riririnf
2025-02-08 12:59:31
11987文字
Public
 

月去り来る晨夕の花

ヌヴィフリ逃亡書いてみた⑤
ヌヴィレットと鍾離先生の月見酒。
フリーナは一回お休み。捏造・ネタバレ過多。



 浮かぶ明月を認めながら、ヌヴィレットは夜に賑わう璃月の街を歩く。 
 そう労せずに目的の人物を見つけて声を掛けようとし──それより早く、相手方が声を上げた。
「ヌヴィレット!?お前、こんなところで何してるんだ!?」
 酔いに浮かれた歓声に負けぬパイモンの音量に、隣の旅人が僅かに顔を顰めている。
 常と変わらぬ二人の様子に、思わず少し気が抜けた。
 それは微かな笑みとなって現れ、二人は軽く目を見開いた後、顔を見合わせた。……本当に、仲がいいことだ。
「急に笑うなんて、へんな奴だな……。今日はフリーナと会う日だっただろ?その様子だと、上手くいったのか?」
 戸惑い半分、興味半分といった様子で問いかけてくるパイモンに首を振る。
「いや。あれは拒絶であったように思う」
「へ……っ」
 パイモンは固まり、旅人は眉を寄せる。ただそこで終わらないのが、テイワット中に縁を紡ぐ彼女の強みだろう。
……その割に、あんまり落ち込んでないみたいだけど」
 見事な観察眼で、ヌヴィレットの核心を突く。
「ああ。そういった段階は、とうに過ぎてしまった」
 同意を示せば、ぱちりと黄金の瞳が瞬く。ヌヴィレットは言葉を続けた。
「だからこそ、君たちに協力を仰ぎに来た」
「協力?」
 首を傾げるパイモンに、 頷きを返す。
「この街にいるはずのフリーナの気配を感じられない。それは鍾離殿──岩の神が、彼女を隠しているからではないか?」
……っ!!」
 またも二人合わせて固まった。実に息が合っている。
「しょっ、鍾離に会ったのか……っ!?」
「いかにも。そして、そう慌てずともいい。確かに七神にはいずれ審判を受けさせねばならないが、それは今この時では無い」
「そ……そうなのか……?なら、いいけどさ……
 感情が行動に分かりやすく表れるパイモンは、まだ落ち着かない様子で上下している。
「ごめん、隠してて」
 そしてこういう時、自然に旅人が会話の主導を握る。これも適材適所というのだろうか。
 真摯に見上げてくる黄金の瞳に、ヌヴィレットは再度首を振った。
「構わない。君たちは神々とも親しい。こういった状況において、彼の存在を隠すのは当たり前のことだ」
 ほ……、と瞬間、表情を緩めた旅人は、しかしすぐに顔を引き締めた。
……で、私たちに協力してほしいことって?」
「先にも言った通り、フリーナの気配が感じ取れない。如何にここが異国の地といえど、これは異常なことだ」
 昨日、奥蔵山でフリーナを捜索した時もそうだった。
 権能をもってしても、霞を掴むかの如くになにも察知出来なかったのだ。それこそ霧のすぐ向こうに彼女を見つけた、その直前まで。
 ヌヴィレットからすれば、急にフリーナがその場に出現したかのようにも思われた。そんなことは自然現象では有り得ない。
 あの時はこの土地特有の何かが、ヌヴィレットの感覚を阻害しているのかとも考えたが、一度は捉えた気配が再度失われたとなれば、話は変わる。
「思うに、フリーナが付けていた髪飾り。それに何らかの力が込められているのでは?あれから彼の残滓を感じた」
 フリーナと再会した時から、ヌヴィレットはずっとあの琥珀珠から、“力”を感じ取っていた。
 だからその力を辿り、鍾離を見つけられたのだ。
「あ……合ってる……。流石だな……
 ふよふよと漂いながら、パイモンが同意をくれる。一方の旅人は腕を組み、何かを考え込んでいるかのようだった。
……ひとつ、確認してもいい?」
「聞こう。言ってみるといい」
 腕組みを解いた旅人に頷く。協力を求めるのなら、事前に疑念や懸念は潰しておかなければならない。
「ヌヴィレットが今考えてるのは、フリーナの幸せ?それとも、自分の幸せ?」
 静かに、けれど酔いの歓声に潰れぬ芯の通った声で、旅人は訊ねてくる。
 その問いに、ひとつ腑に落ちた。
……君たちからの『受け売り』だったか」
「え?」
 思えば当然のことか。岩神とフリーナの幸せについて話す者など、二人以外に有り得ない。
「いや、すまない。こちらの話だ」
 ヌヴィレットは思考を切り替える。どちらの幸せを求めているかであったか。
 その問いへの答えはもう考えるまでもなく、定まっている。
「──両方だ」
 短い答えに、旅人は目を見開いた。しかしそれは刹那のことで、すぐに唇をじわりと持ち上げる。
「いいね」
 そして、にっこりと満面の笑みで頷いた。
「よし、じゃあ皆で考えようぜ!──いざ!奇門遁甲破り!」
 パイモンが高らかに号令を上げる。
 こうして、五日目の夜は更けていく。迫る逃亡劇の終幕へと向けて。