他の世界で繋がる縁もあるそうですよ

中の人ネタです!!!!!!!!!

人類最後のマスターが監督生やってるn番煎じのやつです。細かいところは脳内補完してください。
それと魔術知識についてはお目こぼしを……何卒……。






 ───やっちまった。

 人類最後のマスター、藤丸立香の所感は、その一言に尽きた。
 文字通り、やっちまった。油断した。───てっきり、「いつものアレ」だと勘違いしてしまったのだ。
 諸葛孔明、もとい、ロード・エルメロイ二世の特別授業でさんざ気をつけろと言われていたことなのに。立香は文字通り頭を抱えた。数分だけ。
 頭を抱えて蹲っていても、目の前に広がっている問題は何一つ解決しないのである。立香はこの二年間でくよくよ悩まなくなった。自分の感情よりも課題解決を優先しなければ自分を含めたひとの命が危険に晒される環境にずっと存在していたので、そうなってしまうのも仕方がないというか。
 しかし、現状、自分ができることは無い。立香はやれやれと嘆息した。

 ───夢を見た。脳が記憶を整理するときのものとは違う、夢を視た。

 暗闇の中に、見事な装飾を施された盾に細長い楕円の鏡がぽつんと浮かんでいた。立香はそれを覗き込んでいて、「アニバーサリー礼装を着ている」と何とはなしに思ったことを覚えている。……実際は魔術礼装ですらない、ただの制服だったのだが。
 鏡には、爪の長い、掌が映っていた。そしてその掌は、こちらに差し出されていた。
 手を取れ、と。言葉が響いたような、気がする。「いつものアレだ」と立香は思った。
 いつもの、契約している英霊 サーヴァントが見せる夢。彼らの心象世界。
 サーヴァントとは、人類史における偉人であり、星の光そのものであり、立香の求めに応じてこの世に現界してくれた、頼れる人外のことである。常識も価値観も思考も、何もかもが異なる中、人理焼却という一大事において、立香と言葉を交わしてくれた、大切な仲間。中には、使い捨ての武器だと思え、と非情なことを言う者もいたけれど、それはまごうかたなき真実で、立香が乗り越えなければならないものだったから、立香は歯を食いしばって、せめて真正面から彼らのことを見据えていた。
 さて、そんなサーヴァントと契約していると、彼らのことを夢に見ることがある。大抵は生前の様子であったりとか、彼らの願望であったりとか、とにかく、彼らの為人をしることのできる機会であるには違いない。
 互いに生きて言葉を交わせるイキモノであるが故に、隠したいこと、触れてほしくない場所は存在する。立香とて、皆の前ではせめて、強がって、自分の想いに素直でいたい。だからこそ、彼らが普段、立香に敢えて見せないでおいているものを知る機会というのは、逃したくなかった。知ることで、防げる無礼も存在するし、また、お互いが納得のできる関係を築くことに繋がるからだ。立香は積極的に彼らの秘事を暴きたくはなかったし、彼らに何か影響を与えたいだとか、救いたいだとか、そんな大それたことは微塵も望んでいないけれど、せめて、すれ違いたくはなかったのだ。
 前置きが長くなった。とにかく、立香はちょっとだけ───本当に二秒とかその程度───考えて、「いつものアレだ」と判断して、その手を取って鏡を通り抜けて初めて、「そう言えば、これは誰の夢だろう」と気付いたのである。

 ───直後、派手な音を立てて、棺の蓋が吹っ飛び、青い炎に囲まれてしまったのだが。


 立香は、異世界にレイシフト───もとい、トリップしてしまっていた。絶対に、あの手を取ってしまったからである。立香は心底から反省し、来る大説教会への恐怖から、体は震度四以上の地震並みにがたがた揺れていた。しかし、先述の通り、怯えていても始まらない。とにかく、どうにかして元の世界に、そして後輩の元に戻らなければ。立香は宛がわれたオンボロ寮で掃除をしながら、どうにか己を奮い立たせた。

 ───とにかく、「異世界」とされるものと関わるには、召喚術式ぐらいしか思い浮かばないけど……

 となると、立香にとって一番身近なのは、サーヴァントの召喚である。
 サーヴァントは、本来ならば聖杯戦争という特殊な魔術儀式においてのみ顕現させることのできる破格の使い魔だ。しかし、その召喚方法は、数多存在する術式の中で比べると、簡単ではないけれど難しいわけでもない術式らしい。血で召喚陣を描き、英霊に所縁のある物事を用意して触媒とし、高次元の場所にあるという「英霊の座」からサーヴァントとして過去の人外を呼び寄せる。これを、立香は後輩であり、己のサーヴァントでもあるマシュ・キリエライトが持つ宝具、「円卓の盾」を媒介に、カルデアを通して英霊召喚を行っていた。
 魔素、つまりは魔力でその全てを構成する英霊を維持するには、とんでもない魔力量が必要となる。しかし立香は一般人にちょこっとだけ毛の生えた魔術使いにも劣る魔術師である。立香たちは、その魔力を、カルデアで生産される電力に頼っていた。

 ───ここには、電気も、聖杯も、触媒も、マシュの盾も無いけど……

 立香は、己の手の甲に刻まれた令呪を見下ろした。

 ───縁ならば、ある。

 この縁に、救われた窮地は数知れず。立香は、まだ絶望してはいなかった。











 それは、立香がうんうん唸りながらマシュの盾に刻まれた術式や、英霊召喚の魔法人を思い出そうと格闘していた錬金術の授業でのことだった。

「この魔道具を使えば、生成物はその保存状態を半永久的に保つことができる」

 一見、超太い試験管のようなものをぷらぷらと示しながら、クルーウェルはコルクを取り出した。
「もっと良いものであれば開閉を何度も繰り返せるが、お前達の課題用に配布するこれは一度きりしか使えない、いわゆる消耗品だ。課題の薬品を精製するまでに何か別の物を入れたり、提出までにコルクを取ったりしないこと」
 言いながら、クルーウェルは最前列の生徒にがちゃがちゃと試験管が束になって入っている木箱を下げ渡した。前から順番に試験管が回ってくる。
「不注意で割ってしまっても、俺は知らん。購買部で代替品を探すんだな」
 クルーウェルは意地悪く笑った。立香は、パズルのピースがぱちっと嵌る音を聞いた。