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さもゆ
2024-12-10 02:22:45
6772文字
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狂戦士
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【セルファル】燃やせるのはあなただけ/ほか
1.2…妖精島、媚薬を飲んでしまった主従。
3…たぶん全てが終わったあとのセルファル。
大ベルセルク展、本当に楽しい蝕ランドでした。先生の映像見て泣いた。これからもいつまでもいつまでも待てそう。なのに41巻とドラマCDはまだ開封さえできていないんです誰か助けてほしい。
2021.12.30 たまごのお粥pixiv投稿作品 (原文ママ)
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やさしい夜
「初めて女を抱くように私を抱きなさい」と言われたのでどうしたものかと考えながらセルピコはとりあえずその「初めて」を思い出そうとしてすぐに記憶に蓋をし素直に「無理ですよ」と言った。
初めて女性をそういうふうに扱ったときのことは、そういうふうに扱わされたというか、気持ちが伴ってなかったというか、何というか。最低でいい。最低なことに、あんまり良い思い出ではない、ただの男の生理的欲求が満たされるだけの、ちっとも温かくはない作業じみた行為だった。
女性のことは好きか嫌いかで問われればもちろん好きだが、だからと言ってやはりああいう行為にはちゃんと愛情がなければ駄目なんだなと痛感した。射精はできるが、何か虚しい。
そういうふうに己を抱けと言ってきたファルネーゼには無理も無理、勝手が違いすぎる。彼女に対しては愛とか欲望とか執着とか庇護欲とかそのまた逆の無関心ですら、およそ全ての持ち得る感情を一身に向けているのだ、セルピコにとってたったひとりの。とてもじゃないがどうでもいい女を抱くようには抱けない。
豪奢なベッドに腰を下ろした、そばにかしずいたまま突っ立っているセルピコを見上げたファルネーゼの瞳は、ちょっと薄ら寒くなるほど碧かった。上目遣いというよりは、睨み見上げられている。
「お前は、」
開いた唇はなぜか敵意でかさついているようだった。
「お前はそうでも、私は違います」
「はあ」何を言われたのか分からず、曖昧に相槌を打つ。「違うとは」
「そういう経験がありません」
「そうですね」
「良い思い出もありません。お前には一度拒まれました」
「それは、」
「過ぎたことです」と言うわりには恨みがましいように感じるのは気のせいなんだろうか? セルピコは雲行きが怪しくなってきた会話がどこに行き着くのか分からず、黙って続きを待った。「セルピコ。だからつまり、なるべく優しくしてほしいと言っているのです。
……
私が頼むには、酷ですね。でも怖いのよ」
また何を言われたのかよく分からなくなった。彼女は何を言っている? 言語が違うとしか思えない。
「
……
ファルネーゼ様」
けれども自分と彼女の言語は同じだった。もとは紋章官、ある程度の訛りも他言語も理解できる。なのに、何だろう、この食い違ったまま話をしている感覚は
……
。
そしてセルピコはようやく思い当たった答えに、雲行きが怪しいどころか雨にでも打たれた心地になった。豪雨だ。かなり厳しい。「つまりファルネーゼ様は」実際には部屋のなか、雨など一粒も降っていないが、やけに声が張った。「私があなたを優しく抱くわけがないと、そうお思いなのですね」
どうしてそうなるのだろう。手酷く扱うように思われていた? 逆じゃないんだろうか。昔のことを思うに。ファルネーゼ様の方が、よっぽど僕にそういう懸念を持たれやすいはず。まだ鞭で打たれた一番深い傷跡はこの身に残っている。なのに一体何がどうすればそんな不名誉な称号を与えられる羽目になるのだろう。私が彼女を手酷く扱うことはあってはならない。“異母兄弟だから” ──命の恩人であり、主君だからだ。それから、何より愛している。
ファルネーゼは敵意でかさついていた唇を舐めて湿らし、その防御に似たものを解くと、あとは無防備に眉を下げた。途方に暮れた子どものようだった。
「私は、お前の愛し方がよく分かりません。私と似て歪だったのは分かっているけれど。でも、多くのことを学んだわ。あのヴァンディミオン家に二人でいたころより、ずっと多くのことを」
「はい」
「それでも、お前のことはよく分からなかった。私のことを恨んでいるでしょうに」
「恨んでいません。ファルネーゼさま、僕は、」
「だから、もし、その恨み晴らすときが来るのなら、とびきり痛いのだろうなと思っていました」
セルピコは訊きたくもなかったが、念のため、そっと訊ねた。「痛くされたいのですか」
「いいえ」ファルネーゼは力なく首を振り、俯く。「だから、なるべく優しくしてほしいと
……
こんな時まで自分のことしか考えていないのよ。抱きたくもないでしょう、こんな女
……
」
「抱きたいですよ」
手を差し伸べた。見えない雨はまだ降っていて、雪になる前に体温を分かち合わなければならなかった。セルピコは跪き、彼女の俯いた顔を見上げ、その手を握った。指先が緊張か恐怖ですっかり冷えてしまっている。早く温めなくちゃ、と思った。いつもそうだ。愛情は暖炉のような形をしている。その中で、様々なものがパチパチと爆ぜている。欲望とか、執着とか、庇護欲とか、無関心とか、
……
。
「僕はあなたに命令されたからそうするんじゃない。今夜が初めてでも、別に最後ってわけじゃないでしょう。分からないままでいいです、これから分かっていってくだされば」
やさしさ、とか。
「ファルネーゼ様。私はあなたを恨んでなどいません。さあ目を閉じて、ベッドに上がってください。手を繋いで眠るように。嵐など吹かせません。私にはもうそれができる」
「おまえ、何か必死ね」
「そうですよ」初めて愛した女性を抱きますからね、必死にもなります。言うとファルネーゼは大きな目を丸くしたのち、そうなの、と声を漏らした。そうですよ。そうなの、お前もなの
……
。ここで愛してない女性は抱いたことがありますけどと言うほどセルピコは馬鹿じゃなかった。黙り込んだセルピコの手をファルネーゼが握り返し、ようやく、はにかむ。
「私は、何もかもが初めてよ。セルピコで良かった」
「
……
恨みを晴らされるかもしれないと思っておいでなのに?」
「そうよ。お前になら、何をされてもいいわ」
またズレてるのかな、セルピコは思った。何をされてもいいって、それもつまり贖罪意識なのかなァ
……
でもまあいいかとも思った。長い時間をかけて自分たちは成長してきたが、根っこは早々変わらない。一番深い部分は、必ず。絶対に。だから優しくしてあげたかった。
そして緩慢に夜が始まる。
嵐も吹かない、炎も舞わないし、雪も積もらない。
ただ、暖炉のように温かく、やさしい夜が、始まる。
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