【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉 #00【Prologue】

人生初ミステリー(もどき)!!!!!!!!

はじめましての方ははじめまして、Xで私の奇行を日々目撃されている方はいつもお世話になっております。ましろぬぃです。

最近アスナショウコ様をはじめとしたフォロワー様方の世界観である「馬子軸」に「楽しそう!!!!俺も混ぜて!!!!!(設定資料の投げつけ)」をしたところ、ご本家様に拾っていただいて小説にちらりと出していただいたので、「これは私もアンサー書かないとダメだろ!!」と思い、執筆を開始させていただくことにしました。
そちらの説に関しましては、本当にありがとうございました。

本作は自創作【suicidal/leniency(スーサイダルリニアンスィ)】を「馬子軸」(現代ファンタジー)に落とし込んだ作品です。作者自身、馬子軸に関してど素人中のど素人ですので、間違った解釈などあるかもしれません。最初に謝罪いたします。
また、本シリーズは【suicidal/leniency】本編のネタバレを含みますので、「ネタバレNG!」という方は閲覧をお控えください。作者的にはスーリニはネタバレありきの方が面白いと思いますので、じゃんじゃんネタバレしていきたいです(大迷惑)

スーリニ原作が気になってくださった方におかれましては、以下に本編リンクを載せておきますのでよろしければご覧ください。現在Prologue~Karte03まで読めます。

▼suicidal/leniency本編
https://novel.daysneo.com/works/3870c9c909042fb07a363f371caeee59.html


それでは、皆様にとって良い時間になりますように。
わたしへ 途中で執筆諦めるなよ!!!!!!!!!


ましろぬぃ


外界では、熊蝉が煩く泣き喚いていた。
聳え立つビル群が突き刺すような太陽光を反射してまばゆく輝いている。遊歩道の木々を揺らす熱波はじりじりと皮膚を焼いて、太陽の存在感をただひたすらに押し付けていた。
今年は、例年以上の猛暑だった。


「────30代フランス人男性、交通事故!意識レベルJCS30、血圧測定不能!胸部と腹部に鈍的外傷、内出血の疑い!」


立ち込める熱気を切り裂くように走る救急車両。赤い警光灯と劈くサイレンが街中に木霊している。夏季休暇真っただ中、近隣に海水浴場があるそこでは観光客達が何事かと道路を見遣った。
車内では、担架に乗せられた患者が荒い息を吐いていた。げほ、と咳き込めば血痰が白いシャツに染みを落とす。胸部から腹部にかけては濡れた緋色の太い横縞が走っている。
彼の顔面は青く、唇は既に紫に染まっている。車内のモニターは体温の低下を叫んでいるのに、彼の額には汗が玉のように浮かんでいた。心拍数は異常に速いのに、血圧は測定出来ない。胸郭の動きは左右で非対称となり、腹部は膨満し硬直していた。


「ショック状態です!腹腔内及び胸腔内で大量出血!」

「ライン確保しろ!輸液は!?」

「あります!」


隊員の男性が素早く右手の静脈ラインを確保して輸液を流し込む。それと同時にもう一人の隊員が酸素マスクを装着させ────だが、患者の意識は静かに闇に吞み込まれていく。モニターは赤く悲鳴を上げ、細い脈は今にも途絶えそうで。


……持つか?」


隊員の背筋に冷たい汗が伝う。
一番近い病院は何処だ、とリーダーの男性が叫んだ。必死に受け入れ先を探していた若い隊員の手が一点で止まる。


「────東都医科大学付属病院……

「医学特区のか」

「近隣だとそこです、他には────」

「そこでいい。何分で着く!?」


運転している隊員がマップを見ながら「此処からだともう4分で着きます!」と答えた。……4分。もう一度バイタルと患者を見遣る………正直、それでも持つかどうか微妙だ。

緊急車両は既に白亜の都市の中枢を駆け抜けていた。
まるで天使の翼のように煌めく学術都市、日本有数……否、日本一の医学の中心地────いとしま医学特区。その中央区、東側に存在する病院に、車両は足を止めた。
受け入れの要請を受けてまだ10分も経っていないというのに、救命センターでは医師と看護師が待ち構えていた。彼らにとっては日常茶飯事なのだろう。ストレッチャーが到着し、患者は即座に処置室へ運び込まれた。


「到着時VF!腹腔内、胸腔内出血!」

「開胸準備!腹部もエコー確認、出血点を探せ!」


怒号が飛び交い、次々と救命処置が施される。心臓マッサージ、強心剤、血圧維持のための輸液────。それと同時に医師が患者の胸部を一本の線で切開すれば、そこには赤黒い生命の咆哮が溢れかえっていた。肺は完全に圧迫され、サチュレーションが徐々に下がっていく。
それは腹部も同様だ。吸引器の管を当てがい血液を吸い続けて出血箇所の特定を急ぐが、溢れ続けるそれの止血が追い付かない。


「心拍戻りません!」

「アドレナリン追加しろ!除細動もう一回!」

「はいッ!」


電気ショックの稼働音と共に、患者の体がびくんと強く跳ねる。どうだ、と医師がモニターを見遣る────だが鳴り続けるレッドアラームは依然として消える様子がない。
電子の波は徐々に細かく乱れ、そして一本の線に収束していく。
やれる事があるならなんだってやる。
救える手段があるならなんだって試す。
それでも────人間というちっぽけな存在は、運命の賽子を振る神々には叶わない。

モニターに映る波は、いつしか直線を描いていた。
緩やかに体温は奪われて、生命の証明はどれもゼロを示していた。


……ここ、までか」


医師の一人がそう漏らす。
どう足掻いても、彼を救える見立てがなかった。
重い沈黙が、処置室を満たして……医師は、彼の体内から緋色に染まった己の腕を抜いた。


……8月4日、15時26分────死亡確認」


現実が、鋭利な刃物となって一同の胸を抉った。看護師が静かに、彼の身体にシーツを掛ける。

窓の外では、夏の日差しが容赦なく照り付け……そして嘲笑っていた。
灼熱の午後、一つの命が────輪廻の輪に戻ったのである。