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さもゆ
2024-11-15 20:37:13
8399文字
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BF
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【ショ英】ワンウィワンライとおまけ
ショ英ワンウィークワンライ【花束】【夢】の2つと、学パロショ英を1つまとめた短いものです。
2019.4.9 たまごのお粥pixiv投稿作品
1
2
3
学パロショ英。
※
「ジャッキー・チェンは三階もある時計塔から落ちたってなんとか無事だったんだから、僕だって平気だと思うんだ! それにほら、僕は高跳び選手だし!」
「ばっか! お前日本人なら二階から飛び降りた坊ちゃんを見習えよな!? いやまず飛び降りるという選択肢をなくせ頼むからッ」
ガタガタッ、齧りつくようにして開け放った窓が盛大に揺れ、窓枠にかけていた足が空を切る。
後ろから羽交い絞めにしてくる彼は、躍起になって英二を飛び降りさせまいとしていた。当たり前だった。英二だって友人が夕暮れ迫る三階の教室から飛び降りようとしていたら、全力でしがみついて止める。
でも止めない優しさもあると思うんだ。引き離された窓へ手を伸ばす。
英二は自殺がしたいわけじゃなかった。結果的にそう見えてしまうというだけで、死にたいわけじゃなかったのだ。ただ、そう、教室の入口には彼がいて、そうすると一番近い逃走経路が窓になるわけで、とにかく逃げ出したかったから。飛び降りたら身体がぐちゃぐちゃになって学校中が大騒ぎになるとかそんなことは考えられないくらい、彼の目の前から唐突に消えてしまいたかった。
「離してくれショーター! 居た堪れなくて恥ずか死にそうな時ってあるだろ!? 大丈夫、ちょっと、ちょっと思い切り風にぶち当たって冷静になるだけだ。死ぬわけじゃない」
「飛び降りてみろよ、冷静になる頃にはお前は下の花壇で血だらけだぞッ」
「はは、白いチューリップがいい感じに赤くなるんじゃないかなっ?」
「こえーよ!」
聞いたことのないくらい大声で喚くショーターは、英二に負けず劣らず慌てており、もがく身体にひたすら組み付きとにかく窓から離れさせた。
逃走経路に手も足も届かなくなった英二はええいままよと叫ぶ。「飛ばせてくれ! こんなの耐えられない!」
――
勢いのまま彼の足を踏んづける。「いってえ! ばか!」暴言のわりに反撃はしてこず、そんなだからこうなるんだと八つ当たりのように思った。
そもそもの発端は今日の部活がないのだと、部室に着いてから気づいたことだ。いつまで経っても誰も来ないものだから他クラスの友人に連絡すれば「今日休みじゃん。知らなかった? 憐れなり」と苛つく無情な返事を送られ、くそーと唇を尖らせながら部室の鍵を返しに行った。
その職員室からの帰り道、誰もいないクラスを通り、試しに扉に手をかけてみたら開いた。施錠係が何をやっているにしろ、別段珍しいことじゃない。朝礼で毎日のように昨日の施錠について注意される学校である。だから英二はちょっと逡巡したのち、辺りを見回し誰もいないことを確認すると、その教室に入った。
自分のクラスじゃなかった。
物の貸し借りや、昼食の時間、廊下掃除の最中とか、理由を見つけては頻繁に訪れる他クラス。ショーター・ウォンのいるクラスだ。
きょろきょろ視線を巡らしながら、慎重に窓際の席に進んでいく。一番後ろ、いわゆる主人公席が彼の座る場所だった。放課後、たまにそこから、グラウンドで野球部に占領されながら慎ましく練習する陸上部員を見ていると言っていた。その中には棒高跳びをする英二も含まれている。気持ちよさそうに飛ぶよなあ、見てんの好きなんだ、とも言われたことがある。
英二はそっと椅子を引き、おもむろに腰を下ろすと、わっと顔を覆った。
「少女漫画かよ
……
」
妹の読んでいる漫画にも似たようなシーンがあった。
「好きなんだよなあ、ショーターのこと
……
なーんて」
言ってたらタイミング良く想い人が現れる古今東西で使い古されたシーン。だが実際にはそんなひとり言をまんまと本人に聞かれることなど早々あるはず
――
「英二?」
――
あるはずないのに。
廊下側の開いた窓から、英二の想い人が、サングラスで隠れた目の代わりに口をぽかんと開け佇んでいた。
「
…………
聞いてた?」
「
…………
聞いてた」
瞬間、英二はすぐ横の窓に向かって足を振り上げた。
誤算であり命拾いだったのが、ショーターが凄まじい瞬発力を発揮し窓から教室に飛び込み、英二が無意識な自殺をする前に腕を伸ばしてくれたことだ。
そのせいで地獄を味わっている。
ずるずる引きずられ、「いいからまず落ち着けって!」強引に今や恨めしい彼の席に座らされた。「嫌だじっとしてられない!」抱え込まれるような体勢で椅子に拘束され、無心で腕を振る。
言い逃れできない羞恥と誤魔化しの効かない感情を持っていた。失敗した。何もおかしくないことにできたはずだった。好きには色んな種類があって、男友達の席でしみじみ呟く「好き」は確かに異様でホラーだが、慌てず騒がず何か適当に茶々でも入れとけば良かったのだ。
なのに、こちらが本当に本当の「好き」、彼を多大なる混沌に貶めるタイプのものを持っていたために、必要以上に反応し、墓穴を掘ってしまった。ああ、その穴に入って土を被せられたい。死にたくはないが、一旦死体になりたい。
「きみがそうやって優しいから僕はつけ上がるんだ、分かるだろっ? 僕が今全力でこの場を逃げ出したいのが分かるはずだ、きみは聞いてたんだから!」
なんとか椅子に留まらせようとしてくるショーターは、英二の耳元でぐわっと吠えた。
「ああそうだな、お前の呟きがどういう意味でどういう感情か正しく理解してるつもりだよ! そりゃ逃げ出したくもなるわな!」
「分かってて離してくれないなんて鬼畜の所業じゃないか?」
「今からお前を極楽に突き落とす」
「は?」
両肩を強い力で掴んだかと思えば、サングラスのずり下がった目が真っ直ぐこちらを捉えた。そして言う。
「俺も、好きなんだけど」
背後の開け放った窓からほんの少し冷たい、春のにおいのする風が吹き込み、廊下側の窓から出ていく。
英二は顔を顰めた。
「今の、花粉症だったらやばかったね」
「くしゃみ止まんねえだろうな」
「さっき、なんて言ったの?」
「
……
俺も、好きなんだけど。お前のこと」
墓の下の穴のような沈黙が広がる。
目も口もあんぐり大きく開ける英二の前で、ショーターはサングラスをかけ直すと、居た堪れなさそうに「じゃ、そういうわけだから」窓枠に足をかけた。
変な表現だと思う。極楽に突き落とされた、なんて。
だがその通りだった。極楽になんの準備もなく落とされてしまった。そして、目の前では今度はショーターが正真正銘後戻りのできない極楽に旅立たんとしている。そう、きっと、おそらく、羞恥で。
彼の「好き」がおおよそ自分の「好き」と同じものだと気づき、すこぶる首から上を真っ赤にすると、英二は飛び降りようとしている背中にしがみつく。
「そりゃないだろちょっと待ってよ!?」
「っるせー! 予定外に告白させられた俺の気持ちも考えろ!」
ガタガタッ、窓が盛大に揺れた。
攻守入れ替わって第二回戦、開始である。
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