【カミ東】わるいかみさま

いい子ではなくなったカミキリ様の話(※付き合っていません)とカミキリ様の片思いが成就して付き合っている二人の話詰め合わせセット。

わるいかみさま




羞恥が渦巻き上手く制御できない心身に勇気を焚べ直向きな感情を言葉に綴っても、幼い容姿で歯痒い想いをする回数が増える度カミキリの心が冷たく軋んだ。



東雲にしてみれば何てことない雑に頭を撫でてるだけだとしても、カミキリは何度も味わいたくて彼女が喜ぶことを率先してやった。単純明快、大人は子供がしたことを褒めるとき頭を撫でてくれる。
「(撫でてクレる嬉しイ)」
当初純粋に東雲が自分を褒めてくれること、不本意ながら子供扱いするのを逆手にとってやっていた。
スラっと伸びた長い指と大きな手のひら。カミキリを含め家を帰る場所を与えてくれた優しい手が白い癖っ毛をわしゃわしゃ撫でる手付きが齎す喜びに浸り、撫でてくれる回数が増えれば増えるほど虚しさが心を侵していった。
何処までいっても子供扱い。自分を異性として見てくれない悔しさと悲しさ、寂しさがカミキリの顔を曇らせ。

「イイ子じゃない僕はキライ?」
快活な笑顔で頭を撫でていた東雲を一時の衝動で押し倒すまでに至ってしまった。
普段から常套句よろしく「いい子」を多用して褒める意趣返しで問い掛けるカミキリの言葉は小刻みに震え、彼女の細い腰を跨ぎ挟んでいる内太腿に力が微かに入る。
急に押し倒されたことに驚くも右肘に重心を掛け体を起こした東雲が普段と何ら変わらず指通りのなめらかな彼の髪を手櫛で梳き語り掛ける。
「いい子じゃなくてもいいんじゃない? たまには悪い子になってもバチあたんねーって。つか、カミキリさん神様だしバチも何も無いか」
淡い慕情を抱く前であれば笑い返せた東雲の裏表のない朗らかな笑みが、今のカミキリにとっては小さな苛立ちの芽になって心に根を下ろす。
どうにか余裕たっぷりな牙城を崩すべく次に取った行動はカミキリ自身飛ばし過ぎている自覚があった。
愛らしい八重歯が覗く唇に狙いを定め固く結んだ自分の唇を押し付けた。
時間にしてものの数秒。唇から伝わる感触云々が吹き飛ぶほど心が忙しなくなっているカミキリは、ゆるゆるとぼやけていた焦点が再び合うくらいまで離れた途端、頭の天辺から蒸気が立ちのぼり空色の瞳がぐるぐる回り始めた。
想いを寄せている相手に接吻をした興奮。これで異性として意識してくれるかもしれない根拠のない自信と期待が体中を駆け巡る。
カミキリの色白肌が余すところなく朱に染まって玉の汗が噴き出しているのとは対照的に、東雲の体は時が止まったように何も変わらない変わっていない変わる気配が、ない。
辛うじて息はしているようだが、瞬きひとつしない彼女にカミキリに不安が募る以上に「もう一度接吻して唇の感触を確かめたい」欲が体を支配した結果、意識を集中するため目を瞑り薄ら開いている唇に己が唇を重ねた。
先程まではっきり感じなかった唇のやわい熱を味わう。放心状態だった東雲の意識が戻るまでの間、夢中になって堪能していたカミキリがやおら彼女の耳を掌で包み込む。
掌に感じる二人分の熱。ぼやけた視界端で捉えた今まで見たことのない困惑だけではない上気した東雲の面持ちにほくそ笑む。
「悪イ神様だから隠すネ」
僅かに口を離して呟いたカミキリは、東雲の返事を待たずして彼女を抱きしめ神域に隠したのだった。