゥ!」
斧を大きく振り上げた虎が迫る。その切先が届く、その直前。
「おれは、まだ優先権を放棄しちゃあいない。メインフェイズ開始時まで巻き戻す!」
その宣言と共に、斧も、虎も、通常ではあり得ぬ動きで時が戻っていく。講師が面食らっている間に、フィールド上にはカタツムリが1体だけ立つ、あの頃に戻っていた。
「んなっ
…
なんて卑怯な!」
「静かにしていろッ! リバースカード、オープン! 速攻魔法《緊急テレポート》!」
空間にグワリと歪みが広がり、そして人ほどの大きさとなった。その奥からは、霧が、黒い霧がもくもくと立ち上り、あっという間に場を支配していく。
「おれはレベル1から3までのサイキック族を1体、デッキから特殊召喚する。おれの声が聞こえてるんだろッ! 応えてくれ、《Ga-P.U.N.K.ワゴン》ッ!」
からん、と。雅な音色が大渦をうねらせ、霧をもたらす穴から飛び出したのは、なんとも華美な衣装に身を包んだ男であった。鳥の様な被り物からは、体を覆い隠すほどの頭髪の様なものがふわりと垂れ下がる。その背中には青く光る羽が幽玄に揺らめいては、多数の古の楽器を引き連れ、朋克の前にざっと腰を落とした。
「なんだ、あの派手なカード?」、「きれい
…
」、「でも壁にしかなんねぇよ?」。生徒たちのざわめきも意に介さず、男はたおやかに微笑み、琴をまるでギターの様に抱えては、しんと静かに待っていた。
「
……
いや、いい判断だ」。核唯が笑めば、トバルもまた笑う。「あぁ。《ワゴン》の攻撃力は900。巻き戻しを使わなければ、《ワンフー》の効果に破壊されていたな」。けれど、少女は不安げであった。「結局、破壊されちゃうんじゃ
…
」、と。それをよそに、アニマは目を輝かせた。「いや、あいつには隠された効果があるんだぜ」。
「ハッ。そんな壁モンスター! 《ワンフー》の前には無力! 無力ゥ!」
狂乱する講師は、先ほどの展開を再度行う。《ハンマーシュート》で《サイコ・ウォールド》を破壊し、《王虎ワンフー》を召喚、《デーモンの斧》を装備、《ポール・ポジション》を発動。そして。
「バトルフェイズ! 海霧クンの未来ごと! 粉砕しつくせ、《ワンフー》!」
虎が男に狙いを定めた途端に、男は腕の中の琴を爪弾く。旋律と共に黒い霧の光が、鮮烈に波立つ。決して雅なだけではない激しい旋律が、音の波が、まるで目に見えるかの様。音がカィンと奏でられるたびに波が跳ね上がり、場を包み込む。「
……
これ、って
…
青海波
…
? それに、あの楽器
…
」。少女は息を呑む間にも、その生み出された世界の虜となり、躍る光を眺めていた。
「攻撃の対象に選ばれた時、《ワゴン》の効果を発動。おれはデッキから、カードを1枚ドローする」
《ワゴン》はグッと身を逸らし、虎の攻撃をいなしながら、まるで踊るかのように地を、中空を駆け回る。くるりくるりと翻る衣装、尾を引くような長い布がとうとう捉えられれば、《ワゴン》は笑ったまま、破壊されていった。そして朋克もまた、引き寄せた可能性に笑みを溢した。
「
……
ちぃっ。ターンエンド!」
「させない! エンドフェイズ開始時、リバースカードオープン! 《コズミック・サイクロン》! 1000ライフを支払って、《ポール・ポジション》を除外する!」
「なんだと!? なんで今更
…
っ、こんなカードが!?」
臆病風に吹かれ、ずっと伏せたままだったそれは、ごうごうと竜巻を巻き起こす。黒い霧と星々の煌めきを纏う竜巻が砂埃を巻き上げれば、その激しい砂埃に巻き込まれた虎は、砕け散った。「《ポール・ポジション》は場を離れると、その場の最も攻撃力が高いモンスターを道連れにする
……
。いいぞ、トモ。完全にペースを握った」。これで講師の手札は0枚、フィールドもガラ空き。核唯は好転した状況に、胸が躍る。
「くっ
…
ターンエンドだ! ですが! わたくしのライフは7900! あなたは碌に! 削っていないのですよッ!」
「おれの、ターン! ドロー!」
デュエルディスクに置かれた指が、デッキトップから1枚のカードを引き、手札は合計で3枚。そして、高らかに宣言する。
「おれは、魔法カード《ワンタイム・パスコード》を発動! おれのフィールドに、攻守2000の《セキュリティトークン》を1体、特殊召喚する! そして、《セキュリティトークン》をリリースし、手札から《マックス・テレポーター》をアドバンス召喚!」
ひらりと現れた板状の小さな鍵が光を放ち、新たなる超能力者を呼び出した。逆立つ紫の髪と、はためく白いコート、顔を隠したゴーグル。両腕に宿る緑色の光が、また中空へと放たれた。
「《マックス・テレポーター》の効果発動! おれのライフを2000ポイント使って、サイキック族レベル3の、イカれたメンバーをふたり呼びよせる! さぁ、出番だぜ! 《Uk-P.U.N.K.娑楽斎》を2体、特殊召喚!」
白衣の男がギリギリと開いたゲート。黒い霧がまた吹き出し、飛び出てきたのは鍛え上げられた肉体に朱を引く、大きな筆を持つ男。青い髪に色とりどりのメッシュを逆立たせては、ふたりが顔を見合わせて笑い、立っていた。
「ライフポイント、残り2200
…
!? しょ、正気の沙汰じゃあ
…
!?」
「0じゃなければ負けじゃない! おれは、《ワゴン》が託してくれた未来への希望
…
永続魔法、《フューチャー・グロウ》を発動する!」
場を覆う黒い霧の波、その表面を躍る光が再構築され、《娑楽斎》たちもまた、その筆を振り回して光の軌跡を描いては、世界は賑やかに彩られ、そして観衆たちは、その鮮やかな世界に、見惚れていた。
「このカードは、墓地に存在するサイキック族1体を除外し、そのレベル×200ポイントの攻撃力を、おれの場のサイキック族全員に分け与える。おれが除外するのは、お前がおれから奪った未来
…
レベル6の《アーマード・サイキッカー》だ!」
「さ、3体に1200の攻撃力上昇だと!?」
《マックス・テレポーター》攻撃力2100→3300
《Uk-P.U.N.K.娑楽斎》攻撃力1200×2→2400×2
「さあ、バトルフェイズ! 3体のモンスターでダイレクトアタック!」
色が躍る。音に躍る。暗き霧の幻に遊ぶ。呼び寄せたものも、呼ばれたものも、まるで楽しむかのように。ネオンの水は魚が跳ねるかのように活き活きと押し寄せ、講師はその強烈な色彩に情けない悲鳴を上げ、色の海へとおぼれていった。
[試験官、ソジラ・エティクェッテのライフポイントが0になりました。受験生、海霧朋克の勝利です]
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