しゃどやま
2024-11-21 21:45:47
4188文字
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洗脳高塔家

洗脳された高塔家同士のバトルと言うかなんいうかの場面を三つ書きました。
洗脳宗雲と正気の戴天(+雨竜)
洗脳雨竜と正気の戴天
洗脳戴天と正気の雨竜(+宗雲)
となっております。お好みの方のみどうぞ! 洗脳だ〜いすき!


洗脳雨竜と正気の戴天
 
 雨竜が戻らない。調査に行かせ、エージェントと合流する前に消えて、それからの足跡が無い。戴天があらゆる手を使っても目撃情報が無いと言うことは、カオスイズムによって別世界へ踏み込まされたに違いなかった。
 執務をこなしながら戴天は焦る。彼の身になにかあれば、自分を許せない。あのように自分を慕ってくれて、純朴な少年を守りきれない。何のための力で、何のための支配だ。人を一人守れないようでは、絶対支配など言葉だけのもので――
 ノックの音がする。はい、と冷静に返し、戴天は目を見開いた。
「雨竜くん! 心配しましたよ、どこへ行っていたのですか!」
 見慣れた小柄な体格。真面目に引き締まった唇。勇ましい眉。雨竜そのものだ。緊張している様子に見えた。報告があるのだろう。戴天は立ち上がり、抱きしめようとして止まる。もしかしたら高塔に不満があり、家出をしたのかもしれない。無力だった自分に、兄のように抱きしめる権利などない。
 けれど、雨竜のほうが先に動いた。
「すみません、兄さん」
 ふんわりと胴体を抱きしめられる。抱き返すこともできずに硬直する。
「これからは一緒ですよ」
「え……?」
 雨竜の全身から光が立ち上る。戴天の死角でカオスリングを指にはめていたのだろう。締め上げられる苦痛に藻掻く戴天を、雨竜は一度手放す。
 槍を手にするために。
「雨竜くん、何をッ?」
 戴天は飛び退り、カオスリングに手をかける。戴天が居た場所を、雨竜の槍が貫いた。
「謀反ですか? 理由を聞かせなさい!」
 動揺する戴天に、雨竜は真剣な顔で槍を向ける。容赦のない連撃に、戴天は変身することもできない。舞うように多段突きを繰り出し、戴天の側頭部を柄で殴りつける。
「くぁっ!」
 絨毯の上に転がり、起き上がろうと震える戴天を雨竜が見下ろす。雨竜の緑の瞳に、怒りや憎しみはない。まるで食卓を囲む時のように穏やかで――慈しみに満ちている。

「兄さん……あなたの傍で、あなたの一番近くで、僕はあなたを見ていました」
 雨竜は語りかける。戴天に手を伸ばした。助け起こすのではなく、首を絞めるために。長い髪を巻き込まないよう丁寧に、首を掴む。
「高塔のため、精神を擦り減らし、体を壊しながら支配するあなたを」
「ぐ…………
 雨竜は悲しげに、困ったように眉をひそめる。本心から、真摯に言った。
「あなたは――支配されたほうがいい」
 指に力がこもる。戴天の唇が震え、顔が赤く染まっていく。
「カオスイズムに戻りましょう、兄さん」
 雨竜は笑った。貴重な微笑みだった。戴天が見たことのない、まるで小さな生き物を愛おしむような笑み。
「ずっと支配してくれますよ」
「うりゅ、ぅ、くん……
 戴天は辛うじて名前を呼ぶ。そのまま瞳が力を失った。
 雨竜は脱力した戴天を抱えながら、もう一つの世界への扉を開く。
 あっ、と焦ったように声をあげた。
「コサメのケージ……兄さんを抱えてたら持って帰れないや」
 困った表情で扉をくぐる。
「もう少しだけ、お手伝いさんに頼みます」
 その表情は、皆がよく知る雨竜のものだった。