雑高短文まとめ

500字程度の短文をまとめてあります


現パロ 転生

 特別に名前を呼ばれることがあって、それが遠い昔、限られた時間の中だったのは覚えていた。私の手の上で光るダイヤモンドが実は骨からできていて、数ヶ月まえまで人間を形作っていた。生きていたころの血と心を通わせた人のぬくもりを持っているように感じる。装飾品にするのはどうも恐れ多く、あなたを身につけるという不思議な感覚に馴染めず「指輪などに加工することもできますが」という技師の言葉に散々迷って首を横に振った。
 この世で再会したとき、もっと声をお聞かせください、とねだろうとした。これからの世は、なにを気にすることもなく自由に生きられると浮かれたからだ。けれど私は一度呼ばれると感動してしまい、うろたえることしかできず、「ずいぶん涼しい顔が下手になったなぁ」と笑われたあなたの顔に火傷の痕が一つもなく、昼の日差しや、夜の乾きに悩まされることがない世界の下で生きている歓びに、
「あなたの言葉は、毒のようです」
 とのたまってうめいた。
「一度でじゅうぶん効いたのかな」
「この世では毒に慣れておりません」
「そうだ、そんなのはいらない世界だからね」
 かつて手の中のダイヤモンドが私に発した言葉は、一言一句覚えている。「来世は私がお前を飾ろう」と言ったあなたの、首か、指か、私が身につけられるのはどこか。幸福は続く。