でがらし
2023-11-19 23:39:12
6624文字
Public 【吸死】ドラヒナ~全年齢~
 

【ドラヒナ】ティータイムの仕上げは

今年に入ってからずっと温めてたドラヒナショタおね?おねショタ?の歯磨きプレイのお話。
ドラ2になったドラルクはヒナイチに歯磨きをおねだりして…?
温まったのがついに孵化しました。やったね。
注意:本当にマジで癖しかないです。お話は1ページのみ。2ページ目には乗っけきれなかった妄想あれこれがあるよ。

 諸君に今回のあらすじを説明しよう。
 恋人との二人きりの時間、お母様襲来。アンド私またまた幼児化。犯人は仕事を理由に逃亡。以上。

「まったく、何で私に対してはアポを取らないで押しかけてくるんだか……! 弁護士ならその辺ちゃんと……
「仕方ないじゃないか。多忙な方なんだろ?」
 数刻前、慌てて事務所を出て行った母は心底申し訳ないという顔をしていた。勝手に術を使ってしまって申し訳ないという気持ち、そしてそれ以上に我々の恋路を見られない悔しさを滲ませて。前々から私とヒナイチ君の関係はバレているだろうと覚悟はしていたが、まさか窓から秘密のティータイムを覗いていたとは。軽犯罪法に引っかかるぞお母様。
 椅子から床に付かない足をぶらぶらさせながら、温くなったミルクティーを口に含む。今日は砂糖も入れて、ロイヤルな味わいにしてみた。ヒナイチ君とお揃いのものを飲んでいると思えば、幾らか気分がやわらいでくる。
「なにもヒナイチ君との時間に突撃してくることもないじゃない、ロナルド君の居ぬ間にイチャイチャしようと思ったのに」
「なっ……! そういうことを大声で言うな、戻ってきたらどうするんだ」
「ロナルド君が? それともお母様?」
「両方、だ!」
 ごくごくとミルクティーを飲んでいたヒナイチ君が、目の前のクッキーに手を伸ばす。激しく揺れていたアンテナが柔らかいハート型の弧を描くようになるまでには一秒もかからない。当初の予定から大分狂ってしまったが、ひとまず恋人との時間は楽しみたいものだ。この身体がスマートな紳士姿に戻るまでにはまだ1時間はかかるだろう。どうせならばこの恰好でこその……なーんて邪なことを考えてしまうのは、クッキーに夢中な彼女の気を引きたいからかも。
 カップの底に僅かに残っていたキャラメル色を流しこむ。溶け切らなかった砂糖が歯に触れじゃり、と音を立てた。甘い。
「ヒナイチ君、私ちょっと口を漱いでくるよ。少々砂糖が多すぎたかも」
「そうか? このミルクティー、すごくクッキーに合う味だぞ!」
「それなら良かった。すぐ戻るね」

 とてとてと軽い足取りで洗面所にたどり着いた私は頭を抱えた。いつもはなんてことない蛇口がやけに遠い。ジョンのように洗面台に飛び乗ることも出来ない身体がもどかしい。足がつって死ぬギリギリまで背伸びを繰り返してみるが、手は宙を切るばかり。
「はぁ、はぁ……これ以上頑張ると死んでしまう……ん?」
 不意に普段使っているコップに指先が当たった。立てかけてある薄紫色の歯ブラシはヘッドが細く作られている吸血鬼専用のものだ。隣にあるのはジョンのためドラッグストアで手に入れた子供向けの歯ブラシ。若造の歯ブラシは大分毛先が開いてきているじゃないか、今度買い替えておいてやろう。そして最近加わったのはヒナイチ君用のコップと歯ブラシ。ピンと揃った毛先は彼女のアンテナを連想させる。……とここまで思考を巡らしたところでふと閃いたのは、「子供」の私だからこそのちょっとした願望。
「んしょ……あとちょっと……届いた!」
 何とか手繰り寄せた自分用のコップを両手に持ち、私は当初の目的も忘れてダイニングへと舞い戻った。クッキーを食べ切ったらしいヒナイチ君にそっと歩み寄る。

「ねぇねぇ……ちょっとお願いがあるんだけど」
「遅かったな。……ん? どうしたんだそのコップと……歯ブラシ?」
 座ったままこちらを振り向くヒナイチ君。その隊服の裾を引っ張って、こてんと小首をかしげてみせる。角度は大体三十度、口角はきゅっと上げて、あどけない顔と上目遣いも忘れずに。

「ヒナイチおねえちゃん……はみがき、して?」

……と、と、突然何を言いだすんだ!?」
「だってぇ、せっかくこの恰好でヒナイチ君……いや、ヒナイチおねえちゃんと二人っきりなんだもん。なんか特別なことがしたいなぁって」
「お、ドラルクお前、その呼び方は止めろ!」
「じゃあお姉さん?」
「そういう問題じゃない! 私はお前の姉じゃない、と言ってるんだ!」
 真っ赤な顔でそう返される。でもでも、その顔は嫌がってる顔じゃないもんね。むしろ照れてまんざらでもないって感じだ。だからもう一押し。
……たまには私のこと、甘やかしてほしいなぁ。ねぇダメ? ヒナイチ『おねえちゃん』?」
「だからその呼び方は止めろと……! それに歯なんて自分で磨けるだろう……
 ううん、なかなか手強い。こうなったら奥の手を召喚しよう。
「えーん、ヒナイチおねえちゃんのいじわる~」
「な、泣くな……! その、別に嫌といったわけじゃなくて……分かった、お前の歯を磨けばいいんだな!?」
 ピスピスと泣き真似をして見せれば、観念した様子で私から歯ブラシとコップを受け取ってくれた。ふふん、これが幼き頃のドラドラちゃんの必殺技。大体のお願い事はこの顔で叶えてもらってきたもんね。あの腹立つヒゲヒゲに鼻で笑われてからは封印してたけど……って今はそんな嫌な奴のことは忘れよっと。

「私は人の歯なんて磨いたことないから、あまり期待はしないでほしいが……ほら、始めるぞ」
 立ち上がったヒナイチ君は台所でコップに水を注いだ後、所在なさげにソファの真ん中へ腰を下ろした。どうやら向かい合って磨いてくれるつもりらしい。うーん、それも悪くないけど、ここはやっぱり……
「おねえちゃんの膝枕がいい~」
「またお前はそうやって……
……お父様はいつも膝枕で磨いてくれてたのにぃ……ピス……
……仕方ないな」
 わぁい、狙い通り。心の中でVサインをしながらヒナイチ君の傍に駆け寄る。コップはソファの安定したところに置いたまま、ヒナイチ君はカーペットに腰を下ろした。困った顔のヒナイチ君へニッコリ微笑み、隊服のショートパンツとハイソックスの間の領域の上にごろんと寝転がる。あ、これかなり好きかも。柔らかくて温かくて、すごーく癒される。……断じてY談的な感想ではないぞ。

「じゃ、じゃあ改めて……始めるぞ……
「はーい、ヒナイチおねえちゃん! あーんっ」

 今の私には少々大きい歯ブラシが、恐る恐る口の中に入ってくる。緊張しているのか、それとも私の牙に畏怖しているのかな? 乳歯になった牙であればヒナイチ君を傷つけるようなこともないだろうけど、人間の歯とは違って奥歯も少々尖っているからね。幾らでも見てくれて構わないよ……とはいえ、そんな風にまじまじと観察されるとなんだか照れ臭いな。もじもじしながらヒナイチ君の顔を見れば、迷っていた様子の目が一点を見据える。どうやら最初に磨く場所を決めたようだ。
「ええと……こう、か……?」
 下の前歯をそっと歯ブラシが掠める。まるで小さな筆でくすぐられているかのように、軽く、静かに。僅かな動きだというのに、全身の力がふわふわ抜けていく。
「痛く、ないか?」
 耳にかかった赤毛が照明を反射し、瞳の中では緑の光が揺れている。こくこくと頷けば、その目は安心したように細められた。
「じゃあ、このまま……続けるからな……
 かしゅかしゅと歯ブラシの音だけが聴こえる。あれ、歯磨きってこんなに心が穏やかになるものだったっけ? 二百年前の記憶を辿ってみるが、お父様がしてくれた仕上げ磨きでこんな気持ちになったことは流石にないぞ。ああ泣かないでください、脳内のお父様。歯磨き中にしてくれた色んなお話は楽しかったですよ、お祖父様との珍道中とか。それに歯磨きってエチケットのためというか教育的な要素が強いじゃないですか!
……大丈夫か、ドラルク?」
「ふぇ……あ、ううん大丈夫、このまま、続けて……
 脳内のお父様を隅に追いやり、さっきよりも大きく口を開ける。先ほどよりも滑らかに細やかに奥歯へと移動していく歯ブラシ。口の中に残っていた砂糖の甘みが、まるで子供用の歯磨き粉のようだ。ジョンはミントよりもあの甘い味が好きなんだよね。ヒナイチ君はどっちが好みなんだろう。後で訊いてみようかな。……それにしてもヒナイチ君って、こんなに大人っぽい顔をしていたかなぁ。任務に向かう凛とした顔は確かに美しいし、おやつを頬張る顔は愛らしく、床下で見せる顔もそれはそれは艶っぽい。でも今のヒナイチ君はなんだかそれとも違う雰囲気だ。真剣な眼差しなのに口角が少しだけ上がっている。悪戯しようとしたジョンをたしなめる時の顔が一番近いだろうか。
「逆側の奥歯、磨くぞ。ふふ、ちょっと慣れてきた」
 小刻みな縦横の動きがくすぐったい。慣れてきたという言葉通り、ヒナイチ君は吸血鬼用の歯ブラシを器用に扱い始めた。歯と歯の間に細い毛先を差し込み、くしゅくしゅと震わせる。どうしてだろう、癒されているはずなのになんだか身体がぞわぞわする。普段私けっこう丁寧に歯磨きしてるけど、こんな風になったことないよ? 私さっきこれおねだりしたの、そういうつもりじゃなかったんだぞ、単なる出来心だ。ちょっとしたスキンシップのつもりだったんだ。えぇどうしよう、今になって急に恥ずかしくなってきた。そうだこういう時は落ち着いて、天井のシミの数でも数えよう。いち、にぃ、さん、よん……週末の大掃除場所は確定だ……ご、ろく……

「ほーら、口を閉じちゃダメだ。まだ上の歯が終わってないぞ? ちゃあんと綺麗に磨かないとな!」

 顎をくいと引かれ、ヒナイチ君と目が合う。あーん?と促す彼女は、さっきよりも楽し気で、まるで幼い弟の世話を焼く姉のようで。促されるままに口を開けていれば、しゃかしゃかと軽快に歯ブラシが上の歯をなぞっていく。その音に合わせるように聴こえてきたのは、ヒナイチ君が口ずさむ柔らかなメロディ。
「仕上げはおねえちゃーん♪ ……なんてな。ふふっ、冗談だ」
 私の一番大きな牙に触れると同時にくすりと笑う彼女。瞬間、今のヒナイチ君にぴったりの言葉を漸く思いつく。慈愛だ。
「改めて見ると、真っ白で綺麗な歯をしているな。毎日綺麗に磨いてて偉いぞ、ドラルク」
 ぶわ、と顔が熱くなるのが自分でも分かる。それに加えて何回も牙を撫でられるのだ。待ってくれヒナイチ君、どこでそんな殺し文句覚えたの? その台詞は私には刺激が強すぎるよ? ぴくりと跳ねそうになる身体をとどめるように、必死に脚を伸ばして耐える。けれど、色々な意味で限界が近い。
「もうちょっとで終わるから、我慢だぞ」
 照れ臭くて恥ずかしくて、早く終わってほしいのに終わってほしくない。思考回路はとっくにショート済み。涙目になりながらヒナイチ君を見上げることしかできない。あれ、もしかして今の私、「床下のヒナイチ君」みたいになってる?

……さん、にぃ、いち……はい、おしまい! 起き上がっていいぞ」
 達成感に満ちた顔の彼女から、水の入ったコップを受け取り洗面台へと駆けこむ。火照った身体を何とか落ち着かせるため冷水を含むと、背後からヒナイチ君がやってきた。
「このままじゃ流しに届かないだろう? ほら、だっこしてあげるから」
 軽々と持ち上げられ、そのまま口に含んだ水を吐き出す。コップが空になるまで繰り返せば、口の中の甘さが洗い流されていく。
「ありがとう、ヒナイチおねえちゃん……
「どういたしまして。降ろすぞ」

 ふわりと降ろされた私は、ヒナイチ君が歯ブラシを片付けるのをぼーっと眺める。ちょっとした思いつきだったけど、この遊びは吸血鬼にとっては危険すぎる。今度は相当の覚悟を持ってお誘いしないといけないな。そんな反省を胸に仕舞い、ヒナイチ君と共にダイニングへと戻る。さて、この後はどう過ごそうか。二人でクソゲーか、それともクソ映画か。
「なかなか戻らないな、その身体」
「うーん、そうだねぇ。デスリセット……は対策済みな気もするし、のんびり待つしかなさそう。……ん?」
 
 夜風で涼もうと窓に視線を向けると、カーテンの隙間からちらつく赤い光。……まさか。冷や汗が背中を伝った刹那、独りでに窓が開き入ってきたのは、
……どうか私も仲間に入れてくれないか」
「お母様……!? 一体いつから……?」
「上の歯から。ヒナイチ君……あれはいい歌だな。私にも教えてくれ」
「ちん……聴かれていた!?」
 顔を真っ赤にしてへなへなと崩れるヒナイチ君を不思議そうに見るお母様。その手に握られているのは、子供用の柔らかそうな歯ブラシのパッケージ。
「さあ、ドラルク。次の仕上げはお母さん、だぞ」
「スナァ!」

 絶叫と共に恥ずか死んだ私は、瞬く間に子供に復活させられる。目を輝かせたお母様は、帰宅したロナルド君とジョンが絶句するまで夜を楽しむのだった。