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Hizuki
2025-02-14 22:33:03
5534文字
Public
あんスタ[零薫他]
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贈り物に想いを込めて
【あんスタ】零薫+凛月。バレンタインに互いに手作りの贈り物をしようとする零と薫の話。前半は凛月視点、後半は零視点。想い人に喜んでほしいから。
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「凛月くん、いいかな?」
控えめなノックに続いて聞こえてきた声は、ついさっきホールハンズに連絡をくれたその人のものだった。
「お疲れさまです、薫さん」
「凛月くんもお疲れさま。ごめんね、遅い時間にお邪魔しちゃって」
「いえいえ、大丈夫ですよ。どうぞ~」
寮室のドアを開けて出迎えると、薫さんは申し訳なさそうに両手を合わせる。普段からまめに連絡を取っているというわけではないけれど、人づてに話だけはちょこちょこ耳にしている。そんな人から『少し相談したいことがある』と直接連絡があった。ユニットも事務所も違う薫さんに会えることは嬉しいし、相談相手に俺を選んでくれたことも嬉しい。断る理由は何もなく、同室の面々も仕事で部屋にいないからこそ、『今からでも大丈夫』と返事を返して今に至る。時計は23時を回ったところ。むしろ俺にとってはこれからの方が動きやすい時間だった。中に招き入れてソファに腰を落ち着けると、その本題を切り出した。
「それで、相談って何ですか?」
「ん~とさ、ちょっとお菓子を作りたくて
…
」
薫さんが甘いものを好きなことは知っているし、その単語が出てくることにも驚きはしない。ただ、『作りたい』ということが不思議に思えた。一体どうしてそんなことに、という疑問は、視界の端に見えたカレンダーが全部解決した。今は2月の頭、そして、この月と言えばのイベント事がある。
「
…
ああ、そういうことか。誰に、なんて聞くまでもないですね」
2月14日、バレンタインデー。そして、薫さんが贈ろうとしている相手は俺もよく知っている人物だ。
…
あえて名前は言わないけれど。
「
…
あはは。うん、たまにはそういうことをしてみるのもいいかなって思ったんだ」
俺の確認に頷いた薫さんは、愛おしそうに灰がかった淡い茶色の瞳を細めた。自身だって忙しい中、こうやって自分の時間を使って気持ちを伝えようとしている。その姿は俺には少し眩しく見えた。
「それに、凛月くんなら俺の知らない好みとかも知ってるかなって」
「多分今は俺より薫さんの方が知ってると思うけどなぁ
…
。まぁいいや。俺でよければ喜んで」
付け加えられた理由は、俺と相手の関係性に由来するものだった。とはいえ、同じユニットに所属している以上、単純に接触している時間は薫さんの方が長い。今の2人の関係からすれば、今の俺よりも濃い時間を重ねてもいるはずで。他にもお菓子作りが得意な子もいる中で俺を頼ってくれたのなら、応えたいと思う。
「ありがとう。助かるよ」
「他でもない薫さんの頼みですからね」
ほっとしたように薫さんが笑う。どんなものがいいか考える時間を少しもらうことにして、その日は解散になった。
そして、次の日の朝には遅く、昼には少し早い時間。仕事に出る前に軽い食事を済ませて、共有ルームのソファでのんびりしていると。
「りちゅや~、助けておくれ~」
「嫌」
「即答かえ!?そう言わずに困っておるお兄ちゃんを助けておくれ~」
突然背中からのしかかってきた重みと泣き声は、誰かと問わずとも正体は分かった。何を聞くまでもなく顔を背けて拒絶の意を示しても、離してくれるわけもない。むしろ逃がさないと言わんばかりにより力を込められる。
「
…
何で俺なの。薫さんは?」
はぁ、と重い溜め息が口から漏れる。解放してもらうには話を聞く方が早いのは火を見るよりも明らかだった。内容は分からないけれど、この人の相談事なら薫さんの方が適役だろうと名前を出してみるも、反応は芳しくない。
「今回は薫くんには頼れないんじゃ
…
」
「頼れない?」
また何か面倒事に足を突っ込んでいるのだろうか。やっぱり無理にでも突っぱねればよかったかと、内心後悔し始めた頃、ふっと自分の身体を押さえ付けていた力が緩んだ。
「
…
贈り物をする相手に頼るわけにはいかんじゃろう
…
」
普段の堂々とした態度はどこへやら。しおらしい声で続けられた言葉は俺の心配を振り払った。代わりに昨夜の薫さんからの相談が頭に浮かぶ。
「
…
ふ~ん?」
「ん?何かあるのかえ?」
「
…
べっつに~。ここで兄者に貸し作っておくのも悪くないかなって思っただけ~」
向こうから俺の表情は見えないだろう。思わず自分の口元が緩むのが分かる。薫さんも兄者も互いに内緒でプレゼントを用意しようとしている。一緒にいると考えることも似てくるのだろうか。
「で、俺に何をしろって?」
「お菓子を作りたいんじゃけど、その相談に乗ってほしいんじゃよ
…
」
兄者から告げられた内容に、思わず俺は目を瞬かせることしかできなかった。ふと時計を見ればそろそろ出なければいけない時間で、兄者の腕からすり抜けてひとまず寮を出た。現場に向かって歩きながら、2人に持ち込まれた相談の落としどころを考える。
これはどうしたものか。似てくるどころの騒ぎじゃない。手作りのお菓子を贈りたいだなんて、2人揃って全く同じじゃないか。
多忙な二枚看板が仕事の合間に作るというのなら、凝ったものよりは手軽なものがいいだろう。ならいっそ元は同じものにして、開けた時に驚いてもらうのも面白いかもしれない。まぁ、その場を俺が目にすることはできないのだけど、きっと後で報告はしてくれるだろうから反応は聞かせてもらえるはず。
よし、決めた。
…
2人共、俺からのサプライズも受け取ってよね。
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