さもゆ
2024-11-15 20:37:13
8399文字
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【ショ英】ワンウィワンライとおまけ

ショ英ワンウィークワンライ【花束】【夢】の2つと、学パロショ英を1つまとめた短いものです。

2019.4.9 たまごのお粥pixiv投稿作品


第七回ショ英ワンウィワンライのお題【夢】より。
転生パロ、そしてこっからショ英になるぞ!って感じの友情系。雰囲気もん。













 難しい話はしたくないんだ。
 誰だってそうだろ? 理解の範疇を超えたものは敬うか嫌になってしまうか、どちらかなんだ。
 僕は後者。嫌になっちまう。人の目を気にして、尊敬する振りをしてみたりするけれどね、本当はうんざり。ぐちゃぐちゃして、興味を引く少しの綻びも見つけられないことなんか、特に嫌だな。
 そのうちの一つに、夢がある。
 夢だよ。将来の方じゃなくて、睡眠の方の。
 好きじゃないんだ。夢を見るの。毛じらみみたいに今朝見た夢を気にする人とか、そうしていれば悩みがなくなるとばかりに夢占いに投じてる人は、きっと頭がおかしいと思うんだ。
 思ってたんだよ。ずっと、おかしいって。理解の範疇なんて、枠組みをぶっ壊してもとからなかったような顔をしだすもんだから、僕は益々自分の頭がおかしいと思ってた。
 夢を見るんだ。ずっと。小さい頃から、何度も、何度も。
 分かる? そうだよね、分かってるはずだ。きみは分かってた。だから全力疾走したんだ、違う? 
 ああ本当に、まだ心臓がうるさいよ、部活でだってこんなに汗かいたことなかった。陸上部で良かった。そう、陸上部だ。前にも……話したことがあったろ? 三人で。きみは「俺も見たかった」って羨ましがってた。僕はあの時、もう、飛ぶことはないと言ったけど、飛べないと言ったけど、全てが終わって血生臭い夜を迎えず済むようになったら、朝焼けの中、きみたちの前でもう一度飛んで見せてやってもいいかなと、ひっそり考えてたんだ。そう、あいつは早起きが苦手だから、ほぼきみのための一人試合。特等席に座って貰おうって。
 なのにきみは死んでしまったね。
 夢の話だよ。
 僕の前で、あっけなく、静かに、容赦なく、死の腕に抱き締められてしまった。
 誰の腕だったろう。誰の腕でもなかったかもしれない。誰もの腕でもあったかもしれない。僕の腕だったかも。
 否定しないでよ。待って、最後まで聞いて。その上で僕を突き飛ばせばいい。簡単だろうから。陸上部では組手の練習はしないんだ。
 きみは死んでしまった。
 分からない、でも、きっと、抗いようのないことだった。僕には、僕たちには、あらゆるものに抗う術を、持っていなかった。お荷物で、無力で、きみが後ろから銃を撃ってくれた僕が言うのは、腹が立つかな。でも、事実だった。
 きみは最期に何を見ただろう。何を聞いただろう。何を感じ、何を思っただろう。僕は――きみが心臓を撃たれ、僕の上に倒れ込んだ時――一緒に心臓が止まったように感じた。
 火掻きで掻き混ぜられるような頭の中とは裏腹に、冷たくなっていくきみに向かって泣き叫んでいた。あの時、確かに、心臓が止まった。それくらいの衝撃だったんだ。
 悲しみ、辛さ、怒りと絶望、焦燥、情けなさ、虚無、そのほかに色々。ただただ涙が出て嗚咽が止まらなくて、まさに夢かと思った。夢だと信じたかった。
 あれは現実だった。きみはそうやって、僕の腕の中で死んだ。
 けれど、もう、夢なんだよ。
 ずっと見てたんだ。夜が来る度に、瞼の裏側、頭の片隅、耳の奥、きみの死が蘇る。睡眠中に素知らぬふりして脳みそを侵す。
 おかしいと、思ってた。トチ狂った、よくテレビで目にする、オカルト系か精神病患者のそれかと。
 違ったんだ。気づかなかった。思い出させようとしてたんだ。優秀なようでいてなんてポンコツな頭なんだろう。きみにこうやって偶然会えなかったらどうするつもりだったんだ? けど、会えた。
 ああ、駄目だな、待って、あと少し。少しの本題なんだ。待って、はは、よく口が回ってると思わない? 追いかけっこして、挙句、飛び蹴りに、馬乗り。信じらんない顔してるね、僕もだよ。ここまで行動的だったとは、初めて知ったや……
 本題だ。一番大事なことだ。いいね? 言うよ。
 僕は難しい話が嫌いなんだよ。もう嫌なんだ。何か大切な、一つのことを、ぐちゃぐちゃにして、綻びもないように硬く詰めて、結局一つの大切なことを――人を――失うのは。全く御免なんだ。くそくらえ! ってね。
 くそくらえだ。きみが負う必要のないものを負って今も苦しむのは。そんなだから僕なんかに捕まったんじゃないのか? 陸上部と言えど高跳び選手だからね、ランナーに比べれば僕なんて全然走れない。
 きみはさっき、偶然、僕と会って、そして逃げ出した。僕は一寸遅れて全て思い出し、理解し、そしてきみを追いかけた。で、今、きみの腹の上で胸倉を掴んでる。泣きじゃくってる。
 分かるだろ? きみは優しく、強く、明るく、友だち思いで、あの短い時間の中で僕をよく分かってくれていた。だから分かるはずなんだ。僕が弱く、鈍臭く、悪いことを自分のせいだと考えて――まあ実際僕のせいだけど――身動きが取れなくなる人間だってことは。きみは、時々、僕を慰めてくれていたよね、本当にありがとう。
 そんな僕が、がむしゃらにきみに縋りついてる。
 過去なんて知らない。夢にしたっていい。冒涜的で、自己中心的で、酷い考えのもと、こうやって話してる。
 難しいことなんか嫌いだよ。考えたくもない。
 ただ、今度こそ、生きて、友だちでいたいっていうのは、駄目なのかい?
 それだけを思っては駄目なの?
 虫が良すぎるのは分かってる。きみは僕をけちょんけちょんにする権利がある。それと同時に、僕はきみに思いの丈をぶつける権利もあるはずだ。
 僕はまたきみと友だちでいたい。あの時間は短すぎた。もっと一緒にいたかった。きみが大人になった姿を見たかった。死んで欲しくなかった。僕のせいで、……これを思うと、確かに、逃げ出したくなる。難しいよね。だから言わないよ。
 僕はきみを逃がしたくない。
 あの出来事を、過去を、夢のように扱うことだってできる。それで、きみが、負い目を感じずに済むなら。きみが僕とまた友だちになってくれるなら。
 ねえ、どう、考えてよ。
 難しい話じゃないんだよ。
 僕の棒高跳びを、特等席で見せてあげる。だから、どうか、なんでもいい、一言でいいから、肯定してくれ。
 ショーター。
 出会い頭できみに飛びかかったこんな僕を、もう一度、友だちにしてくれないか?






――yes」

 それは、なんとかやっと一言、絞り出した、簡単な肯定だった。