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草枕
2025-03-22 09:31:51
3488文字
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PBD
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PBD・レヨン/ケレウス会話ログ小説
『空箱』を乗員たちが送ったあと。
レヨンさん(@So_KZ_kyozyu )とケレウスがバーで飲んでる話
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『空箱』の話題が出たのは、レヨンが布に施したという紋様について聞いたからだったか。乗員たちが祈りを込めた新たな門出の詳細を聞き、ケレウスは、自分なら何をしたろうかと考えていた。何もしなかったくせに。
「アンタ家族って居るの?居なかったら悪いんだけどさ。
アタシは健在!母さんと親父と弟がひとり居るんだぜ」
「お姉さんなんだ。あはは、ちょっと分かるかも」
初めての話題だった。冠婚葬祭の話題とあっては、親族が話に出るのも不思議ではない。それでも、何か感慨のようなものが去来した。
アビソリアを出る前、"数ある同窓生の一人"であったのが、"故郷から追放された列車に乗り合わせた、ただの一人"になったからだろうか。あの街には、わざわざ家族構成を語らずとも、承知している別の同窓生が居ただろうに。家族の話をする為に、家族の事を説明する必要が生まれるのだ、この列車では。
イテラスキッドの治安は整っている。社会的秩序がある、とケレウスは感じている。責務を果たそうと努める者がいる。子供を庇護する大人であろうとする者がいる。他人の領分に踏み入ることを避ける者がいる。それぞれ形は違えど、己の信じる正しさに従っている。誰かのその日の気分で暴力沙汰が起こる賭場の不健全なこと!
そうなってしまったら、もう。ケレウスは列車内の安寧と秩序を尊ぶしかないのだ。意地や体裁と言った話ではない。厄介払いを回避する為には、その場所に染まらなくてはならないという話だ。
ただ『居づらい』という理由でアビソリアから出て来るような三十路過ぎの、酒につられた戯言を聞かせる相手は、選ばなくてはならない。家族だとか、来歴だとか、子どもの耳に入れるべきでないあれやそれを。
「そうそう。弟とは歳も離れてたもんだから、気づいたら年下の相手ばっかしてたんだよなあアタシ────」
そう言って笑うレヨンは、あまりにも大らかな姉然としている。ケレウスは、兄でも弟でもない。
ないけれど。きっといつか、頼ってしまう。この眩い人に。
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