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木蔦(キヅタ)
2021-04-19 07:36:58
10495文字
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本丸の極んばが気になるのに、他所の布んばも気になる長義の話【ちょぎくに】
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「あっれ〜?お出かけですか?」
「え、ま、まあ
…
」
「どちらに?」
鯰尾が極んばに話しかけてる。極んばが外へ出るなんて珍しい。
「内緒だ」
そういう極んばの頬は少し赤らんでいて、心なしか嬉しそう。そんな様子を見たら誰でもイイ相手との逢引きだと思う。
極んばにそんな相手がいるなんて知らなかった。誰かのものになる極んばを想像してしまい、ドロドロした感情が湧いてくる。
許さない。
「おい、偽物くん、どこいくんだ!」
本丸から出たところで、叱るように呼び止める。
「ちょっと、万屋に
……
」
「他の本丸のやつと会うのか」
「そ、それは」
動揺したことから答えは明らか。
「他所の本丸のやつに会うなんて神経を疑う!お前は近侍としての自覚があるのか!ホイホイ会いに行くんじゃない!」
「ほ、本歌には関係ないだろ!」
「いいやあるね!本丸内の情報が漏れたら主に迷惑をかけることになるだろ!」
「そんなヘマはしない!」
「とにかくだめだ!」
「あんたの指図は受けない!俺はもう行くからな」
つん、と極んばがそっぽを向く。それが忌々しくて、ダンっと木に突き飛ばした。
「行かせない
……
!」
極んばに覆い被さる。長義自身、何をしてるかわかってないが、本能で動いてる。
「な
…
!?や、やめろ
…
!」
「っ」
極んばに思いっきり突き飛ばされ、我に返った。
「
……
あんた、頭おかしいぞ
……
!」
極んばはそう吐き捨てて、走り去った。長義は自分の気持ちが分からなくて、呆然とする。
布んばに会う。
もしかしたらどこかに極んばがいるかもしれない。他の本丸の刀と会ってるのだと思うとイライラ。周囲に目を光らせる。
「本歌
…
?どうしたんだ
…
?」
「いや、なんでもないよ
……
行こうか
……
」
布んばが心配そう。慌てて微笑みかけた。
その日も個室で相談。
先程までは極んばの事で頭がいっぱいで話なんて頭に入って来ない。
「本歌?今日おかしいぞ?どうしたんだ
…
?」
「え、あ、いや
……
」
「俺のこと嫌いになったのか?」
「そ、そんなわけない!」
悲しげな顔をする布んばを見て、愛おしさが溢れてくる。自分がそばにいてあげないとこの子はダメだ。
極んばのことも、こんなに素直な写しならあんなことにはならなかった。
この子なら自分の中に閉じ込めて、傷つかないように真綿で包んで愛しんでやるのに。この子の本歌がなぜ自分じゃないのだろうか。
布んばが自本丸の長義の事で傷ついてることに心を痛める。いっそ自分を想ってくれればいいのに。
そうだ、奪ってやればいい。この写しを自分のものにすれば、この子は傷つかないし、自分も望みが叶う。
「きっと、お前の本丸の俺は、お前のことが嫌いなんだね」
そう、布んばに囁く。びくっと震えた。
「だっていくら不仲だと言っても、そんな酷いことするなんて信じられないもの」
「そう、なのか
…
?」
不安げな瞳で長義を見てくる。泣きそうな顔。
「可哀想に。本歌に嫌われるなんて、写しにはつらいだろう」
「
……
っ」
その一言でぽろりと涙が溢れる。
「でも大丈夫。俺ならお前を大事にしてあげるよ」
ぎゅっと抱きしめる。いつものようになでてあげる。
「いやだ」
一瞬何を言われたのかわからず停止する。
「何が?」
「離してくれ
…
!」
長義の腕を振り解く。その勢いで布んばからポロポロと涙が溢れた。
「え、ま
……
!」
「あんたは!本丸の写しのことが嫌いなんだろ!」
「え、そんなこと言ってな
……
」
「言った!俺が嫌われてると!」
「それは同位体のことであって、俺はお前のことが
……
」
「同じだ!」
「違う!同じ刀でも、個々に性格が
…
!」
「だから同じだ
……
!俺は
……
!」
まんばが頭に被っていた布を取る。
「同じ本丸の山姥切国広なんだから」
思考回路が停止した。
まんばのしゃりくあげる音だけが響く。
長義はまんばの言った言葉をゆっくり噛み砕く。
極んばと布んばが同一人物?
ふたりのギャップがありすぎてなかなかリンクしない。目の前で泣いているのは、クソ生意気な極んばだと、誰が思うだろうか。
それならば、あの時の布んばからの相談も、その時の相談も、あれは長義自身のことということになる。
(待て、俺はなんて言った
…
?)
『きっと、お前の本丸の俺は、お前のことが嫌いなんだね』
『だっていくら不仲だと言っても、そんな酷いことするなんて信じられないもの』
自分の事とはつゆ知らず、お前のことが嫌いなのだろうと断言していた。
極んばにとっては、お前のことを嫌ってると言い放ったようなものだ。
「違
……
!確かにお前のことはいけ好かないが、嫌ってるわけじゃ
…
!」
「あれが本音だろ。それくらいわかる。フォローを入れなくて良い」
まんばが目から涙を溢したまま、冷たく言い放つ。
長義は考える。なぜまんばがこんなことをしたのか。
まんばは初めから長義が自本丸の長義だと知ってて近づいた。まんばは性格が悪いため、長義の内心を知って嘲笑うつもりだったのかもしれない。だから黙っていたのだろう。
「お前、まさか、俺を嵌めようと
…
!騙してたのか!」
まんばを睨みつける。だけどまんばは悲しげに俯き、答える。
「違う。俺はただ、あんたがこの姿だと優しくしてくれるから、嬉しくて
……
。本丸では、あんたは俺に冷たかったから
……
。騙す気はなかった。すまない」
胸にずしりと来る。
確かに、今までのまんばの涙、悩み、相談事が演技とは思えない。それに長義は本丸でまんばに必要以上に辛く当たっていた。自覚はある。クソ生意気だと思って深く考えなかったが、あんなことされれば普通のひとなら傷つくだろう。
それなのに騙したのか!と責め立てて、最低では?と考えがよぎる。
「もう、あんたの視界に入ったりしないから」
以前『今後俺の視界に入るな!』と言ったことを気にしてるのだろう。まんばは出て行こうとする。長義は慌てて引き止めた。
「待って欲しい!もう少し話をしよう
…
!」
「話すことなど何もない」
「俺が悪かった、だから」
「あんたは自分の気持ちを言っただけだ。謝ることなど何もない」
「でも、お前を傷つけた!」
「勝手に傷ついただけだ。俺の気持ちの責任まで取ってもらうつもりはない。それに傷付けるつもりで言ってたんだろ」
「そ、それは
…
」
確かに極んばにむかついた時は酷い言葉をわざと浴びせた。
だけどそれは後悔している。こんなにもまんばを傷つけ、泣かせてしまった。胸が痛い。
あんな態度を取っていたにも関わらず、内心では長義のことを想っていたなんて思いもしなかった。
恋刀とデートなのだと勘違いし、嬉しそうにする極んばにイライラした。そしてその後長義は暴走しそうになった。
なぜあんなにもイライラしたのか考える。極んばのやることなすこと、とても不快。だけどまんばの健気さを知り、認識を改めなくてはと思う。しかし今思い返してもイライラ。
そして極んばのことが好きだったんだと気づく。だからデートだと思ったり、他の刀と仲良くしてるのを見て、イライラしたのか。
「す、すまない、俺はどうやら、お前のことが、好き
……
らしい」
気が付いたばかりの事実に対し、戸惑いと照れ隠しも混ざり、そんな感じに伝える。
「お前が好きだから、嫉妬して酷いことばかりしていた。自分でもその感情に気づいていなかった
……
。」
言っててちょっと恥ずかしくなって来た。
何だ今更と怒るかもしれない、そんな理由で?小学生男子かとバカにされるかもしれない。
ちらっとまんばを見ると、まんばは顔を真っ赤にして、呆然としていた。
「う
……
そ
……
」
ようやく止まり掛けてた涙がポロポロ溢れ出す。ぎょっとした。
「え、待て待て!何で泣くんだ!」
「うれ
……
しくて
……
っ」
まんばがしゃくり上げながら言う。
「だって、相当嫌われてると、思ったから
……
っ」
そんなことで泣くほどにまんばを追い詰めてたと気づく。堪らずに抱きしめた。今度はちゃんと腕に収まる。
「その
……
、今までのこと、謝っても許されることじゃないけど、
…
すまない。もう、お前を泣かせたりしないから、だから
……
!」
まんばが長義の口に手を添える。何も言うなと言わんばかり。
「いい」
涙がまだ目尻に溜まってる顔で、ふわりと微笑んだ。
「本歌が俺を好いてくれてるだけで、構わない」
「
………
っ!」
好きなだけで良いわけないだろ!!!
暗(*`д´)σ=σ)ω° )転
好きなんだから、手だって出したい!!
はい、ちょぎくにハッピーエンド!
お疲れ様でした!ありがとうございました!
ちょっと当初の予定とズレたところがあります。結末は同じなんですが、腹の虫が治らないので冗長とわかりつつ書きたいと思います
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