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ちよど
2024-12-02 00:00:00
16061文字
Public
ビマヨダ
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いつも間違えるヨダナさんとビマヨダを応援しているカルナさんの話
分かっているのにいつも間違えてしまうわし様。カルナさんはビマヨダを応援しているつもり。pixivより再掲。
カルナさん「バベルの塔の逸話ですら今のお前たちにとっては生ぬるいだろう」
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◆
「視野が矮小だったのは俺の方だったようだ」
カルナの謝罪ーーー何についてなのかは分からないがーーーに、わし様はタピオカミルクティを吸い上げた。
ビーマの馬鹿がわし様を避け始めてから一週間が経とうとしている。
最初は逃げるビーマを追いかけて遊んでいたが、すぐ飽きた。
だって、あいつ本気で逃げるもん。
普通に走っている分なら嫌がらせが通じるが、ヴァーユの風を使われると勝負にならない。
一度、逃げるビーマの背中に向けて「足が痛ぁい!!」と泣いてみたりしたが、あいつは止まる素振りも見せなかった。知ってはいたがひどい男だ。
足の早いカルナにわし様を担がせて追いかける方法もないではないが、あまり派手なことをするとマスターの目に留まる。それは避けたかった。
なので今は食堂に居座っている。
今日の厨房当番は確認済だ。真面目なビーマは逃げることも出来ず、わし様の存在に恐れおののいていることだろう!
ビーマの不幸でメシが美味い!!
「カルナ、おかわり!」
「承知した」
昼前のこの時間は食堂は空いていても厨房は忙しいだろう。ビーマを負かしたカルナをカウンターに行かせるという地味すぎる嫌がらせをしてわし様は頬杖をついた。
カルナがビーマを負かした時、世界が崩れたような気がした。
あのビーマがあんなにもあっさりと背中を地につけている。
だがそれは不思議なことではない。サーヴァント戦ではより魔力を蓄えたサーヴァントの方が有利なのだ。
聖杯を湯水のように呑んだセイバーのカルナが、そのクラス相性もあってビーマに勝利することはおかしくなかった。
ただーーー俺はその姿を見たことがあった。
鎧をつけたビーマが地に伏して、わし様が立っている。それはほんの一瞬の差ではあったが。
まぎれもなく勝利だった。
異なる自分からの記憶は甘く。そして絶望の味がした。
あの自分はビーマと全力で戦えた。だが、同じマスターに仕えひとつの目的に向かうこのカルデアでビーマと全力の戦いなど出来るはずがない。
それだけではなく。死因の逸話を色濃く写し取ってしまったこの霊基では、思うように動かない左足を抱えてでは、ビーマと互角の戦いなど望むべくもない。
と、悲観して思わず逃げ出すという醜態を晒してしまったが。よく考えれば戦いで勝つことだけが勝負ではない。
ーーーだから、この召喚では個の武芸ではなく、マスターから重用されることであの馬鹿を見下してやろう。
そう判断すれば賢いわし様は状況を読む。
このカルデアで重用されるためには、いくらビーマが相手でも、同じマスターを持つサーヴァントと険悪になるのはよろしくない。
ほどほどにしておかないとあっという間に評価が下がる。編成から外され、あれよあれよという間に戦力外だ。悔しいが星の数よりも英雄がいるカルデアでは、わし様の代わりはいくらでもいるのだ。
人間?関係を良好に保ち助け合う。これがマスターに気に入られる最適解。
だと言うのにビーマに逃げ回られてはわし様の評価が落ちるではないか!それはビーマも同じだろうに。
あの馬鹿は昔から政治というものが分からんのだ。
子供の頃。わし様たちが腕を折られてもにこにこして心にもない慰めを口にしていたのは、おまえが好きだからではなく、おまえの立場とわし様たちの立場の結果だと。この間わし様が告げるまであいつは気づいていなかった。
馬鹿なビーマ。
しがらみに気づかず、思うがままに生きる風のような男よ。
テーブルに落とした視線の先に、緑色のカップが滑り込んできた。
「タピオカ抹茶ミルクティだそうだ」
「我が心の友カルナよ!!おまえはいつでも最高だな!言わずとも違うものを持ってくるとは!」
褒め称えるとカルナの目元がほんの少し緩む。その控えめさが異父弟とは正反対でわし様は思わず息を止めた。
「ドゥリーヨダナ?」
わし様の傍らに立つカルナがこちらを覗き込む。そのネオンブルーの目は嘘を見抜くのだという。
「カルナ。
……
ビーマの奴が欲しいものは何だ?」
金も名誉にも執着しない。女に対する独占欲もない。食い物と戦いが好きなのは知っているが、それは今切れるカードではなかった。
ビーマに逃げ回られる現状を打破するきっかけが欲しいと問えば、カルナはわし様をじっと見つめた。
「?」
「
……
ビーマセーナが欲しいものはおまえだろう。ドゥリーヨダナ」
「はぁ!?」
わし様から逃げまくっているビーマが欲しいものがわし様??
「
……
待て、カルナ。それはそういう意味でか?」
「そういう意味とはどういう意味だ?」
真面目な顔に頭を抱えそうになる。そうだな、カルナに色恋の解析をさせるのは象にカタックを踊れというようなものだ。
「ふむ。
……
カルナ、買い物を頼む」
小銭を握らせて欲しいものを告げるとすぐにカルナは食堂を出ていく。その後ろ姿を見送ってわし様はタピオカ抹茶ミルクティを口に含んだ。
苦いのか甘いのか判断つかない味が口の中に広がる。
それは屈辱の味によく似ていた。
ーーードゥリーヨダナ。おまえは愚かにすぎる。私が手本を見せてあげよう。
シャクニ叔父の言葉が蘇る。
森しかなかった場所にパーンダヴァが築いた壮麗な都を羨むわし様に叔父は言った。
何故おまえは力しか取り柄のない次男ばかりを排除しようとするのか。狙うべきはおまえより年上で玉座に近いユディシュティラだろう?
正論だった。明らかに王の器ではないビーマを排除しても王位継承争いには大した影響はない。それどころか、ビーマを毒殺しようとしたせいでパーンダヴァ側から警戒されるようになってしまった。そのせいで燃える家から逃げられてしまったようなものだ。
愚かなドゥリーヨダナ。
俺はその評価に一言も反論出来ない。
手の中で骰子を転がしながらシャクニ叔父は歌うように囁く。
殺すばかりが排除ではないだろう。可愛い甥よ。見せてあげよう。味あわせてあげよう。屈辱というものを。
そしてシャクニ叔父は言葉通り、ユディシュティラの血を一滴も流すことなく評判を地に落とし屈辱に塗れさせたのだ。
考え込みながらもぐもぐとタピオカを噛んでいるとカルナが帰ってきた。
わし様はその手から飾り気のないレターセットとペンを受け取る。
文面はすでに考えてある。カルナの目の前でさらさらと書き上げるとわし様はそれを宛名だけ書いた封筒に入れ封をした。
テーブルに置き、重し代わりに一掴みのQPを乗せる。
席を立ったわし様にカルナが口を開いた。
「いいのか?」
「これが一番確実だ」
カルデアはマスターの影響下にあるため治安が良く、お人好しも多い。駄賃を添えておけば作為のない誰かがビーマに封筒を渡すだろう。
そして、その誰かに悪意がない故にビーマはそれを断れない。ビーマのあの性格だ。貰った物の中身を確かめずにはいられないだろう。
ビーマに中身さえ読ませればわし様の勝利は確定する。
「わし様、自分の天才っぷりに恐怖すら覚える。褒めていいぞ」
「おまえはいつでも素晴らしい。ドゥリーヨダナ」
「うむうむ。よく分かっているではないか」
心の友の賛辞に気を良くしてわし様は食堂を後にした。
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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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