urifuji
2021-04-17 11:35:53
27916文字
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ワクワク!バレンタイン 当日 現パロ

バレンタイン話です。ツイッターに乗せていた内容の再掲。女主人公視点。御神女主前提のオールキャラです。私の手癖により藍ちゃんは誰より心が強い女になってます。苦手に思う人はバックプリーズ。
御神槌さんは心配してますが御屋形様は女主人公を妹のようにおもっているだけで恋心はありません。

※簡単な現パロ設定
 ✿緋勇鈴菜:女主人公。双子の姉。中学時代柳生に乱暴された経緯がある。いとこの龍麻(11歳)と預かり子の壬生紅葉(11歳)を大切に育てている。外法帖時代は龍斗の体に魂だけ入り存在していたが、富士での頂上決戦で龍斗を助けるために消滅した。
 ✿緋勇龍斗:男主人公。双子の弟。龍麻と紅葉を姉と共に育てている。この話ではあまり出ない。

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 さて今月14日はバレンタイン。世界中で愛しの人に愛を伝える日である。
 普段は恥ずかしくて言えない奥ゆかしい子も、いつも押して押して押しまくる積極的な子も、平等に愛の告白が出来るためチャンスがある。社会に認められる日があるなんて、なんて素晴らしい!まあ、人によってはバレンタイン、滅せよッ!!と呪いをかけている人もいるだろうが。
 ありったけの勇気を出して、彼(または彼女)に告白すれば思いを受け取ってくれ、もしかしたら付き合るかもしれないと淡い期待を抱き、必死で頑張る女性一同(と一部男子)。人によっては多くのライバルを蹴落とし、その座を射止めなければならない勝負の日、いや決戦の日だ。前世の記憶で行くと柳生との最終決戦に等しいとも言えるだろう。
 いやいや、言えない。そこまで重くない。

 ともかく、女性にとってとても大切な日なのだ。
 彼の胃や心をゲットするためのチョコレート選びやお菓子作りはとても重要で、気合が入るのは仕方がない。この間も小鈴ちゃんに頼まれて、急遽元龍泉組メンバーの女性陣と一緒に楽しくチョコレート菓子作りを行ったし。……何故か私、緋勇鈴菜が講師となってだけど。
 調理師免許を取得している私は、多少のお菓子づくりの心得はある。だが、所詮人並み程度であり、パティシエの方々とは比べ物にならない。けれどそれでもいいから教えてほしい、と必死な小鈴ちゃんを不思議に思い当日を迎えてみると、……実際にその現場をみて納得した。

「なんでチョコレートを直火にしたんですか!チョコレートの基本はテンパリングだって先ほど伝えたばかりですよ!温度計を使用して行う殆ど、チョコレートは温度命なんですから!」
「な、なんだと!?直接鍋に入れては駄目なのかッ!こっちのほうが早いだろう!」
「早ければいいってものじゃありません!ああっ、焦げる、焦げますよ!ピセルさんの方もなんかボコボコ言……?え、チョコ?これチョコですか??動いてませんか?え?」 
「うん?お菓子づくりはこういうものではないのデスカ?」
「ええええ……

 目の前の鍋に暗黒色のチョコ?がうにょうにょ動いている。茶色やこげ茶といった色ではない、漆黒である。
 ……チョコって鍋の中で動くものでしたっけ……?と思いながら鍋の中にあるダークマターを覗き込むと、ぎょろりとこちらを見ている目と合ってしまった。……目と、合ってしまった?!
 悲鳴を上げ、チョコ(仮)が入っている鍋に秘拳・玄武を連打で打ち込み、チョコ(擬態)を撃退すると周りからは拍手が起こる。はあはあと肩で息をつき、たった数十分で一日分の疲労感が襲った。

———……私は、お菓子作りに来たはずですが、霊場でレベル上げに来たんでしたっけ……

 思わずグー〇ル先生にお菓子作りとは?とググってしまいそうだった。
 小鈴ちゃんが必死で私に頼み込んできた理由が分かる。美冬ちゃんと(特に)ピセルちゃんの面倒見てほしいって事か……、と理解せざるえない。しかしこっちをみて苦笑している小鈴ちゃんに思わず恨みがましく見つめてしまうのは許して欲しい。

「ごめんごめん、すーちゃん。頑張って対処していたんだけど毎回あんな感じのものが生成されるから、ボクも藍も手に負えなくてさ。頑張って戦ってたんだけど、場所も時間もなくなってきちゃったし」

 確かに毎回あんなものが生成されると大変な気持ちは分かる。戦闘騒ぎになるから下手な場所で出来ないのも分かる(実際に九角邸はお菓子作り禁止になったらしい)。

「それは分かりますが、私の店を霊場にしないでください」

 せめて事前に情報が欲しい。
 報・連・相は大事。連携とても大切。心の底から切実な願いだった。
 片手を顔の前で下げ、ごめんね~と困った様に伝える小鈴ちゃんだったが、動乱の騒ぎの私達とは違いこちらは順調に準備を進めていた。下の兄妹が多い彼女は家事を手伝う事も多いのだろう。バターと砂糖を混ぜ終わり、小麦粉を振るいにかける姿は流石に手慣れている。隣で楽しそうに笑っている藍ちゃんも小鈴ちゃんと同じ材料を揃えており、どうやら同じものを作る様子だ。

「何を作るのですか?」
「チョコレートケーキにしようと思って……
「チョコレートケーキ!いいですね。たっちゃんも大好きなんですよ」

 弟の緋勇龍麻はそこまで甘いものは好きではないが、それでもチョコレートは別格らしい。この時期は有名チョコレートの限定品が手に入る為、私にお使いを頼むことがある位である。
 少し緊張したように話していた藍ちゃんであったが、私の言葉を聞くと安心した様にふふ……と笑みがこぼれた。
「でも材料が多いですね。一人分?」
「いいえ。別でお世話になっている人にも何か渡そうと思っているの。それに兄にも渡そうと思ってるし」
「あ〜若様にも!それは喜びますね!」

 兄である天戒様は妹をそれはそれは大事に思っており、少しシスコン気味じゃないかと疑いを持たれるほど過保護である。本日もどこに行くのか心配だと話していた為、私の処だと伝えると明らかにほっとしていたため思わず苦笑してしまった。その後何故か少しそわそわしていたのが気になるけれど。
 でも大事な妹の手作りお菓子をもらえるなんて幸せ者だな~、と甘党な彼が楽しみにしている様子が目に浮かぶようで思わず微笑んだ。笑っていると藍ちゃんからにっこりとほほ笑まれる。

「鈴菜も兄に作るわよね?」
「え?あ〜、でも桔梗姉さまが渡されると思いますし、さすがに次期社長候補の人に手作りのお菓子を渡すのはちょっと……。なので既製品のほうにしようかと思って」

 断定しているような口調に少し戸惑うが、おいしいものを日頃から食べている人に手作りチョコを渡す勇気はない。甘党は今も変わらない為、高級チョコレートなんて食べ慣れているだろうし。特に彼は九角カンパニーを取り仕切る次期社長であり、手作りなんて何が入っているか分からないものを周りが食べさせるわけがないと思う(本人は贈り物を無碍にすることないだろうが)。
 そう思い彼女に伝えるも、

「鈴菜も兄に作るわよね?」
「え?」
「あ、藍?」
「鈴菜も兄に作るわよね?」
「「……」」
「鈴菜も兄につくるわよね?」

 え、エンドレスリピート……⁉これ、強制イベント前の会話だ!昔のゲームで見た事がある!
 思わず現実逃避の様な事を考えてしまうが、それでも藍ちゃんからの言いようのない圧から逃れられることが出来ず、背中に汗が伝う。

「鈴菜?」

 にっこり笑う藍ちゃん。

「Yes, ma’am!不肖ではありますがこの鈴菜、喜んで作らさせていただきます!」
「良かった。兄もとても喜ぶわ」

 何とも言えない圧に思わず敬礼をしてしまう。ニコニコと笑う藍ちゃんをみると、流石九角カンパニーを取り仕切る社長の娘、有無を言わさない手腕がここに受け継がれている……と心底感心した。
 ……いやしかし、今この場所で発揮しなくても。
 心の中で涙しながら自分もテパリングするべくお湯を再沸騰させる。チョコレートを刻みながら家から持ってきた洋酒のオレンジ漬けとピスタチオも刻んで、まとめて横に。温室に置いていたバターのを切り、グラニュー糖、小麦粉の分量を量った後でバターをクリーム状に混ぜる。着々と準備を進めているとこちらを見ていた涼里ちゃんと目が合った。

「どうしました?」
「いえあの……。とても手際がいいので」
「ああ、ブラウニーは家でもよく作るんです。たっくんもたっちゃんも好きで、よく作ってくれっていわれますしね。ただ今回チョコレートはミルクではなくビターですけど」

 家でもよくお菓子作りは行うが、その中でも人気が高いお菓子だ。家でブラウニーを作っていると甘いにおいが充満し家に入った瞬間から分かる為、小学校から帰った龍麻と紅葉が廊下を走って寄ってくるのがとても可愛い。それが楽しみでいつも作っている。

「そうなんですね」
「今回は大人の人に渡す為甘さ控えめ、お酒も楽しみ程度にね」

 そう笑って伝えると、遠くにいた葛乃さんから鋭い突っ込みが入った。

「何だい何だい、あの神父様に渡すのかい?」
「えっ‼‼‼」

 思いもよらない所から指摘され、ぼぼぼっと頬が熱くなるのを感じた。その様子に周りの人たちが感心したりやっぱりね~と頷いていたりする。
 え、え、やっぱりってなんですか?

「えーーっそうなの、すーちゃん!そういうことは早くいってよ‼ボク応援するよっ‼」

 女性が恋愛話が好きなのは古今東西変わらず。私の反応に次々と仲間から声を掛けられた。

「ぜ、全然知らなかった……
「そうなの?ミフユは知らなかった?」
……もしかして、前世からずっと?」
「え~、うそうそ!そうなの、すーちゃん!すっごい一途‼」
「あ、目が金色に染まっていますね。どうやら本当の様です」
「あ、だからお酒!神父様……いや御神槌さんお酒好きみたいですしね」
「そうなんだべ?」
「はい、随分強いみたいでわくわくって言ってました。お酒強いと楽しそうですね」
……もしかしてザルとかワクって話かい?」
「あ、そうかもです」

 怒涛のような会話が続き、みんなきゃーきゃー楽しそうだ。
 もちろん私は楽しんでいる余裕なんてない。思わず強く反論する。

「ち、違います!いや違わなくないですが、これは違います!たっちゃんのです‼果物が入ったチョコが好きなんですから!」
「え、渡さないの?」

 勿体ないとブーイングと共に明らかに意気消沈する仲間たち。

「い、いやあの……わ、渡しますけどぉ……

 戸惑いながら伝えると、何だ結局渡すんじゃないか、と全員にやにや、にこにこ、にまにまと其々楽しそうな微笑ましいものを見たような顔をしている。
 駄目だ、全身から熱が引かない。恥ずかしすぎる。
 これ以上揶揄われないように話題を無理やり変えてみた。

「ああ、もう私の事はいいですから!皆さん、全然作業進んでいないですよ!このままじゃ時間も少なくなりますし、続きを始めましょう!」

 講師のように伝えるとはーい、と其々作業を開始した。熱が引かないので手でパタパタ顔を仰いでいると、しずしずとこちらに来るほのかちゃんから質問の声が上がった。手にはメモ帳が握られている。

「あの、今作っているチョコレートは御主人様に渡すとの事ですが……、特にどんな果物がお好きなんですか?」
……ほのかちゃん、もしかしてたっちゃんにくれるの?」

 私がそう言った途端、先ほどのほのぼのした空気はいずこかに払拭され、ぴりついた空気に変化した。

 ……なにか変な事言ったっけ

 何を失言したのか分からないが、ほのかちゃんの後ろの方から数人の刺すような視線が飛んでくる。おどろおどろしい雰囲気と共にじっとこちらを凝視しているため正直めちゃめちゃ怖い。

「はいっ。日頃お世話になっているので、あの、喜んで頂けたらいいなって……

 後ろを全く気にする素振りなく、頬を染めて話すほのかちゃんは天使みたいに可愛いが、それが霞むぐらい後ろの圧迫感が酷い。なるべくそちらは視界に入らないように、ちょこちょこと姿勢を変え会話を続ける。

「お世話になっているのはこちらの方です、いつもありがとう。姉としてとても嬉しいです。そうですね……、一番好きな果物は桃なんですが、チョコには合わないので。でも果物なら割となんでも食べますよ」
「そうなんですね!ありがとうございます!」

 何やらメモ帳に記入している様で、ふっと覗き込むと誰が何を好きなのか書いてある。
 一番メモ書きされているのはうちの弟か……
 ガッツリ見ているとその視線に気づいたほのかちゃんはきゃあっと小さな悲鳴をあげた。メモを隠すほのかちゃんにごめんね、と小さく謝し、好奇心で見てしまったのを反省する。
 しかし、まめですね~……。チョコ、色々な人に配るのかなあ、これは誤解する人多いだろうなあと思いつつ、目の前の彼女を見つめた。

「?」
「ううん、何でもないです。手作りだけ避けてもらえればあの子は何でも喜びますよ。それこそ5円チョコでも大丈夫なので全然安いものでも……

 なるべくコストを掛けなくてもいいようにと伝えようとしたら、後ろの方からがしゃーーーんっ!と何かが落ちた音がした。ばっと視線を向けると藍ちゃんが元々の白い顔をさらに白くさせ、ボールを落とししゃがんでいる。

「え、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だよすーちゃん。ちょっと衝撃的な言葉を聞いただけで……

 ね、藍と話しかける小鈴ちゃんも表情が随分暗い。あの一瞬の間で彼女らに何があったのだろうか?
 前を向くと同じく顔色を悪くさせ、戸惑っている顔のほのかちゃんがいた。

「ほのかちゃんもどうしたの?本当に大丈夫?」
「大丈夫です……。あの、鈴菜様。御主人様、手作りが苦手なんですか?」
「はい、苦手っていうか、もう嫌悪に近いですね。食べると吐いてしまうため、余程の事がない限り受け取らないと思います。実際に何度も断っている姿見ていますし」
「あのでも、こちらは……?」

 私が作っているオレンジブラウニーの事をさしているのだろう。当然の疑問だ。

「ああ。家族が作ったものは大丈夫です。”他人が自分の為に作った食べ物”が駄目なんですよ。昔からなにかと色々な人にお菓子を貰っていたのですが、中学の頃に手作りでもらった食べ物がトラウマで、それから体が受け付けなくなっちゃったんです」

 既製品やお店の食べ物なんかは大丈夫なんですけどねと笑顔で伝えるも、周りは通夜の様に暗い。「トラウマになるほどのお菓子ってなんだべ……?」「しっ!聞かないほうがいいやつだよこれは」とひそひと周りから戸惑いの声が上がる。

「そ、そうなんですね……。ありがとうございました」

 ふらふらとその場から立ち去るほのかちゃんに首を傾げた後、随分雰囲気が暗くなったお菓子作りは再開された。その後もUMAが現れるたび戦闘態勢を取っていたお菓子作りだったが、各々完成させた時には随分明るい雰囲気に戻っていた。完成後は落ち着いてお話しできるかと思っていたが、皆忙しいのかゆっくりする事なく帰宅しその日は終わった。

 



 さて、バレンタイン当日。明るい戦争の始まりだ。
 それは私も例外ではなく、バレンタインと言う名の紛争地に向けて前日から気合十分、気力十分!リビングで仲間の面々に渡すチョコの最終確認していると弟が「はよぉふぁ〜あ」とひょっこり現れる。
 寝起きでまだ眠そうな龍斗とは対照的にふんすっ!と鼻息荒く気合を入れている私をみて、弟は全て理解した様だった。思わずといったように苦笑している。

「そういえば今日だったな。撃沈しても胸ぐらいは貸してやるから安心して逝ってこい」
「不吉な漢字を使わないでください!」
「大丈夫だよ。あいつは優しいからきっときっぱり振ってくれるさ。真綿で優しく首を絞めるような真似はしない……しないといいな……いや、するかもしれん……
「もうっ!振られる前提で話すのやめてくださいってばぁ!」

 望みは薄いと思っているが、それでも期待してしまうのは人間の性だろう。若干半泣きの入った抗議に「嘘だって」と龍斗は優しく頭を叩いた。

「まあ、俺は正直あんまり心配してねぇけどな。ほどほどの気合で行けよ、じゃないと夜までもたんぞ。あ、それよりもう時間いいのか?今日は店の時間を短くすると言っていたが、忙しくなるだろうし」

 不吉なことをいったのは私の入れすぎた気合を抜こうとしたと分かっているため、未だに頭をぽんぽんと乗せる龍斗に素直にお礼を言う。

「ありがとう。たっちゃんの分は冷蔵庫に入っているからね。上の段にあるものよ。カップケーキはたっくんと紅葉ちゃんの分だけど、もしあったら伝えてくれる?」
「お~、毎年サンキュな」

 お礼を言いながら台所の方に行き、インスタントコーヒーにお湯を注いでいるか、コーヒーの香ばしい匂いが部屋に漂う。
 毎年この日は仕事場に行くのがめんどいという理由で有休をとっている龍斗は、黒のパーカーにジーンズといったラフな格好だ。コーヒーを啜りながら、玄関まで見送ってくれる弟は優しい。

「今日は皆寄るかもしれないって言ってから。たっちゃんも、もらえるといいね」
……お~」

 靴を履いてダンボールにいれた荷物を抱えて家を出る前にそう伝えた。気がないふりをしているが、本当はそわそわ落ち着きないのが伝わってくるためこっそり忍び笑いをする。そうして本格的に家を出ようとすると、「あ、鈴菜!」と急に声を掛けられた。

「これっっっっっぽっちも無いと思うがマジで振られるようなことがあったらすぐに言え、すぐに」
……確実に何かをするだろうから、絶対に言いません」