木蔦(キヅタ)
2021-03-29 12:15:54
7353文字
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乙女ゲームの世界に取り込まれてしまった長義くんの話【ちょぎくに】


私も悪役令嬢ものやりたい!


長義はある本丸の刀。
目が覚めると西洋の豪華な部屋のベッドにいた。
「は!?ここは!?」

(中略)

把握するのにかなり時間はかかったが、ここは審神者がよくやっていたゲームの世界らしい。長義はその攻略対象のひとり。ヒロインをいじめるライバルの婚約者であり、この国の王子だった。

「ウィリアム・オスカー・ヴィンセント・アルバート・キーファー・アフレック・ローレンス・グラント・ロートリン・カエサル・コルネリウス・ハプス様、婚約者様がお見えです。」
「なんて?」

確かに長義の銘は長い。

『本作長義天正十八年庚寅五月三日ニ九州日向住国広銘打長尾新五郎平朝臣顕長所持天正十四年七月廿一日小田原参府之時従屋形様被下置也』だが、ゲームの世界まで長くしなくてもいいだろう。特に横文字は覚えにくい。

「覚えられない、もう一回言ってくれ」
「ウィリアム・オスカー……

(中略)



※これ以降、名前は『長義』と変換されて表示されます。その他キャラも一緒です。

※カタカナの名前は適当に付けたので、多少変でもスルーしてください。



「長義様、会いにきたぞ」

仁王立ちで極んばが現れる。

ーー婚約者ってこいつか

頭を抱える。極んばとは長いこと『号はどっちのもんだ』問題を抱えている。恋心すらも拗らせ、二進も三進も行かない。顔を合わせれば、一言嫌味を言わなければ物足りない。

(これがゲームの世界だっていうなら、悪役令嬢ぴったりじゃないか。嫌味でねちっこい性格、えらそうな態度!精々こっ酷く振られれば良い

ニマニマと極んばを見る。この後、攻略対象はヒロインに恋をし、極んばがヒロインをいじめ始める。そしてラストで悪事を明るみにし、制裁を加えると言う流れだ。

(待 て よ  ?)


攻略対象というのは長義のことだ。つまり極んばを振るのは長義。振った原因はもちろんヒロインに恋してしまうからだが、極んばがヒロインをいじめたこともある。極んばは嫉妬に狂い、ヒロインに悪質ないじめをする。それは長義のことが好きだからだ。

長義のことが!好き!

現実世界でこんなことがあるだろうか?いやない。

この状況を噛み締める。ここでは極んばに想いを寄せられている。なんて幸運なことなのか。

じーんと浸っていると極んばが声をかけてくる。

「そういえば学園に転校生が来るらしい」
「え?ああ、そうなのか」

転校生はヒロインのことだ。彼女が編入したことでストーリーが動き始める。

だけどぶっちゃけ彼女に出会わなければ、ルートに入らないはずだ。このまま極んばとイチャイチャ過ごすのもありかもしれない。

「転校生がいま学園寮に来てるんだ。だから会いに行かないか」
「は?」

いやいや遠慮したい。出会ったらルートに行く可能性が出てくる。

「いや俺はやめておく
「なんでだ!」
「ちょっと今日は体調が」
「元気そうに見えるが」
「見えてない部分が元気じゃないんだ」
「長義様の長義様か?」
「おま!仮にも令嬢が下ネタ言うな!」
「お前の不全の話はどうでもいい。グズグズするな、行くぞ」

有無を言わさず、極んばに連れて行かれる。

「あんたが王子??」

ヒロインは布んばだった。きょとんとした顔で長義を見つめている。同位体同士で自分を取り合うのか、と思う。

婚約者の極んばは当然長義を取られまいとするわけで、そんなかわいい極んばの態度が見れると思うと顔が緩んでしまう。

「じゃあ俺はこれで」
「待て待て!」

なぜか極んばは長義を置いて先に帰ろうとする。布んばとふたりきりにしてどうする。

「俺はお前の婚約者だぞ!?他の子とふたりきりでヤキモチ妬かないのか!?嫉妬するだろ!?」
「嫉妬!」
その発想はなかった、と言わんばかりの驚き顔。
「ア、イヤ、嫉妬スル。スゴク妬クナ
心なしか棒読み。
「アンタノ婚約者ハ俺ナンダカラ、余所見シチャヤダ」
ヤキモチかわいいな(´ω`)


「なら俺も帰ろう。別に転校生に用事はないしな」
「え!」

極んばが驚く。
「なんでだ!転校生かわいいだろ!?もっと話したいだろ!!」
「いくらかわいかろうと初対面だぞ。別に話したいわけじゃない」
「初対面で恥ずかしがるような性格か?お前はそんなコミュ障ではない。ここに残れ」

強い口調で言われ、置いて行かれる。

「なんで本歌様残ったんだ初期刀様の方が良かった……本歌様なんて、いても邪魔なだけ……。」

(ヒロインからまさかの塩対応!明らかにフラグがへし折れてる!!)

ジト目で布んばが見てくる。居心地が悪くてたじたじ……

そもそもゲームは転校初日から始まる。前日だからまだ重要イベントは起こらないはずだ。
だからこのまま帰っても良い。というか帰りたい。
一応、コミュニケーションを試みる。

「えと、お前は今までどこに住んでたの?友達とか知り合いは?」
「そんなこと聞いてどうするんだ?」
「え、いや、どうもしないけど。し、知り合いがいないなら、俺を頼って来てもいいぞ」
「いや遠慮しておく」
取り付く島もない。

「えーと、その」
「本歌様」
「なにかな!?」

「さっさとお帰りあそばせください」

ヒロインがそう言うので帰った。
帰りたいとは思っていたが、この展開はすごく癪だった。




その後も極んばにアプローチを試みた。しかしのらりくらりとかわされ、一向にイチャイチャできなかった。

「ほ、ほら、婚約者なんだし、部屋に来ないか?」
「いや結構だ」
「一緒に勉強しよう!」
「それなら二振り目を誘え。成績優秀だそうだぞ」
「最近お前が会いに来てくれないからたまには」
「忙しくてな」

しかもヒロインも塩対応。
審神者がやっていたゲームなのですべてのイベントを覚えているわけではなかったが、目に見えて不発だった。

「帰りに一緒になるなんて珍しいな?」
「あ、俺、初期刀様に呼ばれてた」
「成績優秀と俺の周りでも一目置かれてたぞ」
「俺のことは空気と思え、俺もあんたを無視するし」
「知り合ったのも何かの縁だし」
「俺はあんたに関わりたくなかったけどな」

そして長義は気づいた。

(乙女ゲーの主人公は俺なのでは?)

あまりにヒロインが塩、婚約者も素っ気ない。これは好感度が低い証拠だ。そしてヒロインからのアプローチもない。婚約者の邪魔立てもいじめもない。
しかし長義が主人公ならば、この状況も納得できる。

(そうか、俺は好感度を上げなければいけなかったのか)

そうとわかれば!と早速極んばの元へ行く。
ゲームでくらいイチャイチャしたい。難易度はMAXかもしれないが、ゲームだから落とせるようにできてるはずだ。


「なんで俺の所に来るんだ!」

なぜか怒られる。

「え?え??」
「二振り目はどうした!今から会いに行くぞ!」
「はぁ!?なんで二振り目が関係するんだ!俺の婚約者はお前だろ!なんで他のやつに会いに行かなきゃならない!?」
「つべこべ言うな!」
「しかしあいつは俺に対してすごく冷たいし!」
「はぁ!?なに!?」

連れて行かれる。
途中、布んばは塩対応について詳しく話す。極んばは怒って布んばの所へ乗り込んでいく。

「二振り目!長義様に対して失礼な態度らしいな!マコトニイカンナリ!!」
極んばが長義のために怒ってくれてる。少しじーんとする。それほど極んばは素っ気なかった。ちゃんと愛されてる。

「だって俺、本歌様と恋愛なんて嫌なんだー!」
「なんでだ!恋に落ちろ!」
「理不尽!初期刀様なんで俺のところに連れて来るんだ!」
「お前と長義様が恋に落ちなきゃ話が進まないからだろ!」
「進まなくていい!」
「進ませろ!!」

愛されてない気がする。

「お前と長義がくっ付かないとエンディングにならないだろ!この世界から脱出したくないのか!」
「は?」
「したいけど、本歌はやだー!なんで俺がヒロインなんだ!初期刀変わってくれ!」
「は!?」
「俺はライバル役なんだから無理だ!さっさと惚れろ!くっつけ!イベントを起こせ!」
「いやだ!初期刀が本歌とくっつくエンディングでもいいじゃないか!」
「バッドエンドだろそれ!」

(俺、すっごく嫌われてないか?)

ふたりが長義の相手役を押し付けあってる。悲しい。

「だって!ふたりは両想いなのに、この配役おかしいだろ!役とは言え俺はふたりの恋の邪魔はしたくない!」
「は?りょうおもい……?」
「あーもー!側から見てもだもだするー!ふたりともお互いが好きなの、周囲からバッレバレなのに、なんで本人達は気づかないんだ!あんたたち相当面倒臭いぞ!」
「!?」

(え、偽物くんも俺のことを……?)

ちらりと極んばを見る。極んばは恥ずかしそうに頬を染めて、可愛らしくもじもじと………

……してるわけがなかった。

剛拳が長義目掛けて飛んできた。

「俺が長義を好きなわけないだろっ!!」

カンカンカン!ノックアウト!ε=(っ°ω° )っ



そして気づいたら外の世界に戻っていた。何エンディングを迎えたのかわからぬまま……

〜Happy End〜

お疲れ様でした!お付き合い頂きありがとうございました!