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ぷの
2025-03-27 08:50:41
7584文字
Public
レイチュリ ※ベ限
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子供化&猫化ありがとう小話
祝・子供と猫のグッズ化! 激かわで最高ですね🫶
P1 - 子供化した🛁を愛でる🦚の話
P2 - 子供化した🦚も愛でる🛁の話
P3 - 蛇足
1
2
3
【A】
先日レイシオ(の架空の子供時代の写真)が出演したCMは、そこそこ評判が良かったらしい。
「また君にあやかって名前を付けられる子が増えるだろうね」
「さほど珍しい名前ではない」
「君の故郷ではそうかもしれないけど、まるで言語体系が違う星でもベリタスくんに出会ったことがあるよ。エキゾチックな名前だと褒められてた」
君はその子を名前で呼んだのか。喉までせり上がった問いをレイシオは飲み込んだ。珍しくないと言ったのは今さっきだ。レイシオではないベリタスを名前で呼ぶことだって、あってもおかしくはない。
「ふん、名前で決まる人生などない」
「君ほど説得力に欠ける例はないんじゃないかな」
くふくふと笑いながら、アベンチュリンはいつぞや見たのと同じ型のタブレットを操作して、プロジェクターで壁に画面を投影した。先日と同じようにソファに並んで座ってそれを見ている。今日は二人きりだが。
「味を占めたらしくて、今度は僕の子供姿を作ってCMに使うんだってさ。これ、どう思う?」
もう素材の確認は済んだのか、アプリ上の着せ替え人形ではなく、ざっくりレイアウトまで終わっている画像だ。高級な仕立ての服を着た年齢の違う子供のアベンチュリンが三人、大人びた顔でポーズを取っている。首の刻印はないが、それ以外は今のアベンチュリンをそのまま小さくした姿
……
いや、印象が変わらない程度に少し肉付きをよくしているように見える。画像に入っているロゴは有名なアパレルブランドのもの。子供服を作っているとは知らなかった。
「適材適所だな」
「子供服を扱うサブブランドを立ち上げるんだって。似合ってるって言っていいんだよ」
「ここまで完成しているなら、僕の意見は必要ないと思うが」
「それがね、君に見てもらえってジェイドとトパーズが言うんだよ。僕も、二人がチェックしてくれたから問題ないと思うんだけどね」
静止画かと思ったら、一人ずつフォーカスされて、枠内のシチュエーションに合わせて動いていく。小さな手で靴を履き、できたと誇らしげに報告する笑顔。開きかけのドアの隙間から外に駆け出して振り返る姿。よろけて転んで座り込んだところに現れた、くすんだ金色の小さな猫。もふもふの生き物に慰められて立ち上がった彼は、お尻を叩いて埃を払うと背を正し、気取った足取りで歩きだした。その足に猫がちょろちょろとまとわりつく。
「また猫か
……
」
「君のときと同じ担当者とデザイナーなんだ。君をモチーフにした猫の方がブランドイメージに合うのにって悔しがってたよ。ギャラが払えないから断念してたけど。突然教授が出てきたらおかしいしね」
次の小さなアベンチュリンは、一人目よりやや成長している。乗馬、ゴルフ、グランピングと、屋外の遊びに興じる。そして、昼寝。寝顔が見てきたように本物に近く、またレイシオの喉に問いがせり上がってきたが飲み込んだ。ジェイドがチェックしたと言っていた。彼女なら本物の寝顔を幾度となく目にしてきたことだろう。病院でも、私室でも。さきほどの猫はここで顔面に乗せるべきでは。そう思ったが、口には出さなかった。おかしなことを言っていると笑われるに決まっている。
目覚めた彼は起き上がって伸びをすると、腹にかかっていたブランケットを脇に避け、柔らかく滑らかな生地のパーカーのジッパーを下ろした。ぱかりと割れた隙間から光輝くような素肌が覗く。
「待て、止めろ」
「ん?」
アベンチュリンはタブレットを操作して、動画を止めた。目に毒な絵で静止した場面がレイシオを苛む。視線と心を逸らしつつ尋ねた。
「脱ぐのか?」
「脱ぐよ。次に見せるのは水着だからね」
「必要があるのか?」
「商品をチラ見せというわけにはいかないだろ。脱がないでパーカーの裾を持ち上げる案もあったけど、トパーズが却下してこうなった。隠すと余計によくない、堂々としてる方がまだマシって」
トパーズの言う通りだろう。たくしあげたパーカーの裾から白い腹が覗く絵など、想像しただけで頭が痛い。
「この動画はどこで流す予定なんだ?」
「今のところ、店舗のディスプレイ、電子の雑誌、映画館、ジョイントベンチャーの大型商業施設だったかな? それに、テレビも」
不特定多数の目に入るのか、これが、大画面で。
「君はなんとも思わないのか?」
「べつに。作り物だし、僕に拒否権はないしね。前に雑誌の撮影で生のお腹を出したこともある」
おおいに気にしてほしいところだというのに、当のアベンチュリンはケロッとしている。あの雑誌の写真はとてもけしからん仕上がりだった。もしレイシオが事前に知っていたら、間違いなく差し止めようと動いていた。
「
……
わかった。では、担当者と話がしたい」
そう、今回はまだ間に合う。前もって知らせてくれたジェイドとトパーズには必ず礼をしなければならない。このようにありがたい気遣いを受けられたのは、二人の交際を知らせておいたおかげだろう。
「手を入れたいの? 予算が足りないから、監修料は僕のポケットマネーになっちゃうけど」
「そちらの交渉も自分でする。連絡先を教えてくれ」
「ふーん? そういうことなら、どうぞ。なんでも注文をつけてくれていいよ」
アベンチュリンはレイシオにタブレットを差し出した。タブレットから発注元とカンパニー側の双方の担当者と連絡が取れるようになっているそうだ。続いて、器用な手でスタイラスペンをくるくると踊らせてから差し出した。が、受け取ろうとしたレイシオの手をすいとかわした。
機嫌良さそうにネオンカラーの瞳を細めたアベンチュリンは、ぐっとレイシオの方に身を寄せた。その瞳を輝かせるも曇らせるも思いのままだと錯覚させる、厄介な近すぎる距離に。
「教授の目に、子供の僕はどう見えてるのかな。どんな幼少期を過ごしてきたと思う?」
レイシオはペンごとアベンチュリンの手を握り、額に口づけた。なんの意図もない。ただ、そうしたくなったのだ。レイシオがこれからする交渉に興味を引かれてワクワクしている様子に、小さな彼の姿が透けて見えたような気がした。
「さぞかし生意気で憎々しく、可愛かっただろうな」
きっと子供の頃の彼は、自分が愛されているとよく知っていた。その後の経験によって心は乾いた砂漠のように干上がってしまったが、健やかな精神は乾いて砕けただけで消えたわけではなく、一面の砂粒の中で雲母のように光を待っている。彼を温かく照らす者にだけ、きらきらと輝く美しい反射で応えるだろう。その光景をずっと見ていたくて、レイシオは彼を際限なく甘やかしたくなる。
彼の上司と同僚は一定の距離から先に踏み込まないようにしているようだが、レイシオにその線引きは必要ない。彼の全てを引き受ける用意はすでにある。過去も、現在も、未来も、彼が何者になろうとも。
う、とも、あ、ともつかない声をこぼして、アベンチュリンはまごついた。
「
……
一般的に、子供は従順なお利口さんの方が可愛いんじゃないのかな」
「僕はもう、爪と牙を抜かれた子供では物足りない」
悪戯好きで、反骨心があり、享楽的な危うさを持ち、自分は後回しで人にずいぶんと甘い。レイシオの琴線に触れる魅力が詰まった彼を知ってしまった。
「君だから、可愛いんだ」
ううう、と唸って両手で顔を覆い膝に伏せたアベンチュリンの頭を軽く撫でた。ほら、可愛いだろう、人に見せるものではない。
自分の端末を取り出して、SNSに写真を一枚アップした。先日盛装をしたときにアベンチュリンにせがまれて送った自撮りだ。記者の入れないパーティーだったから、参加者以外の目に触れるのは初である。数分後には、特定班などという不思議なことに情熱を燃やす人間がレイシオの装いのブランドを正確に当てて、一覧をリプライでぶら下げた。ネクタイはかのブランドのものだ。
三人目の小さなアベンチュリンの動画をチェックしながら待つことしばらく、レイシオの商業活動のマネジメントをしているスタッフを通して、かのブランドから連絡が入った。決裁権のない末端の社員と連絡を取るのは時間の無駄だ。交渉は向こうから、なるべく上の人間と始めるのが望ましい。タブレットの中、要望を細かく書き出したCM案に重なって、チャットの窓口が開いた。丁寧な挨拶に、発注元の担当者変更の連絡と、急な召集に対する詫びが続く。カンパニー側の担当者が遅れてやってきて挨拶を交わしている。そこにレイシオも加わった。
交渉の準備をするレイシオの隣で、アベンチュリンの携帯端末が立て続けに通知で震えた。
「なんだよ、うるさいな
……
ちょっとレイシオ、これなんだい!?」
メッセージを見て、アベンチュリンはパッと体を起こした。こちらに向けた端末の画面には、さきほどの投稿が表示されている。
「釣り餌だ」
「僕だけの写真が
……
!」
「それはすまない。後で埋め合わせをしよう」
不満そうに頬を膨らませたのはわずかな間で、すぐに仕方ないな、という顔になった。切り替えの早いところは、アベンチュリンの数ある美点の一つだ。
「あーあ、トパーズが爆笑してるよ。拡散しようか?」
「獲物は釣れたから不要だ。これからオンライン会議をする、静かにしていろ」
アベンチュリンは大人しく口を閉じて、カメラに写らないようにレイシオの向かいの席に移動した。こちらを眺めてニヤニヤ笑っているのは、レイシオに手解きをした商人の彼か、レイシオの恋人の彼か。
端末のカメラレンズをこちらに向けて目線を寄越せと手振りで合図するので、タブレットのカメラを一時オフにして、恋人だけに見せる笑顔を返した。アベンチュリンはむず痒そうな顔をして、釣られたように笑った。最初の埋め合わせはお気に召したようだった。
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