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シノハラ
2025-03-11 21:02:14
5404文字
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カヴェアル♀
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カヴェアル♀まとめ(2本)
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同居を始める時に先輩を罠にはめつつもちゃんと緊張はしている後輩の話
2023年8月14日
最終的には売り言葉に買い言葉だった。カーヴェをアルハイゼンの家に住まわせても構わないと告げた彼女に、カーヴェは男女の身体能力の差をとうとうと説いた。たとえ彼女が一般的な女性よりも背丈があって、体を鍛えていたとしてもそれはその気になった男を退けると確約するものではない。
聡明な君が分からないはずがあるまいと酒が抜けきらない頭で断ると、アルハイゼンはカーヴェが手を出さなければ良いだけの話だと切って捨てる。そこから酷く幼稚な言い合いをして、こんな女をどうして抱きたいと思うだろうか、と言わされしまったのが運の尽きと言ってしまってもいい。
「君は私に手を出すべきではないと思っているようだが、君が良いと思うなら出してもらって構わないよ」
「は?」
自宅の扉を閉めて鍵を掛けながら家主が脈絡もない事を言い出すので、カーヴェは掠れた間抜けな声を上げてしまう。散々今まで性行為をしてしまいかねないという懸念の話をしていたはずだったのに、突然前提が覆されてしまった。
ルール違反だと主張したくなったが、よくよく考えれば彼女はカーヴェと性行為をすることそのものの是非については一言も言及していなかったように思う。そんなところで話の一貫性を持たせようとするな。
鍵を玄関の脇の棚の上に置いて、アルハイゼンがカーヴェに視線を寄せる。一歩近寄られて思わず足を引けば、軽い衝撃と共に背が壁にぶつかった。肺が刺激されたのか空咳が出て、今更ながらに不摂生による体の不調を自覚する。
「君が好きだ。いつからは分からないが、気がついたのは君と会わなくなってから。さすがに最近は思い出すこともなくなっていたが、君に会って話を聞いているうちに、自分の中から消えていないのに気がついた。強引な手法だとは分かっていたが、君を逃したくなくて家に連れ込んでいる。単純に好いた相手にまっとうな寝床を用意してやりたいという気持ちももちろんあるが。他に訊いておきたいことは?」
さらりとした肌触りの告白の後、アルハイゼンはカーヴェの思考に浮かんだ疑問を先回りして一つ一つ潰していく。ほんの少し早口のそれは、彼女が興奮していることを示す昔からの癖だった。だから、多分彼女に嘘はない。
そう思うと足の力が抜けて、背中が壁を擦った。そのままどうでも良くなってずるずると座り込むと、頭に触れられる感触がする。じわりと目頭に涙が滲む理由は良く分からない。まだ、彼女の言葉の半分も意味が理解できている気がしなかった。
「君の育ての親の顔が見たい」
「おばあさまに文句でも?」
「いいや、お孫さんの素行を告げ口する」
多分僕の味方をしてくれるんじゃないかと掠れた声で笑えば、それは困ると本当に困っているのか定かではない言葉が近くで響く。彼女の声の近さに驚いて顔を上げれば、カーヴェに合わせて膝を折ったらしいアルハイゼンの顔がすぐそばにあった。他者では持ちえない虹彩の内にある瞳孔が縮まって、アルハイゼンの感情の揺らぎが見て取れた。
彼女の言葉に、声に、心。そのすべてをカーヴェは理解できていないが、嘘がない事だけは痛いほど分かる。そう思うと、自身の肩に触れようとする彼女の指先を拒むつもりにはどうしてもなれなかった。
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