みたむら
2024-12-18 15:03:22
14727文字
Public 8/17「夏インテ」
 

「誕生日をもう一度」サンプル

呪術廻戦・五条×女夢主本2冊目です。



* * * 中略 * * *

 そして二回目の誕生日のターンが来る。硝子ちゃんは本当の十一月七日に。もちろん夏油君の後に本当の誕生日である硝子ちゃんにプレゼントを渡した。彼女も喜んでくれた。
 五条君は本当の十二月七日――当日に。
 十二月はさすがに寒いし、たまに雪が降ることもあった。三人の誕生日は面白くて、秋か冬の誕生日だった。
 今年の冬はすごく寒くて、五条君もさみー、といつも凍えているのを見て、私はマフラーと手袋を送ることにした。
 誕生日の日にたまたま共有スペースで任務帰りだったのか夜食を食べようとしていた五条君の姿を見かける。

「お帰りなさい」
「おー、お前か。ただいま」

 夏油君に教えてもらったらしいカップラーメンをじーっと見ている。
 このまま会えなかったらどうしようかなと思って、密かに男子寮に潜って彼の部屋のドアに置いて行こうかな、なんて計画を立てていたのでその手間が省けてよかった。
 私は彼の向かい側の席に座り、はい、とプレゼント箱を渡す。

「なに?」
「誕生日おめでとう」
……ああ、そういや今日は七日か」

 多忙過ぎて日にちも適当に見てたわ、と改めて認識する。そしてニヤニヤと私を見る。
「やーっと俺の誕生日を覚えてくれたかー」
「うん? 覚えてるよ、今日は二回目・・・の誕生日」
……その、何なの? 一回目とか二回目とか」
「気にしないで、私が勝手にやってる事だから。ああ、何か見返りを期待してるんだろって思ってるなら気にしなくていいから。したくてしてるだけだから」

 と言うけれど、彼は納得出来ないらしく、今回は彼の望んだ通りの誕生日なのに受け取ってくれない。

「傑に聞いてみても本人に聞いてみなって教えてくれねぇし」
「え、夏油君が?」

 いつも二人はじゃれ合っていることが多い。ただしゃべっているのをあまり見かけなかったので、もしかしたら男子寮内とかでは割と二人で雑談することがあるのかもしれない。それはそれとして、なぜ私のことを話題にするんだろう。

「何か前ももらったし、またもらうのもさ……

 そう言ってカップラーメンが出来たのを分かり蓋を開けて混ぜる。伸びてるわー、と少しがっかりしてるようだ。

「私は沢山もらってるよ。ちゃんと任務から帰ってきてくれてることもそうだし、私の代わりに呪霊を祓ってくれてるし、こうやって私と話してくれてるから。それで十分もらってるよ」
「いや、けど……
「これは、普段頑張ってる君にプレゼント。じゃないと、せっかく用意したこの子・・・が可哀想なんだけどな」

 そう言うと五条君は渋々受け取ってくれる。用事は済んだので、部屋に戻ろうとすると彼が呼んだ。

「ありがと……けど、どういう事なのか教えろよ」
……何だろうね?」

 私は、これ以上一緒に居られなくなって、そんな謎を投げかけて逃げた。
 だんだん彼を好きな気持ちが膨らんでいって、普段の私を装っているのがばれてしまいそうだったからだ。
 私は完全に五条君に恋をしてしまっていた。二人のことも好きだけど、彼らとは違う好きを、彼に対して抱いている。
 背後から私の名前を呼ぶけど、私は振り返らず女子寮へと向かう。追いかけてくる様子はなく、私は部屋まで必死に向かう。
 部屋に入ると、呼吸を整える。とりあえず、五条君への二回目の誕生日は成功、だと思う。前回と違って、マフラーと手袋で喜んでくれるかは分からないけど。
 けど次の日は珍しくみんなで高専に向かうことになった。五条君は私があげたマフラーと手袋をしていた。

「悟がマフラーと手袋をしてるなんて珍しいね」
「うっせー、こんな寒いの耐えられるかよ」
……ふーん、二回目・・・の誕生日プレゼントかな?」
……さぁね」
……やったじゃん」
……うん」

 硝子ちゃんから小声でにっこり微笑んでいると、私もつられて笑みを零す。
 最低限でも、登校に使おうと身につけてくれたことが最大の私の喜びだった。
 そして年は明けて、二月三日――この日も二回目の夏油君の誕生日を祝ってプレゼントを贈った。もちろん彼は喜んでくれた。
 こうして、私たちの一年目が過ぎたのだった。

 それは高二でも続いていて、三人は私からのプレゼントを受け取ってくれる。ただし、少し違っていたのは夏油君と硝子ちゃんは私の誕生日を聞いてくれたのだった。
 五条君は興味がないのか、遠くの景色を眺めていた。

(そう、私が勝手にやってたことだから、五条君に私の誕生日を祝ってもらおうなんて夢のまた夢)

 普通の人は五条君のような反応が普通なんだ。私は初めて他人である夏油君と硝子ちゃんに誕生日を告げたのだった。
 高二でも変わらず、一回目の誕生日にプレゼントを渡す。
 ただ、少しだけ変わったことがあった。

「一回目の誕生日、おめでとう」
「あ……ありがと」

 呼ばれた通り、五条君はプレゼントを受け取ってくれる。けれど、いつもの様子とは違っていた。どこか緊張しているような、ソワソワしているような。

「その……さ、お前は何か欲しいものある?」
「?」
「俺ばっかもらったら不公平だろ? けど、お前の欲しい物とか考えても思い浮かばないから直接聞いた方がいいと思って」

 かすかに見えていた蒼い目を隠すように、サングラスをくいっとあげて言う。しかし、かすかに頬が赤くなっているような気がした。
 私の欲しいもの? そういえば考えたことがなかった。
 というのも、五条君や夏油君が遠征で任務に出かけてお土産を買ってきてくれる。それも嬉しいし、たまに一緒に帰る時、寄り道した時に時々奢ってもらうこともある。何気ない会話をしてくれることも嬉しいし、困っていたら助けてもらったりしているし、十分もらっていた。
 三人がクラスメイトでつまらない学校生活が楽しくなった。中学までの生活よりも、今がとても充実している。

「十分もらってるよ。こうやって受け取ってくれて、お礼も言ってくれるし」
「いや、これは当たり前だろ? もっと何かないの? 欲しい服とか鞄とか、女ってそういうの好きなんだろ?」

 ふと中学校の女子を思い出す。確かにファッションに凝っている子とか多かったような気がする。あと好きな人との話題とか。付き合ったとか別れたとか。
 しかし私はそういったこととは無縁で生きてきた。

「うーん、今持ってる服はまだ着られるし、鞄もまだ使えるし……
「お前、一応呪術師の家系の人間だろ? それなりに欲くらいはあるんじゃねーの?」
「欲かぁ。五条家とはほど遠い小さな家系だし、非術師の一般庶民の生活とそう変わらないと思うけど」
「じゃあ、今度どこか行こうぜ。何か気になった物があったらそれをくれてやる」
「えっ?!」

 五条君が何か買ってくれる? そんな贅沢をもらってもいいんだろうか。むしろただブラブラ歩くだけでも十分贅沢なくらいなんだけど!
 そういえば休日に出かけることもあまりなかったな。区内はいつも人混みで酔いそうで急用じゃなければ行かないようにしている。

「じゃ、今度の休みにな」
「う、うん。楽しみだな」
「ま、俺に全部任せとけ」
「よろしく、お願いします」
「お、おう」

 あまり外に出かけることもない私に、五条君がおすすめの場所とか連れて行ってくれるらしく、二人で出かける約束をした。

(好きな人とお出かけ――まるで少女漫画みたい)

 任務の時間が来たのか、プレゼントを持って立ち去った五条君を見送りつつ、緊張が解いたように顔がだんだん熱くなっていくのが分かる。
 注意深く見ておかないと、変な顔をしているかもしれない。
 私はどうやら顔に出るタイプらしく、三人から時々思ってることを見事に当てられたことがある。特に嬉しい時が一番分かりやすいようだ。多分、今の顔はその嬉しい時の顔になってると思う。

……いいお出かけ日和になりますように」

 数日後のことを思いながら神様にお願いをした。



*製本版を購入の上、お楽しみください。*