しゃどやま
2024-11-21 21:45:47
4188文字
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洗脳高塔家

洗脳された高塔家同士のバトルと言うかなんいうかの場面を三つ書きました。
洗脳宗雲と正気の戴天(+雨竜)
洗脳雨竜と正気の戴天
洗脳戴天と正気の雨竜(+宗雲)
となっております。お好みの方のみどうぞ! 洗脳だ〜いすき!


洗脳戴天と正気の雨竜(+宗雲)
 
 戴天は足を組んだ。ギチ、とレザーの擦れるような音がする。
「運斤成風。ここまで来ましたか」
 光のない瞳を愉悦に歪める。豪奢な洋館をモチーフにしたカオスワールドの奥深くで、主と共に待っていたのは、カオスライダーと化した戴天だった。主はまるで蜘蛛に囚われた獲物のように拘束されている。顔面が靄に包まれ、完成する寸前だった。
 雨竜は震えを抑え、槍を向け直す。叫んだ。
「兄さん! 正気に戻ってください!」
 戴天は肘をつき、首をかしげる。アンティークの椅子に座ったまま、雨竜に問う。
「何をもって正気と定義するのですか?」
……定義?」
 雨竜は戸惑う。槍を突きつけたまま、眉をひそめた。
「かつての私は、家のため会社のためあらゆることに手を染めてきました……滅私奉公、犬馬之労」
 芝居がかった仕草で戴天は肩をすくめる。立ち上がり、教師のように指を立てた。
「それが人間的だと言えるのでしょうか?」
 指先に緑の燐光が灯る。次第にそれは大きさを増す。
「人間の喜び――本能に抗うことが、私の人生だと?」
「それは……兄さんが、望んだことで……
 雨竜の声は小さくなり消える。高塔として生きると、兄は覚悟していた。それを雨竜は応援していた。兄の幸せは、兄の判断の先にあると思っていた。
 戸惑う雨竜が明確な答えを持たないことを、妖艶に笑った戴天は頷いて許す。
「雨竜くん……きみのことも楽にしてあげます」
 光弾が弾け、雨竜の槍をはたき落とす。動揺する雨竜の顎を、黒い指先が持ち上げた。
「思考停止し、本能のまま……ここが楽園ですよ」
「に、兄さん……
 戴天の指先が雨竜を突き飛ばす。続けざまに腹を蹴り飛ばした。呻き転がる「弟」を、腕を組んで見下ろす。髪を垂らして顔を覗き込んだ。
「一将万骨。あなたは埋まる骨になりますか? それとも、私のもとで将となりますか?」
「く、う……ッ」
 雨竜は頷かない。戴天はつまらなそうに光弾を作り上げる。
――地に落ちたな」
 響く声に、戴天は眉を吊り上げた。視界をあげず光弾を声の方向に放った。輝く光は切断され、洋館の壁を爆破する。
 土埃の中からゆっくりと歩み寄るのは、宗雲だった。
……あなたに用はありません。殺されに来たんですか?」
 冷たく言い放ち、戴天は立ち上がる。全身からエネルギーを立ち上らせ、光球をいくつも作り出す。
「いや。救うために来た」
 短く返答した宗雲は、背を丸める。駆け出し一気に距離を縮める。雨竜と戴天の間に滑り込み、戴天を斬りつけた。軽く体を翻しただけで容易に回避される。戴天は愉快そうに見下ろした。
「立てるか」
「は、はい。宗雲さん、兄さんが!」
「落ち着け。カオスライダーの戴天は冷酷が故に厄介だ。全力でかかるぞ」
「でも……!」
 雨竜は拳を握る。兄に槍を向けることのためらいが、苦悶する表情に現れている。
 宗雲は片頬を持ち上げて笑った。
「俺は救うために来た」
 立ち上がり、剣を構え直す。背に雨竜を庇い、戴天に刃を向ける。
「お前たちをだ」