urifuji
2021-04-08 22:59:59
14453文字
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龍も鳴かずば撃たれまい

陽→陰前提の陰6話ぐらいの話。
オールキャラ。見えないのに存在感のある女主人公




 ドンドンドンッ‼

「おい、御神槌!いねえのかっ?いるなら今すぐ開けろっ‼早くっ‼」

 奥継は村に着いてなお速度を緩めることなくそのまま駆けていく。村の何人かが薄暗い中彼に気づいたが、あまりの必死な形相に声をかけることが出来ず唖然と彼の行く末を見送った。
 奥継は迷うことなく礼拝堂に向かい今の思いの丈を発散するように激しく戸を叩くため、戸は今にも外れんばかりに大きく揺れている。

「風祭さん!今すぐ開けますから、そんなに強く叩かないでくださいっ!」

 あまりの煩さと近所迷惑な事もあり御神槌は慌てて戸を開けると、奥継はその隙間に入り込み割り込み、無理やり礼拝堂に入り込んだ。礼拝堂に入った後は勝手に戸を閉めつっかえ棒をして戸を開けなくしてからは、戸に耳を当て何かを伺っている。全力で走った様子の奥継は今なお肩で息をしており、時折額から流れる汗をぬぐっていた。

「どうしました風祭さん、そんなに血相を抱えて。……なにか事件でも?」

 扉を壊さんばかりの勢いに小言を言おうとしていた御神槌であったが、奥継の尋常ではない様子に眉間に皺を寄せ、今なお緊張感の解けない彼に思わず尋ねる。

「ああ、事件も事件だ!以前お前が言っていたあれがでた!どう対処すりゃいい!」
「あれ……、とは?」
「あれは、あれだよ!お前が以前ガキ共に読み聞かせをしていた時に出てきた死神ってやつ‼どうしたら倒せるんだ‼」

 戸の方から体を離しこちらに詰め寄る彼は、子供へ読み聞かせていた話をどこかで聞いていたらしい。
 まあ青空の下で行っているため誰が聞いてもいいし、話を知っていてもおかしくはないのだが、彼の放つ単語が問題だった。

「えっ……。死神、ですか?」
「ああ、そうだ!あいつが俺に向かって鎌を振ってきやがった‼」

 思わず尋ねてしまったが質問を元気に肯定する風祭を訝しげに見つめた後、御神槌はため息をつきたい気持ちを抑えもう一度同じ質問を行う。

「それは、本当に死神ですか?」
「あん?鎌をもって宙に浮いていれば死神だって言ってたじゃねえか」

 彼の言葉でさらに眉間に深く皺が寄った御神槌は、その皺を自分で伸ばす様に揉み、俯きながら答えた。

「いや、あの、死神は鎌を振った瞬間からすでに魂を刈られますので、それが本当に死神なら風祭さんはすでに死んでいるはずですが……

 とても言いずらそうに奥継に伝えると、彼は落雷に打たれたかのように驚愕の表情を浮かべその場でしばらく固まった。
 御神槌が数回呼吸をした位からようやく動き出した彼は、数歩後ろに下がった拍子に踵を戸にぶつけている。夜になり少し静まり返っている空間ではその音でも大きく響いたが、それを気にする余裕は彼にはない。
 わなわな震わせている自分の手を見ながら、奥継は呟く。

「お、俺は、気づかないうちに……すでに死んでいた……?」
「いやいや、流石に無理があります」

 茫然としている奥継に向かい、御神槌は冷静に突っ込んだ。

「何かと見間違えたんじゃないですか?」
「いや、鎌と籠が浮いて追っかけてきたんだぞ!何と見間違えるんだよ!」
「そうですか。では狐が鎌に化けていたとかは」
「てめえ……俺のこと馬鹿にしてんのかよ」
「してませんよ。私は色々な可能性を考えているだけです」
「けっ……、本当かよ」

 御神槌と会話をしていくうちに少しずつ冷静になってきた奥継をみて御神槌は優しく笑い肩をすくめた。そして未だに戸を閉めたままなのを思い出し、彼が勝手に締めた戸を開けようと近付いた御神槌だったが、その行動に気が付いた奥継は慌てて彼を制止する。

「おい!あいつが近くに来ていたらどうすんだ!」

 その声に一瞬動作が止まった御神槌だが、軽くため息をついた後悩まし気な顔を彼に向ける。

「ですが戸を締めたままだと風祭さんが屋敷に帰れませんよ?それにこの村は御屋形様が直々に術を様いて村の防衛をしている事は知っているでしょう?悪意あるものは侵入出来ないようになっているため大丈夫ですよ」

 戸に置いていたつっかえ棒を取り、戸を開けると外はすでに暗くなっていた。
 右、真正面、左。
 周りを見渡しても特に異常は見受けられず、未だに警戒が解けない奥継に笑顔を向ける。

「ほら、何もいませんよ。あまり遅いと夕飯がなくなってしまうと以前に言っていたでは……って、おや?」

 安心させようと話しかけていた矢先、先ほどは物陰に隠れて気づかなかった何かが戸の後ろに置かれいるのに気が付いた。
 何か確認するために屈んだ御神槌に、薄れていた警戒感が強まり露にする奥継。彼に向かいきゃんきゃんと吠え、毛を逆立てている。

「ほらみろ!なにかあったんじゃねぇか!!」
「いや、いつの間にか誰かが花を置いていったようなので……。誰でしょうか?」

 そう言って地面に置いていた花を持ち上げ、彼に見せる。
 黄色の小さな花弁が何十個と集まり、一つの束となって満開に花開いているものと、蕾のまま摘まれたもの。どちらも今の時期に旬な花の一つ、菜の花である。山菜として食べてもおいしく、鑑賞として愛でても心安らぐ万能花だった。奥継はそろりと近づき彼の手元を眺めていたが、一緒にあった違う花をみて叫んだ。

「ってたんぽぽもあるじゃねぇかっ……!」
「え、はい。そうですね」

 確かにたんぽぽも一緒にあったため抱えているが、それが何か?と不思議そうに話す御神槌に、言っている意味が通じず苛立ちを隠そうとしない奥継。花を抱いている彼に指をさし、堂々と答える。

「俺が死神にあった時にも彼奴はたんぽぽを刈ってやがったんだ。これがここにあるということは……。御神槌!今度はお前を狙うという証拠に違いねえ!」

 どうだっ!と言いたげに話す奥継に彼は一刀両断した。

「いや、風祭さんは追いかけられたかもしれませんが、結局特に何もされていないじゃないですか。それに今度は私を狙う理由もよくわかりません。たんぽぽを戸の前に置き、お前を追いかけるぞって宣言するのですか?何のために?術をかけている村にわざわざ入りこみ、そんなことする意義があるとが思えませんが……

 さすが槍使い。突っ込みが早い。そして切れ味満点だった。
 怒涛の突っ込みにさすがの奥継も何も言い返すことが出来なかった。せめてもの悪あがきで、彼に唸るように質問をする。

「う゛……。じゃあなんなんだよ、これは」
「う~ん……

 御神槌は花を眺めて考える。
 死神の仕業ではないと思うが、ではこれが何なのかと言われれば検討なんてつかなかった。以前村人から勉強を教えてもらうお礼に野菜をもらったことはあるが、村人なら声をかけずにこっそり置いていく事もないだろう。
 そこまで思うと最近似たような話を聞いた気がする。というか、した気が。
 人知れずにお礼……、山菜……、狐に化ける…………狐?
 何かが繋がり、ひらめいたように呟く。

……ごん?」
「はぁ?」







次の日。
「では、朝の朝礼を始める。最近、何か不審な事はみられなかったか?」
「はい。御屋形様にご報告とお願いがあります」
「なんだ御神槌」
「最近村にごんが出没し花や山菜を置いていくようなので、彼に危害を加えないようにしていただきたいのですが……
「は?」
「ふざけんじゃねえ!あれは死神だって言ってんだろ‼御屋形様、村外れに死神が出ます!俺に退治させてください‼」
「何を言っているのですかっ!何も悪いことをしていないものを傷つけるなんて……
「俺を追い回したことは悪い事じゃねえのかよ!」
「な、なんなんだ?」
「そういえば昨日無くなったと思っていた籠がその日のうちに屋敷の前で見つかったそうですよ。しかも籠一杯に薬草に使える草木と山菜が入ってたそうで。まあ幸い薬は少なくなっちまってて、山に行く時間がなかったので正直助かったけどねえ。一体誰のしわざなんだか……
「おや、桔梗さんもごんに会いましたか?」
「ごん……?」
「だから死神だって言ってんだろうがッ!」
「話が全く見えないんだが……?」
「若。俺もさっぱりですよ」

「おい鈴菜。これ、全部お前のせいだろ」
……