こꯓレ)ろ🌟🦄🌈🌟
2025-01-09 19:25:22
16133文字
Public コノチャ30×16♀
 

いつか恋人のキスを。①

30コノ×16チャ♀の話。
大変不道徳です。

児童文学に申し訳なさすぎてタイトル変えましたw

 ①

 仕事の都合で北米大陸に降りた後、上司の都合でそのまま二日間の待機になった。
 コノエはC.E.以前の紙の本を収集するのが趣味だったので知り合いもいない土地ではあったが、せっかく地球に降りてきたのだから古本屋でも回ってみようかとホテル最寄りの駅で現地のマップを端末に読み込んでめぼしい店を探していた。
 そこに声をかけられる。
「アレクシーさんですか」
 振り返ったのは自分の名前をそう読む人も居るからで、主にメッセージのみのやりとりをしていると発生する間違いだ。
「いえ、私はあれ?」
 振り返ったが、視線の先には誰もいない。
「あの」
「え」
 下の方から声がして、視線を下げると子どもが立っている。ふわふわの茶髪はショートヘア、大きな黒縁メガネ、黒いフード付きのパーカーにデニムのパンツ。声と、斜めがけの茶色いメッセンジャーバッグの紐が胸元に僅かに食い込んでいるところを見るにおそらく女の子だ。
「アレクシーさん?」
いや、私はアレクセイで」
「えっ、アレクセイさん、ですか?」
「そうだが
「じゃあ、自分が読み間違えてたんですね。あの、チャンドラです」
「チャンドラさん」
「はい、今日はよろしくお願いします」
 女の子は深々と頭を下げた。
 この子、誰だ?
 コノエの頭の中は疑問符で埋め尽くされた。

「チビでびっくりしましたか? 最初、目線が合わなかったので」
「あ、ああ。そうだね」
「黙っててすみません。言ったら会ってもらえないかと思って。こういうのでこの体型は嫌われるので。アレクセイさんはどうですか」
「いや、私は別に。体型で人を嫌ったりはしないが」
「チビですがちゃんと十八歳なので心配しないでください!」
「十八? 流石にそれは無理があるのでは?」
 視線が泳ぐチャンドラ。十八歳は嘘なのだろう。身長もコノエより頭ひとつ分はゆうに小さいし、雰囲気もあどけなくどう見ても十四歳くらいではなかろうか。少なくともコノエの目からは未成年に見える。
「本当の年齢をきいても?」
「あの、言っても帰らないでくれますか」
「まぁ、帰る予定は無いかな」
 今から古書店を数件回る予定なのでそう答えると、チャンドラはホッとしたように雰囲気を和らげて教えてくれた。
「あの、十六歳です。ダメですか?」
「別にダメということはないが。そうか、ならもう大人だな」
 コーディネイターでは十五歳で一人前と見做されるので大人か子どもかで言えば大人である。年齢より幼く見えるが。という言葉は彼女には失礼にあたると考えて飲み込んだ。
 するとチャンドラはよかったぁと小さく呟いて笑った。その笑顔になぜかどきりとしてしまい、先ほど彼女の口から出た「こういうの」の詳細を聞くタイミングを失った。
「アレクセイさん、背が高くて濃いグレーの髪、黒いタートルにキャメルのロングコートだったのですぐわかりました」
「そうか
「これからどうしますか? あーお茶でもしますか。それとももう行きます?」
 このまますぐに別れて目当ての古書店に行くより、目の前の子とお茶をするのも暇つぶしに良いような気がしてコノエは「そうだね、カフェに行こうか」と答えた。
 チャンドラは何故かまたホッとしたように緊張を和らげた。その瞬間の表情が良い。

 駅構内のチェーン店のカフェの壁際の席に並んで座ってコーヒーを飲む。
 紙カップを前にして目線が合わないままお互いチラチラと様子を伺い合うというアカデミー時代の淡い恋愛を想起させるような空気がくすぐったくてたまらない。横の女の子が年齢より幼く見えるせいだ。
「アレクセイさんはアプリで話すより落ち着いてる雰囲気です」
「アプリ
「こう言ったら失礼かもしれませんが、メッセージのやり取りではもっとがっついてる感じなのかなって」
「はぁ」
 だいぶあけすけな言い方ではあるが、アプリのメッセージでやり取りした「アレクシーさん」はコノエではないのでその違和感は正しいのだろう。
 ホットコーヒーをひと口啜り、何となく彼女の利用していたというアプリとやらがどんなものか察せられてきた。
「この後ですけど、どこかいいところ知ってますか?」
「どこ、とは?」
 この後は古書店に行く予定しかない。古書店なら数件見繕ってあるが彼女の望む行き先でない事だけは確かだ。
 チャンドラは小さな声でぽつりと答えた。
「ホテル行きますよね?」
「なるほど?」
 初対面の男とホテルに行くためのアプリか。思ったより擦れた展開になってきたな。と手元の紙カップからチャンドラの横顔に視線を移す。
 本人も言う通り、チビだし髪はボサボサ、毛玉だらけのだぼだぼのパーカーとデニムパンツ、大きなメガネが野暮ったい。パーカーの袖からわずかに見える手首がやけに細く、全体的に肉付きも悪そうで、決して性的な魅力があるわけでもない。
 初心そうなそぶりが演技なら大したものだがそうでない場合年齢詐称してまでセックスしたがっているようには見えない。
 むしろカフェに行くと言った瞬間に見せた緩んだ雰囲気や身なりからして、やむを得ずそのアプリを利用するに至ったのでは。と推察した。
 会話の中から拾える情報を分析していると、チャンドラのバッグの中の携帯端末がポン、と通知音を鳴らした。
「あれ?」
 チャンドラは「ちょっとすみません」と断ってから端末を取り出して通知のポップアップをタップする。
「メッセージ? え? えっ? ブロックされた?」
 不躾ながら端末のディスプレイを覗き込むと、元々チャンドラと待ち合わせしていた「アレクシーさん」は待ち合わせ場所にチャンドラが現れないことに腹を立て、騙されたと罵って彼女をブロックした挙句に帰ってしまったらしい。
 待ち合わせ時間は五分ほど前、五分も待てずにキレて帰る男と横の女の子がホテルに行くようなことにならなくて良かったなとコノエは心から安堵した。
「エッということは、あなたは誰?」
 チャンドラは目を丸くしてコノエを見上げて尋ねてくる。
「私はアレクセイ・コノエ。仕事でこの街に滞在している通りすがりの者だ」
「つまり?」
「君がアプリで知り合った男とは無関係だな」
「はぁ⁉︎ エッ? なんで?」
「とりあえず、この後君とホテルに行くつもりは無いかな」
 告げると、チャンドラは顔を真っ赤にして両手で覆ってしまった。背中を丸めてテーブルに突っ伏して震え声で謝ってくる。
「す、すみませんでしたッ
「いや、私は構わない。どうせ今日は一日中ぶらぶらするつもりだ。むしろ暇が潰せたよ」
「うぅ
 言葉にならない感情の整理に唸るチャンドラの隣でコーヒーを飲む。
「私の名前はアレクシーとも読むから、私に声をかけてきたのかと思って振り返ってしまった。人違いをしているのではないかとは思ったのだが君のような子とお茶をするのも悪くないかと思って話を合わせてしまったんだが。元々約束をしていた相手と会えなくなってしまって悪かったね」
「い、えいやまぁ、ハイ。でもいいですなんか怖そうな人だったからむしろよかったのかも」
 人違いで声をかけられたとわかっていたのに言わなかったことを謝ると、ようやく羞恥から立ち直ったチャンドラは顔を上げたがコノエの方は一切見ないまま答えた。
 のろのろとバッグの中からボロい財布を取り出すと今時珍しい紙幣を取り出してテーブルの上に置いた。
「これは?」
「コーヒー代です。奢ってもらう理由無いし、むしろ自分が払う方っスよね付き合わせちゃってすみませんでした」
 急に砕けた言葉づかいになったチャンドラ。こっちが素の喋り方のようだ。
 先ほど支払ったコーヒー代には足りないが、チラッと見えた財布の中のなけなしの紙幣だった。
「ここは私がご馳走するよ」
「でもこっちの勘違いだったし」
「勘違いだとわかっていて誘いに乗ったんだからお互い様だろう。それより、さっきのアプリだが少し危ないのではないかな。メッセージでやり取りしただけの顔も知らない相手と会うということだろう?」
 いわゆる出会い系。しかも金銭のやり取りを踏まえた性交渉の仲介をするものだろう。
 案の定、チャンドラはビクッと身体を震わせてコノエの方を一切見ない。
「そういう仕事で生きていると言うなら差し出口かもしれないが君は慣れている風でもないし」
「支払いが滞ってて、バイトの給料前借りしても足りないしもうヤケクソで
「そういうことか。ちなみにいかほど?」
「え? あぁ●くらいです」
 コノエからすると今日古書店で買い物する為に準備した額の十パーセント程度に過ぎない。そんな端金の為に身体を売るのかとむしろ驚いたが顔には出さなかった。
「何に使うんだ」
「今期は奨学金の試験に落ちたので、学費です。払えなきゃ退学だし」
 はぁ、とため息をついたチャンドラ。
 真偽はさておき、ナチュラルの学校は義務教育以外の学校に費用が要ると聞いたことはあった。そういう意味では人口が少ない割に社会保障機構が確立しているプラントは恵まれていると言えるかもしれない。少なくとも教育を受けたい場合、金はかからない。やる気があるなら社会全体がそれを支援する。
 彼女のかけている野暮ったい黒縁メガネのレンズには僅かにオレンジ色が入っている。横に座ることで見えたが、そのレンズの下には淡い水色の瞳が隠れている。
 手元の紙カップを小さな両手で握りしめるチャンドラの目尻にはうっすらと涙の膜が張っていて、なかなか綺麗だ。
 コノエはコートの内ポケットの中に入れておいたマネークリップを取り出してテーブルの上に置いた。
 古書店は電子決済が使えないところがたまにあるので準備した現地通貨だが、綺麗な青い瞳の濡れたところが見れたので支払っても良い気持ちになった。
「どうぞ?」
「どうぞって何すか」
「学費を支払う必要があるんだろう?」
「何で? 怖いんですが
「困っているんだろう?」
「はぁ⁉︎ 嘘ついて巻き上げようとしてるだけかもしれませんよ!」
 チャンドラの発言も尤もだ。
「いいよ、それでも。苦学生に寄付だ。私は仕事でたまたまこの街に来ているだけの旅行者で名前以外の情報は君に明かさない。身分証を出したわけじゃないし、本名かどうかもわからないだろう? 君が今後も私に金の無心をしようとしても不可能だ。後腐れの無い拾った金と思って使いなさい」
「いや、そんなことできるわけ
「タダで受け取るのは気が引ける? なら、ひとつ条件をつけようか」
「な、何すか」
 チャンドラは目に見えて狼狽した。まるで性的な奉仕を要求されたらどうしよう。とでも言いたげな。
 身売りする覚悟はすっかり揺らいでしまったようで安堵した。
「さっきのアプリはアンインストールしなさい」
 コノエはチャンドラの前にある端末を指先でトンと叩く。チャンドラはしばし視線を泳がせたあと「はい」と答えてくれた。




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