有🍙
2024-12-03 07:43:44
16542文字
Public ARGN|ふうあお
 

[ふうあお] milk and wisdom

 
つきあってるふうあおの乳歯と親知らずのおはなし(イベント当日がむし歯予防デーだったので…)
2023/06/04 結ブ4の展示作品でした。
【読了目安:約30分】
 


 
 
※本編に入りきらなかった部分の抜粋みたいなものなので突然はじまって突然終わるかんじです 
※このパートのみにおいてはカップリング要素はないですが、ふうあお作品の一部として書かれたものです 
※以上ご承知おきの上おたのしみいただけましたらさいわいです  
 
 
 
 大和は長崎に越してくる前、高三になる前の春休みに下の親知らずを二本とも抜いたのだという。曰く「ややこしい埋まりかたをしていた」らしく、そのせいで総合病院の口腔外科に入院して処置を受けたということだった。
 ちゃぶ台にころがったスプーンを掴みあげた風太が、悲壮な顔のままおもむろに問いかけた。
「なあなあ大和、入院とか、しゅじゅちゅ……しゅじゅちゅ、とか……
「言い直しても噛んでるのなんなの?」
「しゅ・じゅ・つ! とか! なあ、なしてそこまでして抜いたと? こわくなかったと……?」
「こわくなかったわけじゃないが……まともに生えてこないし生えても必ずトラブルを起こすと歯医者で言われたんだ。だから長崎に引っ越す前に、総合病院を紹介してもらって抜くことにした。親知らずのせいで今後のバンド活動に支障を来すほうがいやだったからな」
「オメーその頃バンドやってたか……?」
 岬のつっこみは至極もっともだとあおいも思う。それに高三になる前ならそもそも長崎への進学すら、まあ希望はしていたとしても決まっていなかっただろう。
 しかしその時点で既に自分の将来をはっきりと見据えていたとも言えるんじゃないだろうか。絋平も同様に感じたようで、妙に感心したように「すごいな」とつぶやいた。
「抜いたあと必ず腫れるとも言われていた。そのせいもあって入院を勧められたんだ」
「実際腫れたと?」
「腫れた。すごかった」
「え、どんくらい……?」
「顔が倍になった」
「倍⁈」
 全員が一斉に大和を注視した。あおいも大和の顎や頬やフェイスラインをなぞるように目で追う。とにかく顔のつくりが整っているからということを抜きにしても、ほっそりしているしいわゆる「シュッとしている」というやつなんだと思う。その端正なラインが倍に腫れたなんてちょっとおもしろ……いや、ちょっと見てみたかっ……いやいや、それだけ腫れたなら痛みも伴っていただろう、とてもつらかったに違いない、そう、これだ。
「そうだな、あのときは結構つらかったぞ。一週間は腫れがひかなかった」
「うわあやっぱり……
……きついな」
「熱も出たし、痛み止めがないと眠れなかった」
「そいつはつれえな……
「つらかねえ……
「食事もしばらくは流動食みたいなやつで……
 不意に沈黙がおとずれた。この瞬間大和以外の全員にある共通の見解が生まれたと、あおいには確信があった。目配せなどしてたしかめあうまでもない、心はひとつだ。
 皆一心に、各々の前に置かれたオムライスや、スプーンに映り込む自分の顔や、スープの液面に浮いた脂の円や、ちゃぶ台の木目を凝視しながら「その瞬間」を待ち受ける。
 大和は天井を仰ぎ、眉間に悲哀を刻むように眉を寄せ、やがてゆっくりと口を開いた。
「入院中白米を食べられなかったのが、一番つらかった」
「言うと思った!」
 間髪を入れずに四人の声が綺麗に揃った。一斉に大和を指さすという動きのシンクロまで完璧だった。
 このコンビネーションをステージでも発揮できたらいいのに。一瞬タメてからの大サビの出だし、ここまで揃ったことないじゃん……いっつも風太のノリと勢いと煽りでごまかしてるけど……いやごまかしきれてないんだけど…… 
「はいはい解散解散、メシ食うぞメシ!」
「まあ病院の食事は不味いって聞くし……いいんじゃないか?」
「さっすが大和たい!」
「なにがさすがかよくわかんないけどなんか全然ブレてないのはすごいよね……
…………
「いやべつに褒めてねえんだよ口許むずむずさせてんじゃねえ! さっさとメシ食え!」
 

🦷おしまい🦷
 
 


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