yahiroi80
2025-02-22 15:33:09
3033文字
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舞台に立てなかった男の、ささやかな意趣返し

アルハイゼンが恋心の自覚と同時に失恋する話。
勘違いとかではなく、本当に失恋します。苦手な方はご注意ください。
全文読了後の苦情はお控え下さいますよう、よろしくお願いします。

カーヴェと夢主の相手モブ男がちょこっと出てきます。
夢主は名前も見た目も一切描写がないので、お好きに想像ください。

誤字脱字、衍字などは報告不要です。申し訳ありませんが、脳内補完で読んで下さい。ほんとすみません。

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堅物な男が自分の心の測りを見誤って、大切にしたかったと気づいてから、それができなくなった時の心の機敏を見たかったんです。
アルハイゼンのことは大好きだけど、お前が辛い気持ちになったときのこと想像したくなっちゃったんだ……ごめんな……
もし、読み終わって幸せなアルハイゼンが見たくなったら、ぜひ創作お願いします。
そういうのも好きです。報告いらないので、お願いします。勝手に探し出すので、お願いします。



 それは、まだ男が教令院の学生だった頃。
複数の学派で組まれた研究チームでの集まりでも、彼はひとり浮いていた。
 進捗報告の為に集まると、度々議論に発展する。
もちろんアルハイゼンも研究に参加しており、報告も行うが討論になることは少ない。それは、彼の中で答えが出ていることが議題であり、会話のラリーが良くて3回程度しか行われないためである。
 人と人が仲良くなるには会話が必要であり、そこに内容はさほど関係なく、お互いが知れる程度の回数が必要である。
投げても返えさない彼とは最低限の付き合いしかなく、それ故に仲が深まっていくほかのメンバーに比べてアルハイゼンは浮いていた。
 研究が進むならばそんなことは些末で、気に止めるに値しないことだ。

「さっきの議論、聞いていたんだけど、あなたの答えについて気になることがあったの。少しいいかな。」

 そんな彼に女が話しかける。
 今回の研究チームはいくつかの班に別れており、彼女は別で動いているグループだった。
アルハイゼンがいるチームの討論に気になる点があったと、彼に話しかけて来たのだった。
断る理由もない為、了承して、彼女は対面に座る。

 話し始めた時はまだチームメンバーが居たはずだが、今はまばらで、残った者も研究の話と言うよりかは日々の雑談に花を咲かせている様だった。
一方アルハイゼンと彼女はまだ議論が続いているようで、知恵の殿堂に参考図書があるか確認しに行くところだ。

「こんなに有意義な議論、初めてだわ!」
「そうだな、いい時間を過ごせた。」
「ねぇ、知恵の殿堂ではあまり話せないし、もし貸出許可が降りたらカフェで続きの話をしない?
人の往来が少なくて静かな、おすすめの店があるの。」
「悪くない提案だ。
こちらからも是非お願いしたい。」
「ふふ、決まりね!」

 彼女の紹介したカフェは大通りから1つ外れており、言った通りの隠れ家のようなカフェだった。
来店した時は他に客がおらず、貸切状態で喧騒が遠く聞こえる程度。2杯目のコーヒーを飲み終わる頃、ようやく議論は終会となった。
 その最中、アルハイゼンと彼女は読み物の趣味も合っている事が分かり、今度はお互い所持している学者の論文について話し合うのを約束した。

 それからというものの、アルハイゼンもカフェをよく利用するようになり、静かな場所で落ち着きたい時は来店し、好みのコーヒーを注文する。
彼女にとってもこのカフェは、おすすめでありお気に入り。
待ち合わせをしていなくてもふたりは時々出会い、また議論をする。この前話した学者の新作論文の話であったり、新規開拓の本を薦めあったり。
 アルハイゼンはこの時間が好きだった。静かなカフェで美味いコーヒーを飲み、運が良ければ自分と同レベルの議論を交わせる、この時間が。
 とても大切で、得がたい友人。彼女が自分以外の友人を沢山持っていることを彼は知っている。あのアルハイゼンと仲良く出来るのだ。コミュニケーション能力は十全で、交友関係は多岐にわたる。
 そんな彼女は自分だけに秘密の場所を教えて共有した。
 彼にとって彼女は、“特別な友人”だった。

 教令院を卒業し、ふたり別の道を歩むことになる。
一方は教令官となってスメールに残り、また一方は学者に。主題が他国での研究が必要で、スメールから離れるという話だ。
 数ヶ月に一度、成果報告で帰国する際は必ずカフェで落ち合った。成果報告の日付は、教令官であるアルハイゼンには容易に知れることで、それを彼女は分かっていて話の合う友人に会いにカフェへ行く。
頻度は下がっても関係は変わらなかった。

 いつかの帰国の日、アルハイゼンは珍しく彼女に呼び出された。
「紹介したい人が居るの」
彼女の隣にはひとりの男がいて、結婚することになったのだと言う。
結婚式の日取りが決まり、アルハイゼンには直接招待をしたかった。と心の底から幸せそうに女が話している。
だが、そんな話は生まれて初めての衝撃に、脳が留めていられなかった。

 彼はその瞬間、生まれて初めての恋をしていたことを自覚し、それと同時に生まれて初めて失恋を経験した。
聞こえた単語を抜粋して、今言うに等しい言葉を紡ぐ。
「そうか、おめでとう。もちろん参加させてもらうよ。
親しい友人の晴れ舞台だ、祝いに行かせてもらうとしよう。」

 どれだけ心を乱していてもいつもと変わらない表情を繕って、言う。おめでとう、と。
その言葉に偽りはない。彼女は幸せであって欲しい。
 ただ、その隣に自分が居たらと思う。
気づくのが遅かった。
否、特別という優越感に浸って気がつけなかった。
特別以上を求めていた心に、気がつけなかった。