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ミリメートル
2025-01-05 22:14:58
1785文字
Public
スケ荼
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スケ荼SS⚙️
なんか滅茶苦茶アナーキーな話をさせてしまったけどアナーキーな人たちだからしゃあないと思いました。
ヴィランが解き放たれた国は治安悪化の一途を辿っていた。
犯罪とは縁がなかったような民間人まで、火事場泥棒に手を染めてまで食い扶持をつなごうとしている。もう少し耐え忍んでいたらヒーローが到着して、救助なり支援なりしてくれたかもしれないのに。
間もなく、ヒーローが絶滅するような戦いが始まる。
荼毘は新調する戦闘服のパーツを集めるべく、スケプティックと連れ立って工場がある田舎まで降りてきていた。武力が必要なときは荼毘、技量が必要なときはスケプティックが活躍するという寸法だ。
スケプティックの権威が損なわれてさえいなければ、わざわざ足を運ばずとも取り寄せられたはずだった。しかし、荼毘はこれに文句を言うつもりはない。あまり無遠慮に触れると、自尊心が高い彼の機嫌を損ねる気がするし。
この田舎には、ヴィランが悠々と歩いているところを見かけて交戦を仕掛けてくるような、勇猛果敢な市民はいない。
荼毘の腹を立たせるのは、「自分のことをお前たちの仲間に入れてくれないか」と乞う生まれたての悪党どもだった。ヒーローを待つより、ヴィランに身を寄せた方が安全だと思っているのだろう。
荼毘たちにはチンピラの受け皿になるつもりは毛頭ない。勝手に野垂れ死ねと足蹴にすると、一人で死ぬのは辛いという。ひと思いに殺してやってくれないか、というのが、彼らの本当の気持ちというやつらしい。
荼毘はそう言われると、「楽にしてやるくらいならいいか」と、得意の炎を提供してやりたくなってしまう。人を燃やすことが上手い、冷たい色をした炎だ。つまらない悪党だって何十人と葬ってきた。
祈るように自らの身体を抱き締めて、目を閉じる寂しがり屋に、荼毘は両腕を翳す。お前は一体どんな地獄に落ちるんだろうね。炎を纏った腕が振り下ろされる前に、同行者のスケプティックが「よせ」と水を差す。
憐れな死に損ないは土壇場で恐怖心の方が勝ったのか、覚束ない足取りで逃げ去っていった。
「なんだよ、焼死体は見たくなかったか?」
「私に死体で喜ぶようなフェチがないことは確かだ。貴様は案外サービス精神豊富なところがあるから、端から見ていると冷や冷やさせられる。あまり力の安売りをするな」
「ハハ。お前にはさっきのやり取りが、人情物語にでも見えたってのか?」
「苦しみから解放させてくれるなら誰でもいい連中だ。ああいった手合いからはなるべく速やかに離れろ。貴様は、あんな凡骨どもにただ乗りされていいような器ではない」
スケプティックの辛辣な物言いに、荼毘は「一理ある」と思った。有象無象のために力を振るうことはない。そういうお鉢はヒーローに回すものだ。
「俺のこと、結構買ってくれてるんだな」
「そりゃあそうだ。貴様は私の勝ち馬なんだぞ」
拾われた身分でありながら、この態度だ。
荼毘は、男のこの豪胆さを特に気に入っていた。表舞台と裏社会、二つの世界で地位を得てきただけある。
到着した目当ての工場には人一人も残っておらず、スケプティックが簡単な鍵開けをしてしまえば、立ち入り歓迎持ち出し放題のがらくた屋さんになってしまった。
「なんだか、間抜けだな」
荼毘の嘲笑に、スケプティックは相槌を打たなかった。ノリの悪いやつ。この一人言には、「こんな光景は直に見飽きる」と呆れた声が返ってきた。
「
……
そうだな。ここで見かけたがらくたは、いずれ闇市なんかで再会出来るだろう。それを貴様は、いちいちドラマチックなことだと思うか?」
「思わない」
「そうだろう。それくらい、ありふれていることだ。間抜けでも素敵でもない。私たちには世の中がずっとそう見えていた」
「それは、さぞかし退屈だったろう。よく狂わずにいられたな」
「ハッ、私たちが狂ってないとでも思っているのか。お前らと同じだよ。とっくに正気じゃないんだ」
荼毘にはさっきまで、少なからず「付き合わせている」という悪気があった。しかし、まったく遠慮する必要がないらしい。
それなら『会社に損切りされたこと』を茶化しても構わないか、と、意気揚々とイジれば滅茶苦茶怒られて、帰り道は面白くない小言を延々聞かされる羽目になった。
あまりよく聞こえなくて、内容が分からない、ぶつぶつとした男の声を耳にすると、燈矢がたまに思い出す出来事だった。
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