花雲
2022-09-04 17:40:09
2705文字
Public 高銀
 

雨の理由

七夕の話。高杉と先生メイン。


 あれから、二十年近く経っただろうか。
語り尽くせぬほど、様々なことを経験した。不条理な目にいくつも遭った。
非道の限りを尽くしてやった。そうして俺は、テメェ勝手に生き抜いて、
テメェ勝手に死んだのだ。最後の最後まで、悔いなどひとつも残さずに。

 ──そう言い切れるはずだった。
そのために、畦道だろうが構わず選んできたというのに。
積年の誓いを果たせてもなお、人間って奴は満足できない生き物らしい。

 時間を、想いを、言葉を、ぬくもりを、
 もう少しだけと、諦められずに手を伸ばしてしまう。
 伸ばせる腕などもう無いというのに、その衝動だけが身体中を駆けずり回る。

 ──どうしたって、折り合いなんざつきそうにないぜ、先生。



 そんな恨み言が、どうやら届いてしまったらしい。
デキの悪い生徒のために、情けでもかけたってのか。
問いかけたところで、返事が返ってくるはずもなかった。
 ……あァ、わかってるよ。
 茶でも飲みながら見守っていてくれりゃあ、十分だ。
 その答えは、俺がこの手で証明してみせるから。

 ついでにもうひとつ、答えさせてもらおう。
ほら、例の七夕の問いさ。織姫と彦星の涙の理由 わけ
直接聞けはしなかったが、やっと解ったよ。

 ありゃァ きっと、“ 嬉し涙 ” ってやつだ。
ようやく再会できた喜びで、ふたり揃って泣いたんだろう。
拭う必要のねェ もんだから、雨を降らすほど存分に流せたのさ。

 共に泣いてやる甲斐性はねェが、両方この右目で拝んでわかったよ。
涙っつーのは、別れを惜しむときだけじゃなく
銀時 バカの減らず口が止んだときにも、溢れ出ちまうもんだってな。

 銀時 あいつをふぬけ面にさせんのは、俺ひとりだけでいい。
その虚勢も、情けねぇ面も、迷いも恥も全部ひっくるめて
俺が腕の中に隠してやる。こぼれ落ちる もんは拭ってやる。
もう二度と、置いていったりしねェ。
銀時 あいつが護りてェもんを、その手で護り抜けるように。
銀時が、万事屋であれるように。
その背中を追い続けると、

約束するよ、先生。


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