sousakuyamamusume
2025-02-26 11:02:40
3170文字
Public 一次創作
 

赤と白(BL感ある)

全年齢ではあるのでご安心召されよ


相互理解

 こんなに部屋が広かったか?と首をかしげた。
 ヴァイスは今や帝国の騎士団長、私と同じ様に政治にも手を出す必要がある。故に会議等で帰りが遅くなるのも頷ける。だが、いくらなんでも遅すぎやしないか。もうとっくに夕餉の時間も過ぎているというのにまだ帰ってこない。
 書類にサインを書きながら、幾度目かのため息をついた。「ため息つくと幸せが逃げるぞ」という声が聞こえてこないことが、どうにも苦しいと感じた。

 どうして僕はあいつに嫌味を言われるとあんなに感情的に言い返してしまうのだろうか。会議中に言われた「ヴァイス殿はまだお若い。政治のことはお詳しくないようだ」という嫌味に「まぁ事実そうですし」と返しながらふと思った。その時は会議の議題に集中すべきと思い考えるのを中断したが、帰り道で何を考えていてもいいだろう。議事堂の階段を降りながら、誰にともなく言い訳じみたことを考え――
「随分と遅いお帰りだな。」――聞き慣れた声に思考が中断された。
「ロッソ、何故こんなところに。」
「出迎えてはいけない理由でも?」
「いや、そうじゃなくて。また風邪引くぞこんなところに突っ立ってたら。」
「随分と健気なことだ。」
「そういう問題か!?」
 ああもう!だから!そういうところだぞ僕!!!
「夜行馬車を手配してある。まさか歩いて帰る気ではなかったろう?」
「まぁ、それはありがたいけど……。」

……お前は」
「なんだ?」
「僕が皮肉につっかかっても怒らないよな。」
 静まりかえった馬車の中で、唐突にヴァイスが言う。向こうを向いているのと車内が暗いこともあり、表情をうかがい知ることはできない。
「むしろ私はその反応欲しさに皮肉を言っている節がある。」
「やな奴。」
「甘んじて受け止めよう。」
 しかし、些か唐突な発言だ。何かあったのか?それとも、今まで言おうとして言えず仕舞いだっただけか?と、頭の中にいくつかの疑問が浮かぶ。直接本人に聞けるほどの度胸もないくせに。
……詮索しないのな、お前。」
「聞かれたくないこともあるだろう。聞いて欲しければ訊ねるが。」
「いや、なんというか……僕はお前に甘えてるだけなんじゃないかという気がしてだな……。」
 甘えている、か。ふむ。
「ところでヴァイス、年齢は?」
「僕?17歳だけど。」
「私は21歳だ。年上に甘えることの何が悪い。」
……そうか。」

 顔こそ見えないが声でわかる。
 ロッソのやつ、絶対勝ち誇った顔してる。
「こんなに会話をしていたというのに互いの年齢すら知らなかったとはな。私も臆病が過ぎたか。」
「だったら僕からも1つ質問させろ。」
「どうぞ?」
「何故、お前が直々に迎えに来た?家に使用人とかいるんだし彼等に任せれば良かっただろう。」
 言った後で流石に意地悪な質問すぎたか?と思ったが、言ってしまった以上取り消すのもヘンだ。
「何故。何故、だろうな……?」
「は?」
「それは部屋が妙に広い気がしたことやお前の軽口が聞けなかったことが苦しいと感じたことと関係あるだろうか?」
 いや、いやいやいやいや。え?そこまで気付いててもしかして気付いてないのか?こいつ。というか、親御さんはどんな教育してきたんだ?いやまともな親御さんじゃなかったってのはこの前の一件で知ってるけどさ!!
「なぁ、ロッソ。寂しいって知ってるか?」
「本で読んだことならあるが……もしやこれがそうだったのか?」
 思わず頭を抱えた。本気で気付いてなかったらしい。
「まさかこの私に『寂しい』という感情が存在していたとは……つくづくお前は私の思わぬ側面を見いだすことに長けているな。」
「こんどからは寂しいときは寂しいって言えよ。」
「心得た。」
 こいつと出会ってすぐの頃に『何考えてるのかわかったもんじゃない』と思ってたけど、多分こいつ自身も自分が何考えてるのかわかってなかったんだな。わからないままつきまとわれてた僕の身にもなってほしいけど……
「眠いなら寝て良いぞ、部屋には運んでやる。」
「じゃあ」

 ヴァイスの寝顔を眺めつつ、思う。彼の前でだけは、私は『常勝の紅き騎士団長』の仮面を外せるのだろう。ならば、私は彼の『新しき純白の騎士団長』の仮面を外せる場となれているだろうか?
……悪くない。」
 この苦しさは、私だけのもの。