urifuji
2021-04-09 10:22:23
25395文字
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おかま騒動

誤解されまくった龍斗の怒りに巻き込まれる不運な仲間達。オールキャラです。息をするように双子主人公います。大体陰6話ぐらいの時の話。





おまけ

「そういえば、龍斗君はどうして蝋燭を持っていたんだい?」

 大広間での夕餉が終わり、休憩がてがら他愛もない会話を楽しんでいる時にふと思いついた様子の奈涸から質問が上がった。どうやらあまりにも印象的で登場時から気になっていた為らしい。
 胡坐をかいて腹を摩っていた龍斗は、奈落の質問あん?と顔を上げた。彼の質問に天戒に酌をしていた桔梗もそういえばそうだったねと頷いている。

「挨拶の時に持っていたやつだろう?確かに随分大きな蝋燭だったしね。何を使う気だったんだい?」
「ああ、あれの事か。あれはもしもの時に持ってきたもんだったんだか、……これだろ?」

 彼はよっこいしょとおっさん臭い声を出し、部屋の隅に置いていた蝋燭を取りに行った。そして蝋燭を手に持ち、彼らに向かって掲げる。

「そう、それだ」

 奈涸は龍斗の持っている蝋燭をみて頷いたが、向雲はその様子をみて頭に手を置き話す。

「俺はてっきり丹田呼吸が出来ることを証明したかったのと思ったが
『はい、解説の鈴菜です!丹田呼吸法とは気を練る時に行う呼吸法の一種で、合気道や古武術を嗜む人が主に行う呼吸法です。流派によってはこの呼吸を上手く行うことが出来れば自律神経は安定され、病気になりにくいと言われていますね。今では民謡や歌を歌う時に使う人もいるそうです。ちなみに私たちは常にこの呼吸をしているので氣を取り扱い事ができていますよ』

 龍斗の座っていた席の隣で同じく律義に座っていた鈴菜は、向雲のつぶやきにはいっと楽しそうに挙手し勝手に解説を始めた。そんな彼女の姿を半目でみつめた後、龍斗は顔を横に振る。

……何かどこからともなく解説が聞こえたような……?」
「暇を持て余した龍の戯れだ、気にするな」
……あの子がなにかやってんだね?」
「楽しそうにな。は~、あの顔をお前らに見せてやりたいわ」

 口調は相変わらずぶっきら棒に話すが、その内容は実は優しさに溢れており彼女を本当に大切に思っている事が伝わってくる。その証拠に、彼がいた場所に目を向けるその目は優しさと哀しさを秘めていた
 。彼の見つめる、龍斗がいた今は無いもない空間に、大広間で食事をとっていた仲間たちは何となしに目を向ける。楽しそうに会話を聞いていた鈴菜は仲間たちの思わぬ視線に驚き、えっ、えっ、と所在なさげに周りを見渡した。

『ど、どうしたんですか、皆さん。私の周りになにかありますか?たっちゃん、何かこぼしていったの?』
「なんでだよ。おい、鈴菜こっち来い」
『え、あ、うん』

 長い事人に姿を見られなかった鈴菜人の視線が自分に向いているとは思ってもおらず戸惑っているが、龍斗はそんな彼女に手招きこっちに呼び寄せた。龍斗は鈴菜が隣にきたことを確認してから、話を続ける。

「今回は有難い事に鈴菜の存在を疑う奴がいなかったが、たまにいるんだよなあ。鈴菜は本当におらず、俺が作り出した妄想だって言い張る奴が。……まあ、そう思いたい気持ちは分かるけどよ。今回夕方にみんなを呼んだのもこっちの方が分かりやすいんじゃないかと思ってな。いいか、鈴菜」
『うん、大丈夫』

 どこかをみて頷く龍斗をみていた天戒は、酌を続ける桔梗を手で制し龍斗の方を向く。何かをやろうとしている彼らに片眉を上げ、訝し気に見つめた。

「一体何をやるつもりだ?」
「いいから見てろって、今回は危ない事はしないからさ。悪いが部屋をともしている火を全部消してくれ」
「は、はいっ!」

 食事を片づけを続けている女中の一人に声を掛け、部屋の至るところに置かれている燭台の火を消してもらう。一つずつ消す度に部屋は暗闇にのまれていき、全てを消し終わった時には隣にいるものの顔さえ判別できないほど暗闇に包まれた。唯一の光は障子から透けている月の光のみである。
 少しの間身じろぎをする音や食器をぶつけた甲高い音が暗闇に響いたが、龍斗の「よっと」という明るい掛け声と共に部屋がぼんやり明るくなる。龍斗が巫炎で持っている蝋燭に火を灯したようだった。

「お~……、思ったより暗いが、これぐらいがちょうどいいか」

 ぼんやりと照らされているが、それでも龍斗の周辺以外は未だ暗闇で覆われている。蝋燭の光も相まって、龍斗の明るい声は闇の中で分かりやすく目立っていた。まるで、今の村の状況をそのまま映し出したように。

「まあ、今からやるものは余興見たいもんだ。気楽に見てくれ。お前は気合入れすぎんじゃねえぞ、ってはいはい」

 そう言って苦笑した龍斗は蝋燭の火をもう一度消した。再び周囲が暗闇で覆われる。
 少しの緊張と怪訝が混じった言えない静寂が周囲に流れ始めた時、小豆大程の光の塊がぽっ……と現れた。
 小さな光は周囲をゆっくり円を描くように動き始めると、その光に追時するように一閃を描く。そして光はやがて線となり、糸のように細長い線を周囲に浮遊させた。その光の束に感嘆の息を吐く仲間達。
 そしてパッと線が消えたかと思うと再度小さな光が現れ、何かを描き始めた。不定期に動くその光は次第に文字を成していく。その文字を読み取ろうと、其々真剣に光を見つめる。

……何だ?は、じ、め、ま、し、て……はじめまして?」
「まだ続きがあるみたいだぞ。何々……ひ、ゆうすず、な、で、す……なるほど挨拶か」
「ああ、そうだ。これなら鈴菜を俺の妄想の産物だと言わせないだろう?おいこら、どや顔するな」

 未だに楽し気にしている彼らは、何とか彼女の存在を理解してもらうと考えて出した結果がこれなんだろう。しかし、しかしだ。天戒は未だ続く彼らのやり取りを目で追い、静かに考える。そんな彼に龍斗は気づき声をかけた。

「どうした、天戒」
「いや……。確かにお前たちの言いたい事は分かるし感心するが、これは事前に言っておかないと相手を怖がらせるんじゃないのか?」
……マジで?……確かに言葉は出ない輩は何人かいたような……。あれ怖がってたのか?」
「火の玉みたいに不可思議な現象だしな……。ん?」

 やり取りを聞いただろう彼女は、再度何かを書きはじめた。気のせいか先ほどより急いで光の文字を書いてる様子が伺える。 

……こわ、く、な、い、で、す、よ!。…………いや、自分で言っては駄目だろう」
「!?、って、自覚なかったのかい?」
「ぜ、ん、ぜ、ん……。龍斗君、こういう事は君が伝えなければ駄目なんじゃないか?」
「悪ぃな、俺も自覚なかったわ」
……お可哀そうに……

 多分今までこういう事を披露しては、他人を無意識で驚かせていたのだろう。ため息をついた御神槌の言葉は見てしまった周囲に対しても、披露していた本人に対しても両方に向けられた言葉である。

「ま、まあいいじゃねえか。とりあえず、俺と鈴菜両方いるからよろしくな。これ以上俺をおかま扱いするんじゃねえぞ」
「まあ、理由が分かれば大丈夫だと思うけど……

 余程龍斗にとって女扱いは嫌だったようで、仲間に対し再三釘を刺してきた。仲間達的にもあの様な恐怖体験は金輪際まっぴらごめんであり、これ以上死に急ぎたくはない。
 そんな様子をみていた龍斗は一瞬目を閉じ、再び目を開けた際にはこちらを気遣う眼差しを寄せる。今、鈴菜に切り替わったようだ。

「ごめんなさい。たっちゃん小さい頃女の子みたいに本当に可愛くて、村にいた何人かの男の人に求婚されたことが凄く傷……っておいっ‼余分な事は言わないでもいいっ‼」

 ああ。
 確かに龍斗は今では筋肉がしっかりついておりどこをどう見ても男の風貌だが、髪を上げればとても綺麗な顔をしていた。筋肉がしっかりついていなければ、今でも衆道のものに声をかかられそうだし。
 ……昔であれば、もっと美少女であったと容易に想像でき、生温かい顔を向ける仲間達。

……お前も、大変だったんだなあ」

 龍斗の肩をポンと叩く向雲。

……頼むから同情するな……。余計傷が広がる気がするじゃねえか