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木蔦(キヅタ)
2021-05-22 09:28:42
5792文字
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ピアニスト長義くんの話【ちょぎくに】※現パロ
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ちょぎくに
※現パロ 高校生
※私の専門外なので、変な設定出てきても地球に似た異次元の世界の常識と思って見逃してください。
ピアニスト本歌様の話!
まんばは高校生。成績は中の下。可のなく不可もなく。
ある日まんばのクラスに転校生がやってくる。銀髪で青い目をしたイケメン。名前は長船長義(ながよし)と言った。
長義はピアノの勉強で留学していたらしい。顔ももちろんだが、その経歴を聞いて女子が色めき立つ。
(ピアノか
……
)
まんばは昔を思い出す。よく兄弟が弾いてくれた。幼い頃、まんばは兄弟のピアノに合わせて歌ったりしていた。まんばは不器用だったので、ピアノなんて弾けなかった。だけど兄弟はそんなに歳が変わらないのに、難しい曲でもスラスラ弾いてた。
『へたくそ!』
まんばはそれと一緒に苦い思い出が蘇ってきて、思考をとめた。ピアノの話は頭の隅に追いやる。
転校生とは関わることはない、そう思っていた。
だがそれは覆ることになる。
ひょんなことから、長義のピアノを盗み聞きしてしまう。聞き惚れてしまった。人を惹きつける力があり、留学してたのも納得。
もっと聴いていたい、そう思うようになる。
しかし聞いてたのを長義に見つかってしまう。
もう少し聞きたい、聞かせて欲しいと頼むが、長義は不機嫌そうに去ってしまう。
まんばは家に帰っても繰り返し思い出す。心地いい音だった。また聞きたい。
異様なまでに惹かれている。まんばはそんな気持ちを疑問にすら思わず、次の日から長義に頼み込む。
「またあれを聞きたい
…
!」
「いやだね」
「頼む」
「しつこいな」
何度も何度も断られる。
「とても惹きつけられる。あれはとても好きだ
…
!少しだけでいい
…
!」
そんなことを言っていると友人に「熱烈に口説かれてるww」とからかわれる。まんばはそんなつもりはなかったので否定するが、長義は機嫌を損ねた。
「あれはある子に向けて弾いた曲だ。他の誰かに聞かせる気はない。あんな所で弾くんじゃなかった」
まんばはそこで察する。その子は恋人なのでは
…
?
だとするとまんばはすごく邪魔をしたような気がする。
しかもちょっと弾いてくれればいいという軽い気持ちだったが、本人は半端な想いじゃなかったんだなと思う。
まんばはそれから長義に言わないようにした。しかし漏れ聞く程度ならという下心もあり、長義が音楽室に近づくと何かと理由をつけて、近くの教室で耳を澄ませたりした。
しかしまんばに懲りたのか、長義は一切ピアノに触れようとはしなかった。
ある日まんばは長義と共に化学室の荷物運びを頼まれる。長義と一緒にいるのは気まずい。まんばがしつこかったので、長義に嫌われている。他の人にはにこやかなのに、まんばに対してだけ素っ気ない。自業自得。
「さっさと片付けるぞ」
「あ、ああ
…
」
片付けてると、三角フラスコを落としてしまう。
「あ、す、すまない」
「なにやってるんだお前は」
「すぐ
…
っつ」
慌てて片付けようと咄嗟に手を伸ばしたせいで怪我をしてしまった。
「馬鹿、素手で触る奴が
…
」
長義がまんばの手を奪い、怪我の具合を見ようと覗き込む。まんばも取られた手を辿って、長義を見上げた。バチッと視線が合う。
綺麗なあおいろの瞳。吸い込まれるような美しさがある。思わず見惚れてしまう。
長義は驚いたような表情をしていた。目を見開いているお陰で、その瞳がよく見える。
ハッとしたように長義が言う。
「さっさと保健室行くぞ
…
!」
腕を引かれて保健室へ。まんばを連れて行くと長義はすぐにいなくなってしまった。やっぱり嫌われてるからと思ったが、割れたフラスコの片付けや元々頼まれていた仕事をやってくれたらしい。
ある日長義が女子に囲まれてた。モテるからなぁと思っていたら、「今度ピアノ弾いて欲しい」などと言われている。
まんばは断られるに決まってると思っていたが、長義は快諾していて、ショックを受ける。
恋人にしか聞かせないんじゃなかったのか。まんばが嫌いだから適当な理由を言ったのか。
あの女子生徒の中に恋人がいるのか。
まんばは悲しくなる。
そして羨ましいと思っている自分に気づく。嫉妬してる。
嫉妬している事に気づくと、長義のピアノに惚れ込んでいた事を知る。芋づる式にそんな事実が出てきて、まんばは頭を抱える。
あまり認めたくないので、気づかなかったふりをする。
たぶん友人に話せば「あんだけ熱烈に口説いておいて!?今更!?」と言われる。恥ずかしい。
まんばは長義のピアノが聴きたくて、放課後女子生徒に弾いてあげると言っていた時間帯に近くの教室に潜む。
聞こえてきた音はやはり綺麗で、まんばは耳を澄ますが、なんだか気分が落ち込んでくる。
(何やってんだろ
…
)
なんだか虚しくなる。あんなに聞きたかった長義のピアノだが、曲の途中で下校する。
でも家に帰ると無性にピアノが恋しくなる。兄弟のピアノが久々に聴きたいと思い、兄弟の部屋を訪ねる。
「今いいか?」
「どうしたの?」
「兄弟、昔よくピアノを弾いてくれただろ?また聴かせてくれないか」
「え?あ、あんまり上手くないよ??」
「兄弟のが聴きたいんだ」
仕方ないなと埃を被ったピアノを開ける。
指で押すとポロン、と情けない音が出て、兄弟が「随分弾いてないから調律すらしてないね」と言う。
「最近弾かないのか?」
「何言ってるの。これは兄弟のピアノでしょ」
「え?」
「兄弟がお祖父様にねだって買ってもらったじゃない」
「ええ!?」
兄弟の言う事には、幼い頃まんばがピアノを欲しがって、末っ子に甘々な祖父が買い与えたらしい。しかし幼いまんばは弾けるわけなく、代わりに兄弟が弾いてあげてたとのこと。
ちなみに童謡を弾いてあげると嬉しそうに歌っていたらしい。
「覚えてない」
「もー!こんな高い物買ってもらったのに!」
「でも兄弟の方が上手かったからそのまま使えばよかったのに。音楽関係の学校を目指せるレベルだった。」
「何言ってるの。僕は簡単なやつしか弾けないよ。精々森のクマさんくらいだって」
「え??」
おかしい。まんばの記憶では兄弟が大人顔負けのすごい曲を弾いてたはず。思い違いか?と思う。
次の日、長義が怖い顔をしてまんばの元へやってくる。
「お前、騙してたのか
…
!」
「何が
……
?」
「いいから来い!」
まんばの手を強引に取り、引いていく。廊下に出てどこかへ向かっている。
「え?え?授業は?」
「サボる」
連れてこられたのは音楽室。長義がピアノを開ける。
「いいか、お前のお望み通り弾いてやる」
「!?」
「聞きたがってただろ、ちょうどいい」
そう言われて喜びよりも痛みが強かった。あんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回しか。昨日女子に弾いてチヤホヤされてたくせに。
まんばは気持ちが沈み込み、一歩下がる。長義がそれに気付き、まんばに近づいて手を取った。
「弾くから、お前は歌って欲しい」
「え
……
」
「いくらでも弾いてやるから、だから」
まんばは固まる。そして顔を横に振った。
「できない
……
」
「なんで」
「なんでもだ
…
!」
まんばは長義を振り切って逃げた。教室に戻れば捕まる気がして、結局授業をサボった。
それからは前と立場が逆転した。
長義がすごい形相でまんばに迫ってくる。まんばは長義から当たり障りのない口実で逃げたり、隠れたりした。どうしてそんなにムキになってるのかわからない。
長義に手を取られ、間近に顔がある状態でじっと見つめられ、まるで愛を囁かれるように言われる。
「お前の声が聞きたいんだ」
「誰にも邪魔されないとこへ行こ」
「ねえ、俺の頼み、聞いてくれるよね?」
不可だ不可!!
まんばは長義の言葉に抵抗を示すが、何も変わらない。
付き纏って、四六時中くっついてくる。女子が遠巻きに長義のことを見てるがお構いなし。
まんばは歌が苦手だ。音痴だし、選択授業である音楽は取ってない。極力避ける。
長義のピアノを聴くのが気まずいというのもあるが、歌なんて要求されて困っている。交換条件のつもりか。
ついにまんばは捕まってしまう。
逃げられないように、腕に手錠を嵌められ、ピアノの足に繋げられた。誰にも邪魔されないようにと鍵をかけた。
長義がまんばを見つめてくる。その目は熱が灯っていて、居た堪れない気持ちになる。落ち着かない。
「なんでそんなにいやなんだ」
「
…
へたくそだからだ」
「下手?」
「昔、仲の良い友人に言われたんだ。音痴だって。それ以来、あまり人前で歌わないようにしている
…
」
長義は気が抜けたようにしゃがみ込んで、ため息を吐く。
「わかった
……
それなら歌わなくて良い
……
」
諦めてくれた。
「でもピアノだけ聴いて欲しい」
耳元で囁かれ、無意識に顔が熱くなる。
「これは、幼馴染の女の子によく弾いてあげてた曲だ。他のやつには聴かせるつもりはない」
「は?それをなんで俺に?」
「この前ここで弾いてたのは、もしかしたらその子に再会できるかもと思ったからだ」
そしてその子ではなくまんばが聞いてしまったのかと思う。
…
ではなくて、なんでわざわざその曲をまんばに弾いてくれるのかと聴いてるのだが、自分語りがしたい派なのか、質問の意味を理解してないのか、まんばの問いは無視だ。
この前女子に弾いていたのは別の曲だった気がする。なんだかもやもやしたのが解けていく。
ポン、と長義の手で音が鳴る。続いて音が重なり、音楽になっていく。
やはり彼のピアノは引き込まれる。体に馴染むように音がまんばの中に入ってくる。心地いい。
繊細で、凛々しくて、澄んだ音色。
まんばは聞き惚れる。曲が終わってもしばらく放心状態だった。
「まだ、気づかないの?」
長義がまんばの顎を取る。顔が間近で、その端麗な造形にどぎまぎしてしまう。
「俺の幼馴染は、お前だろう?」
まんばはそれを聞いて驚いた。
自分な訳はない。彼は『幼馴染は女の子』と言った。
「お前、昔は女の子のように可愛かったんだよ。だから俺はそう思い込んでた。名前もくにちゃんってことくらいしか知らなかったしね」
「ま、まさか
…
」
「よしくんよしくんって、俺にくっついてきたの覚えてない?
よく俺のピアノで歌うのが好きで、弾いてあげるとすっごく嬉しそうにしてたんだけど」
まんばはカァァァ、と耳まで真っ赤になる。覚えが、ある。
しかしそれは兄弟だと思っていた。だけど兄弟は違うという。もしそれが彼ならば色々と辻褄が合う。
「お前の、声が聞きたい」
「でも、俺は、声変わりだってしてて、」
「構わない」
「それに、その、
……
」
まんばは昔のことを思い出して、口を噤む。長義を避けるように、俯いた。
「
……
悪かった」
長義が困った顔をして覗き込んでくる。
「俺のせい、だろ?お前が歌わなくなったのは」
長義の両手に顔を包まれ、まんばは視線を逸らすことができない。キスしそうなほど顔が近い。
「俺が下手だなんて言ったから
…
」
「お前が
…
?」
「それも覚えてないのか」
「す、すまない
……
」
「お前があまりに兄弟と歌うと楽しいと言うから、ついカッとなって言ったんだ」
「それって」
「そう言えば俺以外としないと思ったからだよ」
ヤキモチって言うのでは、と思い、頬が再び熱を持つ。恥ずかしい。
「ねえ、お前の声が聞きたい。俺だけに聞かせて。歌って欲しい」
ずっと認めずにいたが、まんばは長義の事が好きだと自覚する。
長義のピアノを他の者に聴かせたくないと思う。それはただ単に彼の弾く曲が好きなだけではない。そうじゃなければこんなに苦しい想いをしない。
そして長義も同じ想いを持っていると感じる。ここまで想いを向けられて、逃げるわけにはいかない。
まんばは戸惑う。だけど決意を固めてコクリと頷いた。
( ˘o˘ )♪ 中略 (・ω・´)
脱力感。心地いい疲労感。長義が本気でぶつかってくるからまんばも負けじとムキになった。
普段歌わないからやはり下手だったけど、長義は満足そうにしている。その顔を見て、ああ良かったなと思う。
緊張が解け、へなへなと床に座り込む。長義が近づいてきてまんばに目線を合わす。
ぐぃ、と手錠の鎖を引き、まんばを引き寄せる。
同じ歳のはずなのに、魂を奪われるような妖艶な微笑み。目が離せない。
「好きだよ」
ぼんやり長義を見つめていたら、唇を奪われる。驚いて口元を押さえた。
長義はふふっと笑う。
「もっとお前の声が聞きたい」
暗転
ちょぎくにハッピーエンド!
お疲れ様でした!お読み頂きありがとうございました!
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