木蔦(キヅタ)
2020-07-29 09:54:57
9727文字
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妊娠逃亡【ちょぎくに、みかんば】※現パロ ※女体化・妊娠表現あり




まんばは長義のことが好きだった。だけど当の長義はまんばのことなどなんとも思ってない。ただの腐れ縁。ただの幼馴染。

ある日、そういう雰囲気になって、長義と暗転してしまう。どういう顔をしていいかわからない。恥ずかしい。まさか長義と両想いだったなんて、と思うが、なんだか様子がおかしい。
終わった後も平然としている。普通ここで「実はお前のことが好きだったから抱いてしまった」とかいう話をするのでは?なんだか拍子抜け。そこでまんばは察する。これがセフレというやつか、と。

そう思うと納得できた。

例えばまんばはたまに長義の家に呼びつけられる。ご飯を作らされる。大抵評価は「まあまあだね」。「美味しい」と一度も言われたことがない。料理するのが面倒だから作らせてるに違いない。

長義はまんばの都合なんて関係なしにいつでも呼びつける。まんばが疲れてたり、忙しかったり、私用があったりしても関係ない。気付かないし聞きもしない。
長義からセフレ兼召使い扱いされてることに気づいてしまった。都合がいい人間だと思われている。だけどまんばは長義の事が好きで、抗えない。

まんばはある日吐き気を催す。なんだが違和感。そういえば最近生理不順で体調が悪いのかもしれない。そう思って病院に行くと妊娠してると発覚する。
どうしよう、堕すべきか、いや産みたい、折角の長義との子だ、育てたい、でも絶対に反対される、だって長義とはただのセフレだから……、もし産むなら仕事も辞めないといけない、やめてどうするか、実家に帰るか?兄弟達はきっと暖かく迎えてくれる、しかしおんぶにだっこの状態になるのは嫌だ
まんばは悩みに悩む。悩みすぎてつい会社の同僚に漏らしてしまう。
「お主、辞めるのか?」
「辞めたくないけどな」
「結婚するのか?」
「いや結婚はしない。一人で産んで育てる」
同僚は少し考え込む。
「なら俺と結婚しないか?」
「三日月と?」
「一人で産んで育てるのは大変だろう。ほれ、俺なら金も持ってるし、世帯というものに憧れていた。子どももほしい」
「あんたならもっと良い女性が見つかるだろ。何も子持ちじゃなくても」
「それがな、女運がないのか、よく騙される。その点お前は安心だ、お互いをよく知ってるから、お前はそんなことしないとわかる!」
「うーん??」
まんばは三日月が恋愛結婚を望んでないということか?と思う。こんなにいいやつなのに、良い女性が現れないのはもったいない。
「良い友人を紹介するが?」
「じゃあ良い女性が見つかるまで、俺の世話にならんか?」
「どうしてそうなる」
「言っただろう、家族に憧れてると」
「すぐじゃなくて良いだろ」
「ちょうどお前が困ってる。お互いwin-winだと思わんか」
「でもあんたの世話になるわけには
「いや俺は生活能力がないからな、お前が来てくれると嬉しい」
その時は考えさせてくれと言ったが、結局三日月に押しに押され、その提案を受け入れることにする。
三日月との生活は快適だった。身の回りのことは何もできない、という割に妊婦の世話を忙しなくしてくれる。機械音痴や世間知らずなど、欠点も多々あったが、仕事では完璧な同僚も同じ人間なんだと思えて、むしろ好感が持てた。不器用なりにご飯を作ったり、洗濯物を干したり。これでは迷惑かけっぱなしだなとまんばは思った。それを言うたびに、三日月は「子どもが生まれるのが楽しみだから、今お前はそれを第一に考えておくれ」と言う。なんだか申し訳ない。

出産時、三日月はわざわざ仕事を休んでついていてくれた。そばで手を握って励ましてくれた。
生まれた時、父親でもないのに本当に嬉しそうな顔をして喜んでいて、まんばは「ああ、この人と本当に夫婦になれたらな」と思う。

血は繋がってないのに、赤ん坊を抱く姿は父親そのもの。

それからも三日月はまんば達に良くしてくれる。三日月といることが自然になっていく。そばにいると落ち着く。
生まれた子どもは長義に似ていた。髪色はまんばを継いだようで、金色。しかし顔立ちや瞳の色は幼い頃の長義そのまま。

産んでよかったと思う一方で、この状況は本当に正しいのだろうか、とも思う。血の繋がりはない父親、本当の父親は何も知らずに別のところにいる。

三日月とは戸籍上は籍を入れてるが、ただ単に利害が一致しているだけで、夫婦の関係ではない。

そんなビジネスパートナーみたいな関係なのに、三日月はまんばに慈愛をくれる。優しい。まるで本当に愛されてるかのよう。


長義のことを愛していたけど、愛されなかった。いつも焦燥感というか悲壮感に苛まれていた。

嘘だとしても、三日月から与えられるものは心地がいい。まんばが求めていたのはこういう関係だったんだなと思う。

三日月が望んでいる本当の家族を与えてあげたい、その思うようになる。
こんな夫だったら幸せだろうなと思う。優しい。子どもとも本当の親子みたい。一緒に遊んでくれて、悪いことをしたら叱ってくれて、まんばのことも大事にしてくれる。
だからこのままずっと一緒にいれたら、と思っていた。

しかし転機が訪れる。

家族で訪れたショッピングモールで子どもが迷子になってしまう。慌てて探すと、三日月が男性と話していることに気づく。何かあったのか、と声をかけると、子どもも一緒で、ホッとしたと同時にびっくりした。

そこには父親である幼馴染みの長義がいた。

長義には何も話さず逃げたという後ろめたさがある。いくらまんばが長義の態度を嫌がっていたとは言え、それを一言も彼に伝えたことはなかった。何も話さずに消えるなど、怒ってるに違いない。それは当たっていて、長義から言及を受ける。

三日月の提案で事情を話すことになるが、話しにくい。

子どもの目の色について触れられ、バレたと思った。瞳の色は長義そのものだ。
仕方なく洗いざらい話すことにする。しかし彼と話が噛み合わない。
ようやく勘違いが起こっていることに気づく。

「だから!父親には相談したんだろ!」
「相談してない!!父親はあんただ!!」

今に至る。