木蔦(キヅタ)
2019-06-23 17:22:22
7986文字
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【サンプル】0歳児顕現バグ本丸の日常【ちょぎくに】(ツイ民だけに先行公開)


※大阪インテ8/25(日)委託で発行予定の本です。(他にも1冊出します。⇒https://privatter.net/p/4634305)
※近くなったら改めてPixivでサンプルを公開します。(今回はツイッター民だけに特別に先行公開です!)
※通販はBOOTHさんを予定しています。


一 五児の母



山姥切国広は歴史を守る刀剣として顕現した。
そして今、国広は追われていた。しかしそれは時間遡行軍でも、検非違使でもなかった。

国広は本丸の居間にいた。彼の周りには五児の赤ん坊がいて、今は朝ご飯中だ。しかし彼らは、零したり、お椀を投げつけたり、隣の赤ん坊にちょっかいを出したり、どこかへ行こうとしたり、泣き喚いていたりしていた。国広は何とかこの場を収めようと四苦八苦している。何を隠そうこの赤ん坊達は、国広の子ども――ではなく、ある特殊な性質によりバグで生まれた刀剣だった。この本丸にいる国広以外の刀剣は全員赤ん坊の姿なのである。
「あ~~~~もう! 誰か代わってくれ!!」

山姥切国広は歴史を守る刀剣として顕現した。
そして今、国広は追われていた。しかしそれは時間遡行軍でも、検非違使でもなかった。

育児に追われていた。



こうなった経緯を説明しよう。



国広はこの本丸に初期刀として顕現した。審神者との挨拶も済ませ、じゃあ最初の鍛刀をやってみようと言う事になり、こんのすけと共に鍛刀部屋へ向かった。資材を投入すると二十分と表示され、こんのすけから手伝い札を使うよう言われたため、それを投入した。

そして顕現したのが赤ん坊の姿の薬研藤四郎だった。

「はぁ!? なんだ、これ……!」
「おい管狐どうなってる」
「おかしいですね、こんなはずでは……
何かの間違いかともう一度鍛刀をしたが次に来たのは同じく赤ん坊の姿の厚藤四郎だった。もしかして資材の量が拙いのではないか、と量を変えてもう一度鍛刀する。脇差のにっかり青江、打刀の長曽袮虎徹、大太刀の石切丸――結局資材の量に関係なくすべての刀が赤ん坊の姿で顕現した。
「す、すぐに政府に問い合わせます~!」
こんのすけが慌てて飛び出していく。

その後政府の役人が訪問し、色々調べた結果、審神者の霊力の関係で鍛刀で顕現させた刀剣はすべて0歳児になってしまうことが分かった。外見だけでなく、精神年齢も幼いようだ。そして彼らは練度と共に精神・肉体が成長するらしい。色々試してみた結果、理論上は練度九十九で通常の姿になるはずだと言うのが政府の出した推測だった。しかしそうなら、通常の姿が二十歳程度と仮定しても、練度五十で半分の十歳、練度十で十分の一の二歳ということになる。短刀だとさらに幼いだろう。無理ゲーではないか。こんな状態では時間遡行軍と戦えない所か、生活すらままならない。
「どうしようこの子達……
……どうするも何も面倒見れないなら刀解するしかないだろ」
「え! 刀解!? 駄目だよ!」
国広の言葉に審神者はすぐさま拒否を示した。
いくら名剣名刀と言えど、審神者は手のかかる刀などさっさと刀解してしまうに違いないと思い込んでいた国広は、その言葉を聞き衝撃を受けた。そして自分を恥じた。刀でありながら彼らを見放し、写しごときが名剣名刀の刀解を望むなど言語道断だ。真剣に刀剣と向き合う審神者に感動し、素晴らしい人格の主を持ったな、自分も見習わねば、と思った――、が。
「さっき大量に資材投入したじゃん! あんなにたくさん入れたのに刀解するなんてもったいないよ! 刀解しても殆ど戻ってこないんだよね??」
「資材の心配か!」
「そうだよ!! 配布された資材は限られてるんだから!」
「刀解されるなど可哀想だと同情したのかと考えた俺が馬鹿だった!」
「え? ……あ!? ああ! もちろん刀解するなんて可哀想だからだよ!! 命は大事に!」
「今更遅いぞ!?」

こうしてこの本丸で国広は五児を育てることになったのだった。