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アスナショウコ
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『鳴瑯館殺人事件』冒頭 約5000字試し読み
ミステリは、気合い。これが私のアナザースカイ
なんとか早めに入稿したいので気合いで書いています。応援してください。感想乞食野郎って言わないで。
頑張れでも 続きどこやボケ!でもええんで、よろしくお願いします~~~ Wavebox -
https://wavebox.me/wave/b064pup7uhwd9l39/
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随分遅かったな、と大澄が僕を出迎えた。ビリヤード台に置かれていた書類は不要・必要・後回しの三種類に分別され、丁寧に付箋が貼られて分けられている。相変わらず几帳面なひとだな、と思いながら僕は猫探しの顛末を報告した。
「
……
と、言った具合でこの、『鳴瑯館ツアー』の旅行券を頂きました」
「良かったじゃないか。確かお前が好きな作家の
……
映画かなんかのロケ地だろ?」
「ええ。まさか『バスカヴィル館の魔犬』のロケ地へ行く機会が貰えるなんて。今なら何匹でも猫を探せそうです」
「ハハ。ならこれ全部やるか?」 彼が差し出したのは『後回し』付箋が貼られた依頼書だった。
「言葉の綾ですよ。自分がやりたくないからって僕に迷いペット探しを丸投げしようとしないでください」
「冗談だ。しかし
――
うん
……
鳴瑯館、か」
彼は懐から煙草とライターを取り出して火を点ける。暖色系の明かりに紫煙がほどけ、僕との間で揺れている。彼の『鳴瑯館』という言葉には苦々しい味が織り込まれている気がした。僕は何となく
――
ただの当てずっぽうでしかないが、彼が警察を辞めた理由がそこにあるような気がしていた。
「十五年ぐらい前の事だ。鳴瑯館はとある未解決事件の舞台になった」
「未解決事件、ですか?」
「ああ。俺はその捜査に参加していたが、あの事件ほど訳が分からなかった事件はない」
大澄は唇へ煙草をあてがう。僕はチラシに載せられた鳴瑯館の写真へ視線を向けた。
鳴瑯館は所謂ヴィクトリア様式の洋館である。だが建てられたのは割と最近
――
ここ四十年ほどの間の話だった。
「所謂『密室殺人』ってやつだ」
「密室
……
殺人
……
、いや、不可能犯罪では? 犯人は今も捕まっていないんですか?」
「ああ。捕まっていない」 大澄は口惜し気に言った。「密室殺人なんて、バカげてる。絶対にからくりがあると信じて調べ続けたが、俺はその密室を崩せなかった
……
その結果が、これだ」
指先がコツコツとビリヤード台を叩いた。僕はその動作を見て頼まれたインスタントコーヒーを買い忘れて戻って来たことを思い出す。近くにあるセブン・イレブンへ行けば、セブンブランドの比較的安いものが買えるはずだ
――
。
「あ
……
、すみません。コーヒー買い忘れました。買ってきます」
「いや、いい。どうせ忘れているだろうと思って、お前が山田さんの所に行っている間に買ってきた」
「すみません
……
ありがとうございます」
「気にするな。それと、」 彼の視線は旅行券へ向けられている。「鳴瑯館は事件以降改装されたらしい。あの当時と結構内装やら変わっている」
「もしかして、大澄さん。鳴瑯館が気になっていますか?」
「気にならないと言えばそれは嘘だ」 彼は分かりやすく口をへの字に曲げ、短くなった煙草を灰皿へ押し付ける。「だけど過去の事件を追うことはもう難しい。十五年も前だぞ? そして内装や建物の形すら変わっている
……
たとえここに泊まれたところで、俺ができることはもう何もない」
「でも、もしかしたら行くことで一つの区切りにはなるかもしれません」
「そうか?
……
ただ疑念を深めて、俺の中に『鳴瑯館殺人事件』が抜けない根っこを張り巡らせるだけかもしれない」
「そこまで言われると僕も気になってきますよ」
僕は珍しく過去の事を語っている大澄に苦笑した。普段から「終わったことは語らない主義だ」と言っている彼に、そこまで言わせる密室殺人事件とはこれ如何に? 二階に資料が置いてあったはず、と頭の隅で思い起こしながら、何か言いたそうな彼の表情を見る。無精ひげの顎を触りながら彼は口を開いた。
「火の気のない所での焼死。それが十五年前、鳴瑯館で起きた密室殺人事件の概要だ」
「人体自然発火現象
……
?」
「当時の捜査一課もそれを疑って、螺旋捜査官を呼びつけたんだがな
……
残念ながら否定された」
「でも普通に考えて
――
火の気のない所で人間を焼死させるなんて不可能でしょう」
「ああ。不可能だ。勿論条件が揃えばできないことも無いだろうが、即席でそんな条件を整えることは難しい。加えて当時犯行現場は完全な密室であり、窓は嵌め殺し、ドアは施錠された状態で、被害者は椅子に縛られた状態で発見されている」
「
……
正しく不可能犯罪というわけですか。薬品や自然発火性物質なども、」
「科捜研が隅々まで分析したが、発見できなかった」
「八方塞がりですね」
笑えるだろ、と自嘲気味に大澄が言う。僕は笑う気になどなれず、首を横に振るだけにとどめた。少なくとも当時の捜査一課が無能集団で犯人を取り逃がした、何てはずもない。この一件は正しく不可能犯罪であり、誰もが頭を抱え、一方で犯人はその様子にひとりほくそ笑んでいたのだろう。
僕はそんなことを考えながら、どうやって〝火の気のない所で人間を焼死させる〟のか
――
という無理難題を解き明かす方法を思う。
如何にして殺したのか? 誰が被害者を殺したのか? その全ては立ち込める煙の奥へと隠され、誰の指先からも逃げおおせている。今の鳴瑯館にもまだ事件の気配は残されているのだろうか? それともフィクションによって覆い隠され、誰の目にも触れないように塗り潰されているのだろうか。きっと後者であろう。だが、ここで悩み続けるよりかは行動を起こす方がよっぽど意味がある。
「大澄さん。あの
……
大澄さんさえよければ、鳴瑯館へ行きましょう」
「何だ、言う前に言われちまったな」 そう言って彼はシガレットケースから新しい煙草を取り出す。細い煙草の先端へ火が点けられ、再び紫煙が僕らの間にふわふわ漂う。
「一日一本までって言いましたよね」
「多めに見てくれ。ああそれと、準備は怠るなよ」
その言葉の意味を瞬時に理解する。出発の日付は来週の火曜日だ。それまでに研究の計画を立て直し、先生に四日間の休みを申請しよう。
行き先は
――
兵庫県。月輪島、鳴瑯館である。
---
――
続きは同人誌版で!
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