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桜霞
2023-04-10 01:54:15
21796文字
Public
【大量クロスオーバー】いろんな清涼学園
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【少陰】畢生道中膝栗毛
※少年陰陽師二次創作(後々大量クロスオーバー予定)
※オリキャラが主人公です 二人に増えました
※じい様と昌浩と藤花と神将がちょっと出ます
※いろんな作品と微クロスオーバーし始めてる
※キャラ崩壊しとるかも
※続く予定
1
2
3
……
首が、痛い。息が、しにくい。
覚醒時特有の、息を大きく吸う感覚。
ふわりふわりと、水から顔を出す時のように、意識が浮上する。
一際大きく息をしたところで、ようやく瞼に力が入るようになった。震えた瞼がどうにか開いて、視界に光が入る。
「
…………
」
いつも通り、ぼやけた視界だ。冴美は目が悪かった。
しかし、ぼやけた視界ながらに、ここが見慣れた場所ではないことは察せられた。目に映った景色を、どう形容したらいいのかわからない。
まずは、自分の下に、硬い感触。手触りからして、おそらく畳がある。どうやら、畳に直に寝ているらしい。
畳の向こうには木の床が続いていた。さらに向こうに、小さな文机がある。
いつもの癖で、頭の近くにあるだろう眼鏡を探そうと、冴美はつい、腕を伸ばそうとした。
瞬間、背中がびきりと引き攣って、「ひぐ!」文字通り痛みに悲鳴が盛れた。
背筋を痛みと熱が這い上がる。そのまま脳髄を通って全身に広がり、視界が滲んでぐらりと揺れた。呼吸まで引き攣れて、うまくできない。必死に体を固めて、背中を動かさないように気をつけて、どうにか痛みをやりすごすしかできなかった。
ぱたぱたと足音がしてもそちらに視線をやれない。息をするのに必死で、痛みをやり過ごす上手いやり方が分からないのだ。混乱しそうになる脳みそを落ち着かせるだけで精一杯だった。
「傷が痛むんだわ」
「任せて」
だれか、いる。冴美は誰がいるのか確認しようとしたが、それよりも体を動かすことによる痛みへの恐怖が勝って、じっとその場で固まっていた。
「華氷柱念
……
」
「っ
……
、」
じんわり、冷たい感触が背中に広がる。背中から全身を覆っていた熱さと痛みがあっという間に引いていって、びっくりするくらい呼吸が楽になった。強ばっていた体から、自然と力が抜けていく。
熱が引いて肌が冷えるかと思ったが、次いでじんわりと冴美の体を優しく包んだのは、ほっとするような温もりだった。
普通に、息ができる。意識して繰り返し、背中に痛みが走らないのを確認して、冴美は今度こそ脱力した。顰められていた眉間からどうにか力を抜いて、近くにいるだろう人に礼を言おうと、口を開く。直後、喉がひりついて、妙にねばっこく引き攣っているのがわかった。
乾燥しているのだ。声が出せない。唇もぱりぱりだった。
そこへ、そっと、白い布が差し出される。
「口に含められますか
……
?」
「
……
」
先程は遠かった声が、はっきりと聞こえる。冴美は、ちょっとだけ、顔を前に出した。そろそろと、首を起点に動かす分には、背中は痛まない。唇で白い布を食み、ちゅう、と音を立てて吸うと、水分が口の中に染み渡った。
何度か繰り返し、ようやく「ありがとう」と口にする。
どういたしまして、と嬉しいような、ほっとしたような声音が返された。
「喋れそうですか?」
「
……
なんとか
……
、
……
あの、ここって
……
」
「俺の邸です。
……
ええと」
優しく話す声を、冴美はどこかで聞いたことがあるような気がした。ぼやけて顔がよくわからないが、声音からしても、どうにも冴美くらいの年頃のように感じる。
「まだ、傷が深いので。血は止まりましたが
……
寝ていてください。動いたら、傷が広がるので、できればそのままで」
「何か欲しいものがあれば、仰ってくださいね」
「
…………
」
鈴を優しく転がしたような甘やかな声に、冴美はつい、それなら、と申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら言葉を選んだ。
「あの。お世話になっておいて、こんなことを言うのは、心苦しいんですが」
「なんですか? なんでも仰ってください」
「えっと」
優しさが胸に沁みる。冴美はなんだか泣きそうだった。
「あの、枕、を。ちょっと、低くて、柔らかいものに
……
あの、使わない布とかを丸めたもので良いので
……
変えてもらえませんか
……
」
「分かりました。ちょっと待っててくださいね」
気配がひとつ、ぱたぱたと遠ざかっていく。冴美はそっと、硬い枕を自分の頭から退けた。触感からするとどうも木でできている。時代を鑑みれば当然のことであった。
「枕が合わなかったんですね。それで苦しそうにされていたの
……
私てっきり傷が痛むのだと。気が付かなくてごめんなさい」
「そんな、」
しょんぼりした声を、冴美は慌てて遮った。
「お水、ありがとうございました。背中は、動かなければ、平気です。ありがとうございます」
良かった、と優しい声音が息を吐く。冴美もつられて頬を緩めてしまうような、そわな柔い声音だった。
少しして、またぱたぱたと足音が戻ってきた。
「こんなんでいいですかね
……
頭の下に入れますね」
「お願いします」
差し込まれた布地に、ほて、と頭を乗せる。高さもちょうどよく、柔らかい。呼吸が随分しやすくなって、冴美はほう、と肩から力を抜いた。
「ちょうどいいです
……
すみません、ありがとうございます」
「いえいえ
……
あ、そうだ。忘れるところだった」
言って、これ、どうぞと差し出されたのは、冴美が探し求めていた眼鏡だった。
「あああありがとうございます!」
思わず起き上がりそうになるのをなんとか堪えて、冴美は眼鏡を受け取った。どうやらどこも割れておらず、つるも曲がっていないようだった。慣れた仕草で耳にかけ、ようやくこれで視界がすっきり、と顔を上げた冴美は直後、「ん!?」と体を固まらせた。
「?」
「どうしました?」
きょとん、としている顔に、見覚えがある、なんてものではなかった。
ぽかん、とする冴美に、少年と少女は、ぱちぱちと瞬いて、顔を見合わせている。
───昌浩と、彰子
……
!?
冴美を心配そうに覗き込む少年と少女は、なんと冴美がついこの間知り合った安倍昌浩と藤原彰子にそっくりだったのである。いや、そっくりどころか、最早同一人物としか思えない。
「
……
あの
……
?」
「!」
怪訝そうに言われて、冴美はハッと息を飲んだ。
「い、いやあ! あの、知り合いにそっくりだったもので! 驚いてしまって、ハハ
……
」
「そうなんですか」
慌てて誤魔化したにしては、昌浩と彰子はあっさり頷いて納得したようだった。しかし、すぐに彰子に似ている少女の方が小首を傾げる。
「今まで、気付かなかったんですか?」
「あ、うち、目が悪くて。これがないと、物がはっきり見えないんですよ」
二人が揃って、へぇー、と感嘆する。そりゃこの時代に眼鏡はあるまい、と冴美は苦笑し、眼鏡の説明をする流れをぶった斬るためにどうにかそれらしく居住まいを正す努力をした。
「申し遅れました、藤井冴美です」
頷くような動きしかできなかったが、どうにか頭を下げる。受けて、少年たちも姿勢を正したようだった。
「安倍昌浩です」
「藤花と申します」
「ええと
……
安倍さんに、藤花さん、か」
藤花と彰子の方はともかくとして、昌浩の方は名前まで一緒かあ、と冴美はじゃっかん遠くを見張るかしたい気持ちになった。けれども千年経てば名前の被ることくらい多々あろう、とどうにか気を持ち直す。
「助けて頂いて、ありがとうございます」
もう一度、首だけを下げる。いえいえ、と昌浩たちも会釈した。
「ええと、藤井さんは、どこからいらしたんですか? 京になにか用事でも?」
「
……………………………………
えっと」
いったい、なにをどこから、どうせつめいすればいいんだろう。
冴美は文字通り、言葉を探しあぐねた。何せこの状況を正しく説明するならば、こうなる。
いやあ、うちってば自分では扱いきれない瞬間移動の力を持ってて、ときどき色んなところに瞬間移動してたんですけど、とうとう時空を越えちゃって、千年先の未来からやってきました! どうも、未来人です!
───言えない。とても言えない。
冴美はぎゅ、と歯を食いしばって眉間に力を入れた。
───けれども、おそらく絶対確実に命の恩人である彼らに、隠し事はしたくない。
「あ、えーと、言い辛い事だったら
……
」
何かを察したのか、昌浩が冴美を気遣う。冴美は少しの沈黙のあと、「すみません」と口にした。
「どう説明したものか、分からなくって
……
自分でも信じられないことが起こっているというか
……
」
「
……
自分でも、信じられないこと
……
?」
「
…………
」
だからこそ、信じてもらうことを諦めたというか。
───でも、今はそんなことを言っている場合じゃない。
冴美は、意を決して、全てを話すことにした。腹を括って、なんとか昌浩と視線を合わせる。
「
……
うちには、その、
……
不思議な力があって。ふとした瞬間に、今まで居た場所とは全く違う場所に、瞬間的に移動していることがあるんです」
「しゅんかんてきに」
「移動
……
?」
「瞬きひとつで、ここから、あそこへ、というふうに」
「はあ」
なるほど、とふたりが冴美の示した部屋の外の方を見やる。
「ただ、自分でコントロール
……
えーと、自分でその力を自由に使えるかというと、そうではなくて」
「えっそれで?」
「えっ」
それで、とは。
藤花と冴美の視線を受けた昌浩は、ぱた、と袖で口元を押えた。そして、どうぞ、と無言で冴美に話の続きを促す。
「えーと
……
自分でも、いつ、どこで、どこに移動してしまうのか、分からないんです。移動してしまう直前の、前兆みたいなのも全くなくって」
「
…………
それは
……
」
「とっても
……
大変ですね
……
?」
そうですね、と冴美は頷いた。
話を聞いた昌浩と藤花は、へえーそういうこともあるんだなぁーという顔をしていた。
「それじゃあ、いろんなところに行ってしまった後は、どうやって元の場所に戻っていたの?」
「親切なひとに助けてもらったりとか、あとは自力で、本来かかる距離と道程をかけて帰ってました」
「じゃあ、もしかして」
ハタ、と何かに気付いたらしい昌浩が、思わずといった風情で声を上げた。
「あなたがあの辻にいたのも、ええと、瞬間的、に? 移動しちゃったから、ですか?」
「あ、えっと。そこまでは歩いて行って」
「歩いて
……
? どこからですか」
「伏見から」
「伏見から!?」
素っ頓狂な声が上がる。冴美は結構歩きましたね、と苦笑した。
「じゃあ、元々いた場所から、伏見まで、瞬きひとつで移動した、ということかしら
……
?」
「うん、そうですね」
「元いた場所は分かりますか? 近かったら、俺、文とか、届けますよ」
心優しい申し出に、冴美は「ありがとう」と言って、しかし苦笑した。
「でも、そうするとたぶん、その手紙、1000年後に届けなきゃいけなくなると思う」
「えっ」
「はい?」
「だから、千年後」
───たっぷり、間があった。
せんねん、と昌浩がうわごとのように呟く。
冴美は遠い目をしながら言葉を続けた。
「時間を超えたのはうちも初めてだから、どうしていいやら
……
はは
……
」
「
……
え
……
」
「えぇー
……
?」
思いっきり胡乱気な顔をする昌浩に、やっぱりそうなるよなぁ、うちなら信じないよ、と、冴美は苦く笑うしかなかった。
「
……
ええと
……
それで
……
元の
……
未来? に
……
帰るため? に
……
あんな場所へ
……
?」
なんとか話について行こうとしてくれているらしい昌浩に、うん、と冴美は何度目か頷いた。
「この時代に来ちまう前に、この世では無い場所
……
異界、っつーのかな。そこに、飛んじまったことがあって。そのときは、親切なひとに助けてもらって、元の世界に戻れたんだ。戻ってこれたときに最初に出た場所が今出川通だったから、あの異界に行けば、元の時代に戻れるんじゃないかって
……
」
助けてくれたひとが、そこには時間の概念が無いって言ってたんだ、と冴美が付け足す。どうにも昌浩の処理能力を超えてくる情報ざかりだが、異界ならば時間の概念がなくなるといったことも不思議ではないだろう。昌浩は、今のところはとりあえず、冴美の話を飲み込むことにした。
「ひとまず、藤井さんは、元の場所に帰りたくて、あそこにいたんだっていうのは、分かりました」
「もうそれだけでじゅうぶんだよ
……
ありがとな
……
」
「どういたしまして」「それで、何に襲われたとか、覚えてます?」
「ああ、うん。あの、鎧武者みてえなやつ」
「鎧武者とかに恨まれるようなこと、覚えとかあります?」
「ま、ったく、ない」
「ないかぁ」
まったくかぁ。困った、という顔をして、昌浩が呟く。
冴美があの鎧武者はなんなのかと問おうとしたとき、遠くから、まさひろー、と彼を呼ばう声がした。
「あ、母上だ。すいません、俺もう行きますね」
「ああいやお構いなく。お気をつけて、行ってらっしゃい」
行ってきます、と昌浩がぱたぱたと部屋を出て行った。
「あ、もうこんな時間なのね」
「え?」
藤花の見ている方へ、冴美も視線を巡らせる。
部屋の外が、徐々に明るくなっていた。白んだ空が、朝だということを教えてくれる。
「昌浩が出仕する時間だわ」
「出仕」
「そうなんです。昌浩、陰陽寮に出仕しているの」
「陰陽寮」
「私、お見送りに行ってきます。少し待っていてください」
綺麗な所作で、しかし素早く、藤花が部屋を後にする。
冴美は、顔を両手で覆って、どうにもこうにも、呻き声を上げた。
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