hatonyannyan
2024-11-23 21:30:36
1658文字
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until "Fall" days

バルクラフォールデイズの最終日はなんでもいいよってことだったので、好きに書きました





翳した右手から放たれるのは、慣れ親しんだ炎ではなく暗く冷たい闇の魔法。温度を感じさせない黒炎はけれど容赦なく骨の髄まで焼き尽くしていく。魔法を発現するときにぐるりと手首に浮かぶ紋様は、色合いもあってまるで枷のようだ。俺はもうずっと、この冷たい牢獄に囚われている。

この身に何が起こったのかは未だによく分からない。フェニックスゲートに赴く数日前……あの運命の夜以来、この身体は自分のものではなくなってしまった。意識こそはっきりしているがただそれだけで、身体を動かすことも出来なければ声を発することも出来ない。魂だけ小瓶に詰められているような感覚だった。
そして、梱包された己に代わってこの身体を使う誰かがいた。声からして年嵩の男のようだが、当然ながら容姿は見えない。
男は闇魔法の使い手のようだった。それも単なるベアラーというレベルではない。闇の力で生み出したと思しき剣を自在に操ることからもドミナントなのだろう。闇の召喚獣はこれまで存在が確認されていなかった。そんなものが何故炎の民である自分の身体を使っているのか……

「喜べ、これでまた人の救済に近付いた」
男は時折こちらに話しかけてきた。こちらの声は聞こえていないのか、会話が噛み合った試しがない。あちらからの一方通行だ。
「お前と私は願いを同じくする同士だ。何をそんなに悲しむことがある?」
俺と男は似たもの同士であるのだと度々説いた。そんなわけがない。あちこちに戦を仕掛け、ジョシュアを殺した仇と俺がおなじものである、わけが。男が言う「人の救済」というものもよく分からない。俺の心はこんなにも憎しみで満ちているのに。
『もううんざりだ。俺の身体を返してくれ』
思わず溢した言葉に、男は哄笑した。
「いつまで悲劇の姫ぶっている。早くお前の本質を……贄を喰らう本能を思い出せ。私を喰らったあの日のお前は、あんなにも情熱的だったというのに」
わけのわからないことばかり並べ立てる男に気が狂いそうになる。いや、もうとっくに狂っていて本当の俺は檻の中かどこかで夢を見ているんじゃなかろうか。
「それが出来ぬと言うなら大人しく、聖母のように祈っていろ。この器に力が満ちるまでな」
頭を掻き毟って、大声で怒り狂いたかった。だがこの闇の中で暴れたとてどこにも、誰にも届かない。

底に落ちるまでの日々を思って、クライヴは絶望しながら泣いた。だがそんな悲痛な想いは、勿論器の外に溢れることはなかったのだけれど。