雑高短文まとめ

500字程度の短文をまとめてあります

現パロ

 世話を焼くのが、楽しくて仕方がないという顔をしている。私は苦渋の表情をすることしかできない。咳をする体が熱かった。熱がわずかに上がったようだ。
 枕に頬をつけると、冷えた感触がある。嬉しくて目を閉じると「氷枕買ってこようか?」ともっと嬉しいことを言われる。
「そんなことを頼むわけには」
「あんなに長時間、腕が痛むまでうちわであおいでくれたの覚えてるよ」
 でも今は、そんなことしなくていい体なんだ、すごいものだよね。そう言って、彼は外に出る用意をした。マフラーを巻いて、コートを着て、また寒さを持って帰ってこようとしている。
 数百年まえ過ごした部屋は、温かい羽毛布団も、やわらかい電気カーペットもない。畳と薄い布団が一枚。今は錠剤の、たった五、六粒ほどで済む薬も、草を煎じたものを飲み、何度も軟膏を塗り、忍び服の端から香る火薬の匂いすら消えるほど薬漬けにして、それでも火傷の痕は彼の第一印象になるほど強かった。
 今の私の病は、果たしてそのときよりどれだけ楽か。けれど彼は「一度看病してみたかったんだよね」と会社帰りの足で私の元へやってきた。
 今の彼に火傷はない。しかし薬指には、指輪をしていた痕がある。